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3歳児ももちゃんのVRMMO大冒険  作者: 生姜寧也
第3話:モグモグパニック

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18/60

3ー3:ピコハンももちゃん

「モグラ……叩き?」


「なんだ、それ」


 青年団は知らない様子。私の方はアナログオモチャのそれで遊んだ記憶が僅かに残ってる。確か、穴からピョコピョコ出てくるモグラを、ちっちゃいハンマーで叩くんだよね。

 ……つまり。まさに今、舞台が整ってる。


 私は青年団にも簡単にルールを説明。まあシンプルで分かりやすいから、彼らもすぐに把握してくれた。


「要するにハンマーでどつけば良いんだな」

「ちょうど杭打ち用のがあるからな」

「よっしゃ」


 死んじゃう、死んじゃう。

 モグラさんたちも血相を変えて、もっと柔らかいハンマーじゃないと勝負にならないと訴える。


「って言われてもな。柔らかい素材……」


 デグルスさんがアゴに手を当てて考える。


「……ちょっと待っててください」


 私は検索窓を開き、『ピコピコハンマー 画像』と打った。ももちゃんがニョキッと足元から出てくる。難しい話が続いて、蚊帳の外になってたけど、自分の出番だと察したみたい。アゴを上げて、少し胸を張ってる。うわ、古いマンガに出てくる社長さんみたいだ。


「ももちゃん、これ作ってくれる?」


「りょーかいもぐ」


 あ、真似してるし。

 ももちゃんは火ばさみを粘土へと戻すと、続けざまに成形。持ち手の部分と、叩く部分を作って、くっつける。アコーディオンみたいに波打ってる所も再現してて、本当に3歳とは思えない腕前だ。


 そして、徐々にカラフルな色が着いてきて。質感も立体感も出てきたら、完成だ。モグラと青年団の双方に褒められて、ますますフンスするももちゃん。


「よし、これなら」

「思い切りぶっ叩いても大丈夫ってことだな」

「腕が鳴るぜ」


 青年団がヤル気マックスだけど、モグラたちは首を横に振る。


「ムキムキハゲとその仲間は禁止モグ」

「そのフニャ素材でも危ないモグ」

「そっちの2人が良いモグ」


 と、私たちを長い爪の先で指す。

 えっと……


「もう1本作るモグ」

「2人がかりで来るモグ」

「2分間で、20回叩けたらそっちの勝ちモグ」


 ということは、6秒に1回は叩かないとダメな計算か。ももちゃんの足も考えると、結構しんどいかも。


「きたねえぞ、モグラ」

「そうだぜ。女の子を指名するなんて」

「そうまでして勝ちてえのか」


 青年団からは不平不満があがるけど。まあ仕方ないね。多分、プレイヤーがやらないといけないイベントなんだろうし。それに、ももちゃんのキラキラした瞳ね。コレを見せられちゃうとね。


「……やれるだけやってみます」


 ちなみに、失敗しても再挑戦できると踏んでる。流石に1発勝負で百花祭が中止になりえるって、厳しすぎるからね。メタ読みで悪いけど。


「仕方ねえか」

「頼んだぞ、2人とも」

「冒険者の意地、見せてくれ」


 青年団のみんなも応援に切り替えてくれたみたい。

 ももちゃんもヤル気満々みたいで、自分の分のハンマーも超特急で作ってしまった。


「それじゃあ、位置につくモグ」

「今のうちに、穴の場所を把握しておくモグ」

「作戦も立てておくモグよ」


 敵なのに色々親切に教えてくれるこの感じ、ゲームあるあるだね。

 素直に従い、私たちは周囲をグルリと回ることにした。






 モグラの穴は全部で9つあった。打っている途中の杭の辺りに3つ。その手前の打ち終わった杭の周囲に3つ。これから打つであろう位置に2つ。最後に私が引っ掻かれそうになった、少し離れた位置の1つ。 

 正直、離れの1つは無視が良いと思う。あそこまでケアしてると、他の8つの密集地帯から離れすぎるからね。


「ももちゃんも、やっていいの?」


「うん」


 モグラたちは、この競技中は引っ掻いたりの反撃はしないとのことで、安全は確保されてる。違えれば反則負けだし。


 その後、私たちは配置を決めた。1人4つずつの穴をケアして、明確に線を引く。本当は私が5、ももちゃん3くらいにしようとしたんだけど、グズッたので平等に。

 まあさっきも考えた通り、きっと負けてもコンティニューできると思うしね。


「それじゃあ、準備は良いモグ?」

「負けた後コンティニューするには、3000Gかかるモグ」

「ナメてかかると痛い目見るモグよ?」


 え!? まさかの新事実。お金取られるの? 子供向けじゃないの? むしろ子供向けだからこそ、この世にノーリスクなんて無いと教えるためなのか。

 ていうかメタい……


「頑張れー!」

「やっちまえー!」

「頼むぞー!」


 青年団からも野太い声援が飛んできて。


「それでは、位置につくのじゃモグ」


 長老さんが音頭を取るので、慌てて私たちも予め決めた位置につく。


「よーい、始めじゃモグ!」


 と宣言した瞬間、視界の上の方に『残りタイム:2:00』と『叩いた数:0回』という表示が出た。親切設計だね。

 そして同時に、私の右手側の穴からモグラAが飛び出してきた。


「えい!」


 ピコピコハンマーを振る。


 ――ピコッ!


 可愛らしい音が鳴って、1ヒット。叩いた回数が1に増えた。続けざまに、左の穴からも出てくるので、


「えい!」


 ただ反応が遅かったみたいで、寸でのところで引っ込まれてしまった。

 そのまま、2秒、3秒と私側のテリトリーには出ない時間が続く。


「そこだ、ももちゃん!」

「もっと速く振り下ろせー!」

「ああ、ダメだ! 逃げられた!」


 ももちゃん側に多く出てるみたい。少ししてワッと歓声。ようやく叩いた回数が2になった。だけど残りタイムが『1:41』だ。ペース的には6秒に1ピコを下回ってる。


「きた!」


 こっちにも1体。素早い反応で叩く。これで3回。

 と。少し離れた穴からヒョッコリ出てきた。一歩が遅れてしまう。見送るべきか、いや、ももちゃんのペースが上がってないし、行こう。

 

「てい!」


 だけど間に合わず、空振り。振り返ると、さっきまで私が居た辺りの穴から2体が同時に出ていた。ああ、しまった。判断ミスだ。

 また歓声。ももちゃんが4回目を刻んだみたいだけど、やっぱりタイム的には遅れてる。

 なんとか巻き返さないと。

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