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3歳児ももちゃんのVRMMO大冒険  作者: 生姜寧也
第3話:モグモグパニック

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19/60

3-4:グレーでした

「いけるぞ!」

「頑張れー!」

「あと20秒!」


 青年団の声が飛ぶ。

 ももちゃんも私も、少しずつ慣れてはきたものの、前半の遅れが響いてる。更には、


「あ! またあの離れた場所に出やがった! チクショウめ!」


 デグルスさんの言う通り、私たちが「捨てた」一番遠い穴、あそこを1匹が頻繁に使うようになったんだよね。

 戦略としては正しいけど、こっちからすれば打つ手ナシで、とても困る。


「ももちゃん、ダメ。あそこは無理だよ」


 足をそちらに向けかけたももちゃんに注意する。

 追いかけたくなる気持ちは分かるけど、恐らく罠だよね。移動したのを見計らって、こっち側に出まくるに決まってるもん。


「やあ!」


 と言ってる間にも、出てきたモグラを叩く。あと8秒で、叩いた数18。厳しい。


「ももちゃん!」


 ももちゃんの方に、ピョコンと1匹出た。私の声に振り向いたももちゃんが、慌ててハンマーを振り下ろす。

 だけど準備不足だったせいか、ハンマーはモグラの頭ではなく、


「へぶっ!?」


 顔を打ってしまった。「あ」という表情のももちゃん。競技の途中だというのに、しゃがみこんでしまう。


「ごめなさい。いたい、いたい?」


 モグラの尖ったお鼻を撫でてあげてる。ちっちゃなお手々とちっちゃなお鼻。和んでる場合でもないんだけど……つい、足が止まってしまう。

 と。その光景に動きが止まったのは私だけじゃなくて。


 ――にょき

 ――にょき


 モグラB、Cも気になったみたいで、近くの穴から顔を出したまま。しかもこっちに後頭部を向けてる。チャンスだ!


「えい! えい!」


 ――ピコ! ピコ!


 その頭を叩いた。すぐに視界の上部を見る。『残りタイム:0:03』と『叩いた回数:20』の文字。


「やった! クリアだ!」


 もう無理かなと思ってたし、3000Gのことも頭をよぎってたけど。これで何の心配もなくなったね。


「……」

「……」

「……」


 ん? あれ? 折角クリアしたのに、全く祝福ムードじゃない。どころか、なんか呆れたような目で見られてるような。


「それは流石に」

「ちょっと人道的になあ」

「正直、引くぜ」


 あれ!? 味方のハズの青年団にまで白い目で見られてる。

 私も少しずつ冷静になってくると……ちょっと不意打ちっていうか、うん。まあね。仲間を心配して止まってたのか、ももちゃんとの交流を見守っていたのか。いずれにせよ、あんまり後ろから叩いて良い場面ではなかった気もしないでもないような。


「あ、で、でも。カウントも止まってなかったし」


 インプレーだったのは間違いない。


「まあそれを言われると弱いモグ。ワシもプレーを止めるべきじゃったモグ」


 いつの間にか審判的な立ち位置になってた長老さんが、苦々しい顔で言った。ていうかモグラなのに、みんな表情豊かだなあ。


「仕方ないモグね」

「ルールはルールモグ」

「ダーティーな手も、競技の一部モグ」


 うう。完全に悪者だあ。でもあの時は、残り秒数とあと2ピコっていうことしか頭に無くて必死だっただけで、決して悪意を持っていたワケじゃないんだよ。


「ねえね」


 ももちゃんが近づいてきて、ピトッと足にしがみついてくる。責められてる私を守ろうとしてくれてるのかも知れない。

 ああ、私の天使。


「まあとにかく、こっちが勝ったワケだけどよぅ。オマエら、どこか移住先のアテはあんのか?」


 デグルスさんが話を進める。


「仕方ないから、また探し回るモグ」

「どこか人が少ない場所が良いモグねえ」

「それでいて、寂しくないように街中が良いモグ」


 意外と贅沢。

 あまり構われたくはないけど、他の生物の気配が全く無いのも嫌ってことかな。モグラなのにハリネズミのジレンマ。


「ちなみに、あそこら辺はダメなの?」


 私たちが杭を打ってる場所から少し離れたエリア。土地は広くあるんだし、移住までしなくてもと思ってしまう。


「あそこら辺は、硬いモグ」

「爪が割れそうになるモグよ」

「それに、適度に人が居るのは良いモグが」

「祭などやられては、期間中ドシドシ響いて寝られんわいモグ」


 ああ、それはそうか。確か本来は夜行性の動物だったと思うし、昼間の花見大会は堪えるよね。


「どこか静かで、人がたまに来るくらいの場所かあ」


「ふるいど!」


 ん? そっか。そうだよね。あそこくらいが丁度良いかも。ももちゃん、ナイスだよ。


「ああ、南区の古井戸の辺りか」

「確かに少し暗いし、モグラは住みやすそうだな」

「半分打ち捨てられてる感じだけど、人も全く来ないワケでもねえし」


 青年団の面々も納得顔だ。お手柄ももちゃんは、また社長さんみたいになってる。そのほっぺを少し撫でてから、モグラたちを見やると、


「場所の詳細を頼むモグ」

「はあ。また何日もかけて移動モグか」

「仕方ないモグ。ちょっとアレだけど、負けたのは事実モグ」


 ゴメンね? 本当にゴメンね。

 ……って、そうだ。


「ももちゃん、ケージを作ってあげようか」


 作るのはももちゃんだから、なんか重ねて申し訳ないけど。


「けーじさん? ばあばがすきな」


「それは刑事さんのドラマね。ケージっていうのは、動物を入れて運ぶカゴみたいな物で」


 言いながら、空中のタブをタップ。再び検索窓を出して、文字を入れると、画像が出てきた。


「これにもぐらさん、いれるの?」


「うん。コレに入れて私たちが運んであげたら、モグラさんたち楽チンだから」


 何日もかけて地中を掘って移動する手間が省けるハズ。


「じゃあつくる! おかお、たたいちゃったから……」


 気に病んでたんだね。やっぱり優しい子だ。腰を落としてギュッとする。元々体温の高い体が、運動後でポカポカだね。


「ねえね、つくれない」


 あれ、押しのけられちゃった。辛い。


「……」


 ももちゃんはピコピコハンマーを解体。粘土に戻すと、今度はケージを作り始める。参考画像が犬用のだから、なんかゴツくなってるけど、良い感じに仕上がっていく。


「……」


 凄い集中力。通気用の網目も作って……完成だ。質感、立体感が増していき、具現化。


「おお。凄いモグ」

「ハンマーだけじゃなくて、こんなのも作れるモグね」

「早速、家族も呼んでくるモグ」


 あ、この4匹だけじゃないんだね。

 モグラたちは、いそいそと穴へと戻っていき……2分ほどして追加10匹のモグラが顔を出した。

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