表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3歳児ももちゃんのVRMMO大冒険  作者: 生姜寧也
第4話:想い届けます

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/60

4ー5:仲裁と集荷と

 ケーキを食べた後、2人で郵便局まで戻る。と、そこで。周囲が騒がしいことに気付いた。事務所の中で、何人かが大きな声を出してるっぽい。


「けんか?」


 かも。クレーマーが事務員さん相手に怒鳴ってるとか。

 私はももちゃんにその場で待つように指示して、1人でコッソリ窓に近づいた。


「しかし、新人だけに任せても……」

「大丈夫なのよ。矢印が出る人だから!」

「冒険者さんだから!」


 矢印が出る人=冒険者なんだね……この世界は。

 ていうか、これはひょっとしなくても私とももちゃんのことかな。


「あ」


 事務員Aさんと目が合ってしまった。指先が見えないほどの速さで手招きされる。

 ええ……なんかクレーマー対応ではなさそうだけど。ちょっと面倒なことになりそうな予感。

 

「っ! っ!」


 ダメだ。Bさんまで気付いて、高速手招きしてくる。

 観念して、私はももちゃんを回収して中に入る。

 

 そこでは……事務員さん3人と、初老の男性がカウンター越しに対峙していた。真っ白な頭を短く刈り込んだ、少し目つきの鋭いおじいちゃん。


「ほら。この子たち! 午前の郵便物配ってくれたの!」


 事務員Aさんが、入ってきた私を指して叫ぶ。けど、初老の男性は動じず。


「そうか、それはありがとな。けど、午後からは俺が行く」


「ヨルゲンさん!」


「ダメよ! まだ熱もあるんでしょう!?」


 途中から半ば察してたけど、この人が本来の配達員のヨルゲンさんか。こちらは声を荒げることは無いみたいだけど、厳みたいに引かない雰囲気がある。


 なおも事務員さんが叫ぼうとしたところで。思わぬ声が、場の空気を一変させた。


「うう……ぐす……けんかしちゃ、や。やなの……」

 

 私の背後に居るももちゃんだった。全員、一瞬固まってしまって。けど、ももちゃんの丸いほっぺの上を流れる涙の粒を見て、再び時が動き出す。


「あ……ももちゃん、泣かないで」


 私は抱き上げて、頬を寄せた。ももちゃんからもキツく首元にくっついてくる。


「あ、違うのよ。私たちは、えっと」

「ヨルゲンさんが聞き分けのないことを言うから、つい」

「ねえ。止めてただけだから」


 大慌ての職員さんたち。ちゃっかりヨルゲンさんに責任を押し付けたね。

 まあ話の流れから察するに、彼が無理に配達に出ると言い始めたのが発端みたいだから、あながち濡れ衣でもないんだろうけど。


「ぬう」


 当のヨルゲンさんは唸りながら、顔を赤くして……ん?


「あ!」


 その赤い顔のまま、フラついて床に片膝を着いてしまった。


「ほら、言わんこっちゃない!」

「安静にしてないと!」

「あ、これはケンカじゃないからね?」


 事務員のおばさんたちが血相を変えて、カウンターの中から飛び出した。


「そうだね。やっぱりケンカじゃないみたいだよ、ももちゃん」


 配達の途中でも感じたけど、ヨルゲンさんは人に慕われている。今も、彼女たちは純粋に心配だから声を荒げてしまっていたんだ。

 ももちゃんはグズグズ鼻を鳴らし、納得してない様子だけど……もう少しお姉さんになったら分かるようなことなのかも知れない。


「ほら、歩ける?」

「ポーションは?」


 2人が左右から肩を貸し、老体を運んでいく。さっきの更衣室の隣が休憩室らしく、そこに寝かせるつもりみたいだ。

 残った1人の事務員さんは、


「ゴメンなさいね。ももちゃんも」


 私たちに謝ってくれるが、なんと返して良いか分からなかった。

 ももちゃんは少し赤くなった目で、ジッとヨルゲンさんの背中を見つめている。


「10年以上、皆勤だったのよね。本当に責任感の強い人で」


 凄いね。それだけの時間……来る日も来る日も、荷物や手紙を届け続けてきたんだ。

 

「それに家々の困りごとなんかも頼まれたらやっているみたいでね。庭木の剪定なんかも、いつの間にかプロみたいになっちゃって」


 可笑しそうに言う事務員さん。

 口数多く、愛想を振りまくタイプには見えなかったけど。その代わり、責任感が強くてマジメで誠実な人、か。


「少し休んだら……行くからな……荷物を頼むぞ」


 うわ言のように呟く声が聞こえて、事務員さんはまた呆れたように笑う。


「ポーション飲ませて、もう一眠りさせれば大丈夫でしょ」

「これだけ元気が有り余ってるくらいだから……ね!」

 

 そう言いながら、肩を貸しているうちの1人がヨルゲンさんのお尻を膝で軽く蹴った。

 そして反対側の事務員さんが、休憩室の扉を開け……3人は中へ入って行って見えなくなる。


「さ。2人は午後の業務をお願いね」


 お昼休憩は実は15分くらいしか経ってないけど、局に戻るとイベントが進む管理だったみたいだね。もう就業の扱いになっちゃってる。


「配達は無いから、集荷に行ってちょうだい」


「あ、そうなんですね」


 今日の午後に集荷した郵便物は、明日の午前に回されるみたい。

 ポスト……というか、木箱のような物が中央広場にあるらしく、そこから回収してくるだけ。


「かんたん?」


「重たい荷物もあったりするわよ?」


 侮るももちゃんに、事務員さんが釘を刺す。怯んだ顔で私を見上げてくるのが可笑しい。


「リヤカーかな。あんまり重いと」


 ももちゃんに作ってもらおう。

 というワケで、私たちは郵便局を後にする……前に。ギルドで預かった手紙だけ渡して、大通りへと戻るのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ