5-1:ブロンズ冒険者
ログイン5回目。またまたギルド前だね。前回は長丁場になってしまったから、完了報告を後日に回すことにしてログアウトしたんだっけ。なので、今日はそこからだ。
ももちゃんと手を繋いで、ギルドの扉を開ける。すっかり顔馴染みになったパールさんがニッコリと笑いかけてくれた。
「こんにちは」
「ちは」
「こんにちは。依頼の達成報告だね」
話が早いね。ふと思ったんだけど、達成したまま報告せずに(現実時間で)1週間とか放置してたら、セリフが変わったりするのかな。
……まあ実験することはないだろうけど。
「はいたつ!」
「うん。よく頑張りました」
言いながら、パールさんが依頼書にハンコを押した。そしてフラワーコイン1枚と、9000Gの入った皮袋をくれる。お金はまた預けないとね。
「新しい依頼も出てるよ」
言われて、掲示板の方を見る。今回も1枚だけだね。
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No.5
<料理がつまみ食いされてしまう>
依頼者:王城の料理番アロッカ
内容:つまみ食い犯の捕縛
報酬:8500G
フラワーコイン1枚
備考:王城の地下にある厨房を訪ねて、まずは話を聞こう
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今度は王城かあ。最初にソトカール王に謁見して以来になるね。
「つまみぐい……」
「ご飯作ってる途中で、パクッて食べちゃうことだよ」
「……」
バツが悪そうに下を向くももちゃん。うん、そりゃ心当たりあるだろうね。何度かママに現行犯逮捕されてるし。
「お城に行こうか。つまみ食いしてる人を捕まえないと」
ちょっと怯えたような表情で見上げてくるのが、可笑しい。他人事とは思えないみたい。
そんなももちゃんの手を引いて、私はギルドの建物を後にした。
………………
…………
……
城門の前まで来ると、門番さんたちが私たちを見つけて、片手を挙げる。顔を覚えててくれたみたいだ。
「こんにちは」
「ちは」
ももちゃんも、もう鎧姿に尻込んだりしない。
「やあ。王様が謁見なさるそうだよ」
「前回と同じように、メイドさんについて行って」
あ、あれ? 別イベント?
よく分かんないけど、通常クエストより優先される感じっぽい。まあ王様直々のお呼び出しだもんね。
「何だろうね?」
「なんだろうね?」
真似っこしてくるももちゃんの頬を軽く指で突ついて。私たちは門をくぐって、庭へと入った。やっぱり前回同様、メイドさんが待っていた。
「どうぞ、こちらへ」
導かれるまま、城内に足を踏み入れる。また階段を上り、途中でバテたももちゃんを抱っこして(これ、私の方が運動になる)、やがて謁見の間に到着。
「おお。冒険者ももちゃん、幸奈よ」
あ。オマケ扱いじゃなくなってる。やったね。
「こ、こんにちは。陛下」
「ちは」
こんな挨拶で良いのかな。と思ったけど、特に何も言われないので大丈夫っぽい。
「お主らの働きは、余の耳にも届いておる」
あ、これは。褒めてもらえる流れかな。何かくれるかも。
「一部、グレーな手を使うこともあったそうだが……」
これ、私のことだ……
ていうか、こんな専用セリフがあるってことは、アレはやっぱり良くないクリアの仕方だったんだろうなあ。今後は気を付けよう。
「概ね誠実に励んだと聞いておる。そこでだ」
話の流れが変わる。やっぱり何かくれそう。
「お主たちを、ブロンズ冒険者と認定する」
お、おお! ランクアップだ!
「お2人とも、近くまで」
メイドさんが掌を差し向ける。王様のすぐ近くまで行って良いみたい。
「そ、それじゃあ失礼して」
ももちゃんと手を繋いで、玉座の1メートルくらい手前へ。どうしよう、片膝とか着いた方が良いのかな。
と、思ったら。王様がギュッと瞑目する。
「…………」
何かを念じてるっぽい。一心不乱という感じで、額にいくつも皺が刻まれている。
そして。次の瞬間、カッと唐突に両目を見開くと、
――ピカー!
ビームが出た!?
「かいじゅうさん!」
本当に怪獣だよ、これ。眩しくて思わず薄目になってしまうけど、どうも攻撃用のヤツじゃなさそうで、懐中電灯で照らされてるような。
数秒あって、王様が瞳を閉じる。それでビームも消えた。
「ぴかーっおわり?」
「うむ。疲れたぞ」
疲れるんだ、やっぱり。
ていうか、なんだったの?
その質問をする前に、メイドさんが、
「バッジをご覧下さい」
と言う。私もももちゃんも、自分の胸元に視線を向けると。鉄色だったバッジが、赤銅色になってる! さっきの王様のビームで変化したの!?
「凄い! 凄いね!」
「うん! すごい!」
これはブロンズ冒険者の証ってことかな。となると、冒険者はバッジの色を見れば、そのランクが分かるってことだね。
『冒険者ランクが上がりました』
『他の街でも活動できるようになりました』
視界の上の方に、そんなメッセージが立て続けに現れる。
そっか。一応、色んな街を旅しながらクエストをこなしていくのが趣旨だったね。ていうか、今までは他の街に行けなかったんだ。試したことも無かったから、知らなかったや。
「さあ、ゆけ。ももちゃんと幸奈よ。そしてどんどんフラワーコインを集めるのだ」
王様がビシッと遠くを指さす。
「はい!」
ももちゃんが大きなお返事。子供ながらに……頑張りが認められたこと、力を必要とされていることが分かるんだね。そしてそれが嬉しいみたいで、私の手を引っ張って「早く早く」とせがむ。
「うん、行こうか」
新しい街も魅力的だけど、まずは目の前のクエストに全力で当たらないとね。
私たちは改めて王様にお礼を言って、謁見の間を後にした。




