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3歳児ももちゃんのVRMMO大冒険  作者: 生姜寧也
第5話:キッチン狂想曲

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5ー3:学者さんと会った

 小腹も満たされたところで、


「おひるね?」


 ではなくて。犯人探しだ。ももちゃんには、もう少し頑張ってもらわないとね。とはいえ、あんまりお昼寝しない子だから、大丈夫だと思うけど。


「外部犯ということで、捜査します」


 宣言すると、料理人さんたちからパチパチと拍手が起こる。期待されてるね。


「俺の方から話は通してあるから、城内を聞き込みして欲しい。何か分かったら、報告に来てくれる?」


「分かりました」


 アロッカさんも、ずっと私たちに付き添ってられないよね。シチューも作り直ししないとダメだし。


「それじゃあ、頼んだよ」


「はい!」


 ももちゃんが丸いお手々を挙げて元気良くお返事。ご飯も食べさせてもらえたから、一段と気合が入ってるね。


 私たちは、そのまま中二階から1階へと上がった。この階は応接用の部屋が何個かあり、メイドさんたちのテリトリーって感じだ。


「よし、それじゃあ聞いていこうか」


 まずは近くを通りかかったメイドさんに声を掛ける。誰か不審な人物が調理場に下りるのを見てないか。今日の王城への来客はどうなっているのか。

 そういう質問を投げかけると、前者にはノー。後者はメイド長に聞かないと分からないとのことで。


「何かありましたか?」


 と。背後から声を掛けられ、振り返る。いつも謁見の間まで案内してくれる、中年の女性メイドさんだ。


「あ、メイド長。ちょうど良かったです」


 質問攻めにしてたメイドさんが、彼女を見て安堵したように笑った。

 この人がメイド長さんだったんだね。


「もしかして、つまみ食い犯の件ですか?」


「あ、はい。そうです」


 先のメイドさんが、お役御免とばかりに会釈して持ち場へ戻っていく。それに私も会釈を返しながら、


「メイド長さんの耳にも入ってたんですね」


「ええ、まあ……」


 どこか歯切れが悪い。何か思案するような間があって、


「聞き込みですよね?」


 と問い返される。私が頷くと、彼女は天井を見上げた。


「王族の方々にも話を通しておきますので、全階お願いします」


「え……あ、はい。分かりました」


 王様とかに普通に話しかけて良い感じなんだ。まあ古いRPGとかだと、話しかけるどころか、王様の部屋とかにも勝手に入ってタンス漁ったり出来るもんね。

 

「びーむ、またみたい!」


 ビームは多分だけど、特別なイベントでしか出してくれないと思うよ。





 そうして。私たちはメイドさんたちへの聞き込みを続行した。ちなみに今日は城への来客は郵便や食材搬入といった業者さんのみ、ということだった。

 そして聞き込みの結果も、不審者の目撃情報ゼロで終わった。


「どろぼーさん、みつからない?」


「うん。居ないねえ」


 仕方ない。2階へと上がる。

 このフロアは大臣や学者先生が働くための、執務室や書斎が並んでいるという話だけど。


「廊下に誰も居ない……」


 マジメに働いてる限り、自室から出てくることは無いからね。これが健全な状態ではあるけど……私たちとしては困った。


「おへや、はいってみる?」


「いやあ、流石に」


 仕事に集中してるところに、全く知らない姉妹がいきなり入ってきたら……うん、厳しいね。最悪、兵隊さんを呼ばれかねない。


「どうしよう……」


 と、途方に暮れかけた時。すぐ近くのドアがガチャリと開いた。中から出てきたのは……50代くらいのおじさん。無精髭と丸メガネが印象的だ。


「おや? 知らない顔だね。兵隊さんを呼んだ方が良いのかな?」


 部屋に突入せずとも呼ばれそうになってるし……


「あ、あの。私たち、冒険者で!」


「ぶろんず!」


 見せつけるように胸を張るももちゃん。おじさんは、眠たげな目を向けると、「ああ」と頷いた。


「冒険者か。ブロンズということは……ちょっと頑張った子たちだね」

 

 駆け出しとか、新米とか言おうとしたところを、きっとオブラートに包んでくれたんだろうな。


「うん! ももちゃん、なんこもくえすとしたの!」


 4個だけね。


「そうか、そうか。はは。偉いなあ、ももちゃんは」


 おじさんが優しく笑って、ももちゃんも社長さんのポーズ。


「それで。ここに来たのも、クエストかい?」


 今度は私に向けて。


「あ、はい。実は……」


 経緯を話す。シチュー泥棒を捜して、ここまで来たのだと言えば……おじさんはアゴを無精髭ごと撫でながら、視線を宙に向けた。


「なるほどね」


「何か心当たりが?」


 そんな雰囲気だったけど。


「いや。実は私は学者でね……魔道具という珍しいアイテムの研究をしてるんだ」  


 急に話が飛んだ。私は「はあ」と生返事のような物を返してしまう。

 おじさんは気を悪くした風でもなく、続けた。


「それでね……実はこの王家には、秘宝とも呼ばれる魔道具があってね。全部当て推量なんだが……ああ、いや。明言はしないでおこうか」


 なんとも全く要領を得ない。彼の中だけで、仮説、検討、結論まで出てしまってる感じだ。そしてそれを私たちには言ってくれないという。

 禅問答みたいな徒労感に、私が萎えてると。


「おっとと。悪かったね。これはお詫びだ」


 そう言いながら、おじさんはズボンのポケットに手を突っ込む。そして、中から何か取り出してきた。こっちに向けるので、反射的に掌を差し出す。受け取ると、硬い感触。見ると……


「フラワーコイン!?」

「ふらわーこいん!」


 ダークピンクの渋い色合い。


「そのフラワーコインも、厳密に言えば魔道具なんだよ」


 不思議な力を秘めている、といえば確かにそうだし。それっぽいけど。


「良いんですか? 依頼も受けてないのに」


 咄嗟に、男性からの理由なき厚意に警戒してしまうけど……ここはゲームだったね。


「うん。今後、何か頼むこともあるかも知れないし。顔繋ぎということでね」


 そうして、おじさんは改めて名乗る。ゾードさんと言うそうだ。

 私たちも名乗り、なんだか分からないけど、学者さんと顔見知りになってしまった。今後、きっと何かのイベントで役に立つんだろうけど……今はクエスト中だ。コインのお礼と挨拶だけ簡単に済ませ、王様の居る3階を目指す。


 この2階には他にイベントは無さそうだし……それに、なんというか。

 メイド長さんが真っ先に「王族にも聞き込みをしろ」と言ったことや、ゾードさんが急に王家の秘宝について話し始めたこと。ここら辺をメタ読みすると、カギは間違いなく3階だろうな、と。

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