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3歳児ももちゃんのVRMMO大冒険  作者: 生姜寧也
第4話:想い届けます

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4-4:歓迎されないお手紙

「ももちゃんのおてがみ……だめだった?」


 店を出たところで、ももちゃんがそんなことを言い出した。ちょっと悲しそうな声音。


「そんなことないよ。ただ、世の中には相手に喜ばれないお手紙もあるの。それは配達員さんやドローンさんのせいじゃなくてね」


 ももちゃんが小首を傾げる。


「そうだなあ、例えば……」


 考える。ももちゃんにも分かりやすいのだと。


「例えば、ももちゃんにティラノサウルスさんのぬいぐるみを買いませんか? ってお手紙が来たら?」


「いらない。ももちゃん、てぃらーさーるす、いらない」


 プテラノドン推し過激派のももちゃんは、ティラノサウルスの方が人気、知名度ともに遥かに上なことに納得がいってない。それで、ちょっと連中を敵視してるところがあるんだ。


「それとおんなじ。さっきね、オルディアさんはもうケーキの材料あるのに、要りませんか? って言われたの」


 なるほど、という顔をするももちゃん。


「いらない!」


「そう。そうなの。だからオルディアさんも、ももちゃんにキライキライしてたんじゃないんだよ」


「うん、そっか」


 安心したのか、ももちゃんが足元に絡みついてくる。その頭を優しく撫でて、


「さあ。あと1つ」


 と告げると、ももちゃんもおカバンをパンパンと小さな掌で打ち鳴らす。


「あとひとつ! あとひとつ! おわったら、けーき?」


「うん。お店に戻って買おうね」


 手を繋いで、最後の宛名のもとへ。こちらも知り合いだ。

 北へ上っていき、やがて見えてきた。数日前にも訪れた兵舎。


「かいるくん! べしちゃん!」


「ベシーちゃんはお留守番してると思うけどね」


 あのクエストの後だと、やっぱり心配になる。けど、仕方ないよね。カイルくんも働かないと生きていけないし。


 私たちは以前も会った門番さんたちに挨拶をする。やっぱり彼らも私たちの格好を見て、怪訝そうにしたけど。事情を話すと、なるほどと得心してくれた。


「ヨルゲンの爺さん、病気かあ」

「兵隊あがりだし、丈夫な人だけど、たまにはそういうこともあるわなあ」


 門番さんたちも親しいのかな。

 ていうか、元兵隊さんなんだ。


「それで……カイルだったな。ちょっと待っててくれ」


 門番さんの片割れが、兵舎の中へ入っていく。


「今の時間なら、練兵場で稽古してるハズだ」


 残った方の門番さんが教えてくれた。

 少し待っていると、門番さんとカイルくんが連れ立って出てきた。


「おまたせ。わざわざありがとうね」


 カイルくんは汗だくで、前髪も額にくっついていた。手には竹刀も持ったまま。


「精が出るね。兵隊さんの鑑だ」


 と、褒めてみたけど。カイルくんは曖昧な笑みを浮かべるだけだった。ん? なんか、地雷踏んだ?


「……それで、手紙を持ってきてくれたんだよね?」


「あ、うん。ももちゃん」


 言われるまでもなく、ももちゃんはおカバンをゴソゴソ。最後の1枚を取り出し、カイルくんへ差し出す。腕を斜め上に懸命に伸ばすので、カイルくんはしゃがんでそれを受け取った。


「ありがとう。ももちゃん」


 ただオルディアさんの例もあるからか、ももちゃんはジッと伺うような視線を向けている。また要らないお手紙を運んでしまったんじゃないか、と。


「おてがみ、だれから?」


「ん? あ、ああ。叔母さんだよ。港町に住んでるんだ」


 あ、それなら要らない手紙ではなさそうだね。事実、カイルくんも少し嬉しそうだし。


「ももちゃん、良かったね。家族からだって」


「〜〜♪」


 安堵の舞。色んなクネクネがあるね、ももちゃんは。


「それじゃあ、ゴメン。僕は戻るよ。2人も、お仕事頑張ってね」


 手紙を大事そうに懐に仕舞って。カイルくんは爽やかな笑顔を残して、兵舎へ戻って行った。


「おしまい?」


「うん。これで終わり」


 午前の部は、ね。


「けーき!」


「はいはい」


 そんな念押さなくても忘れてないよ。

 私たちは門番さんにも挨拶をして、兵舎から東通りへと戻る。オルディアさんは戻ってきた私たちを見て、少し驚いた様子だったけど、


「けーき、ください!」


 ももちゃんの爛々とした瞳と、私の苦笑を見て、概ね把握してくれたみたい。

 2人で店内をグルリと回らせてもらい、ケーキを選ぶ。

 結局、ももちゃんは前も食べたバラの花びらケーキ、私はフルーツロールをテイクアウトした。


「ももちゃん、前も食べたんだよ、それ」


「うん! おいしかった!」


 まあ良いか。下手に冒険させて、おこちゃまの口に合わない物に当たったりしたら、「ねえねのせいだ」って責められかねないからね。


 紙箱に入ったケーキを揺らさないよう、大事に持ち帰る。途中でギルドに寄って、依頼者への返信を受け取り、郵便局へ戻った。


「ただいま戻りました」


「あ、おかえり〜」

「早かったね」

「迷わなかった?」


「はい。矢印のおかげで……」


 もし地図だけでやらされてたら……あ、でも。ももちゃんが何とかしてくれたかな。3歳の妹頼りっていうのも情けない話だけど。


「そう、それは良かったわ」

「お疲れ様」

「午後まで休憩して良いからね」


 ということで。一時解放。

 ももちゃんもウキウキしてる。ケーキがあるからね。


「噴水広場で食べよっか?」


「うん!」


 というワケで、広場へ出た。お昼休みだし混み合ってるけど、1つだけベンチが空いてる。そこに2人で並んで腰掛け、間にケーキの紙箱を置いた。


「あ! しまった。フォークが無いや」


 そうだった。前の時は、パティスリーの店内で食べたから、オルディアさんが用意してくれたけど。


「ももちゃんがつくる」


 そう言って、カバンから粘土を取り出した。ああ、これまた失念してた。そうだったね、ももちゃんは何でも作れちゃうんだ。


「お写真要る?」


 画像検索しようとタブへと手を伸ばしながら訊ねる。だけど、ももちゃんは首を横に振って、ベンチの上で粘土をこね始めた。


「……」


 そして瞬く間に成形。幼児用の丸みのあるフォークが2本完成した。


「はい、ねえね」


 片方を渡してくれる。


「ありがとう」


 受け取ってから、辺りを見回した。広場に出てる屋台の中から、牛乳を売っている店を発見。すぐに買って戻ってくる。


「それじゃあ、いただきますしようか」


「うん!」


 元気よくお返事して、小さな掌同士をパチンと打ち合わせるももちゃん。


「「いただきます」」


 というワケで、姉妹でケーキランチ。

 ……フルーツロールも凄く美味しかったです。

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