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3歳児ももちゃんのVRMMO大冒険  作者: 生姜寧也
第4話:想い届けます

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4ー3:南へ東へ

 南区、カイルくんの家のご近所さんが次の宛先だった。

 矢印を辿っていくと、古井戸の東側のようだった。


「あ! 不意打ちの幸奈だモグ!」


 変な二つ名つけるのやめて!?


「ももちゃんも居るモグ」


 モグラたちが、ワラワラと集まってくる。すっかり井戸近辺を縄張りにしてるみたいだね。


「どう? その後、住心地は」


「悪くないモグ」

「静かで、少し暗いのが良いモグ」

「時々、おばあちゃんとかが話し相手になってくれるモグ」


 良かった。気に入ってくれてるみたいだね。しかし、通行人もモグラが人語を話すことに違和感無いんだね。動物は普通に喋れる世界なのかも。

 あ、でもベシーちゃんは喋れなかったしなあ。基準が分からないや。


「そっちは今日はお出かけモグ?」

「変な服を着てるモグ」

「カバンから良いニオイがするモグ」


 ニオイは……野菜の入った小荷物だろうね。


「今、郵便物を届けるクエストをしてるの」


「そこのおうち」


 ももちゃんが小さい指でさしたのは、古井戸の右隣の家だ。


「ああ、あそこは留守モグよ」

「仕事が忙しいモグ」

「ポストに入れとくモグ」


 そっか。この時間だと働いてる人は、出払ってるよね。


「帰って来たら、ポストを見るように言ってやるモグ」


「ありがとう。助かるよ」


 ていうか、ご近所付き合い、既に結構築いてるなあ。コミュ力高モグラだ。


「お安い御用モグ。それじゃあモグ〜」


 モグラたちは土中へと帰って行った。

 私たちも木製ポストに手紙を投函してから、次の目的地を目指した。


 南区の端にアパートが建っているみたいで。そこの3階に住んでいる学生に、野菜入りの小袋を渡した。痩せぎすの青年で、北区の学校に通ってるそうだ。


「実家からだ。助かるよ」


 多分、苦学生というヤツだ。地方から出てきてアパート住まいということだね。


「ありがとう。冒険者さん」


「いえいえ」


「いつもの配達員さんは……病気?」


「みたいですね。熱があるとか」


「そうか。良い方だけど、ご高齢だからね。心配だ」


 へえ。配達員さん、交流があるんだね。

 ……私たちの社会では、ドローンが主流だから、中々そういう関係は聞かない。


「あ、引き留めてゴメンね。それじゃ」


 学生さんはアパートのドアを閉めた。私たちも階段を下りて、地上へ。


「かるくなったね!」


 ももちゃんが私のカバンを見て、ニマッと笑う。あら、心配してくれてたんだ。優しい子。

 お帽子の上から頭を撫でる。割とフカフカで、掌が気持ち良い。


「つぎは?」


「次は東区だね。あ、例のケーキ屋さん」


 宛名には『パティスリー・オルディア』と書いてある。ていうか、店名にオルディアさんの名前を使ってたんだ。


「けーき! けーき!」


「ももちゃん、今日は違うよ。もらえないからね」


「じゃあ、かう!」


 その発想は……無かったなあ。配達途中に買い食いは斬新すぎるから流石に却下だけど、落とし所としては……


「クエストが終わったら、買って食べようか」


 現実で食べるのとは違って、VRゲーム世界では味とか食感は再現されるけど、お腹には入らない。いくら食べても太らない、ということで。それで満腹中枢だけ刺激するダイエット法もあるとかないとか。


「けーき! かってくれるの!?」


 結構ダメ元で言ってたらしく、まさかの色よい返事に、ももちゃん大慌て。


「かってくれるの!?」


「うん。1個だけだよ?」


「はい!」


 元気なお返事。

 お金も結構あるから、良いヤツを1つ買おう。フルーツを使ってるのが高級なんだっけ。


「ねえね! はやく!」


 って。ももちゃん、もう5メートルくらい先を走ってるし。


「ももちゃん、まだよ! 配達が終わってから!」


 もう買ってもらえると思ってそうなので、釘を刺すけど。あんまり効果は無く、子供特有の甲高い声をあげながら、道を走っていく。


「前向いて! コケるよ! 待って!」


 どれか1つくらい聞いてくれたら良いのに。ももちゃんは大喜びで走っていく。

 ……全く。折角カバンが軽くなっても、走らされてたら意味ないんだけど。


「待って! ももちゃん!」


 追いかけて行って、捕まえる。後ろからほっぺを摘んで、モチモチ。


「やあ〜〜ふふ」


「やあ〜〜じゃないでしょ。急に走ると危ないんだから」


 注意しながら、だけど私も笑ってしまう。本当、なんでこんな柔らかいの、このほっぺ。


「……」

「……」

「……」


 って。もう噴水広場から見える位置だったみたいで。街の人たちが不思議そうに私たちを見てるよね。

 そうだった。今は郵便局の代表、仕事中なんだから、程々にしとかないと。


 意味も無く咳払いして、


「さ。行くよ、ももちゃん」


 今度はちゃんと手を繋いで、歩いていく。広場を抜けて、東通りへ。

 途中で魚屋さんや乳製品屋さんを素通りし、オルディアさんのお店前へ。


「あ」


 店内の彼女と目が合った。私の顔を見て微笑み、その下の服装を認めて目を丸くする。

 苦笑しながら、店内へと入った。イートインのお客さん(どこかマダムっぽい雰囲気)が女子会をしてるだけで、オルディアさんは手すきみたいだった。


「こんにちは。どうしたの? その格好」


「あはは。実はですね」


 本来の配達員が急な発熱でお休みになったこと。私たちが代役のクエストを受けていること。そしてこのお店にもお手紙があることを伝えた。


「まあ、そうなのね。ヨルゲンさんは発熱。おじいちゃんだし、長引かないと良いけど」


 ここでも配達員さんは交流があるみたいだね。そしてヨルゲンさんていうお名前なんだ。


「一応、事務員さんいわく、明日には出てこられそうということですけど」


「そう。それなら安心ね」


 オルディアさんは、そこでももちゃんを見た。というより、その肩に掛かったカバンだね。


「ももちゃん、お手紙」


「うん」


 カバンを開けて、中身から2通を取り出す。私はそのうちの、パティスリー宛の方を手に取り、オルディアさんに渡した。


「はい、ありがとう」


 と受け取ったは良いものの。


「あら。また営業の手紙ね」


 差出人を見て、彼女は渋い表情に変わった。

 どうも今契約してる小麦農家からウチに乗り換えませんかという趣旨の提案だそうで。全部読むこともせず、オルディアさんは手紙を畳んでしまった。

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