3ー3:ピコハンももちゃん
「モグラ……叩き?」
「なんだ、それ」
青年団は知らない様子。私の方はアナログオモチャのそれで遊んだ記憶が僅かに残ってる。確か、穴からピョコピョコ出てくるモグラを、ちっちゃいハンマーで叩くんだよね。
……つまり。まさに今、舞台が整ってる。
私は青年団にも簡単にルールを説明。まあシンプルで分かりやすいから、彼らもすぐに把握してくれた。
「要するにハンマーでどつけば良いんだな」
「ちょうど杭打ち用のがあるからな」
「よっしゃ」
死んじゃう、死んじゃう。
モグラさんたちも血相を変えて、もっと柔らかいハンマーじゃないと勝負にならないと訴える。
「って言われてもな。柔らかい素材……」
デグルスさんがアゴに手を当てて考える。
「……ちょっと待っててください」
私は検索窓を開き、『ピコピコハンマー 画像』と打った。ももちゃんがニョキッと足元から出てくる。難しい話が続いて、蚊帳の外になってたけど、自分の出番だと察したみたい。アゴを上げて、少し胸を張ってる。うわ、古いマンガに出てくる社長さんみたいだ。
「ももちゃん、これ作ってくれる?」
「りょーかいもぐ」
あ、真似してるし。
ももちゃんは火ばさみを粘土へと戻すと、続けざまに成形。持ち手の部分と、叩く部分を作って、くっつける。アコーディオンみたいに波打ってる所も再現してて、本当に3歳とは思えない腕前だ。
そして、徐々にカラフルな色が着いてきて。質感も立体感も出てきたら、完成だ。モグラと青年団の双方に褒められて、ますますフンスするももちゃん。
「よし、これなら」
「思い切りぶっ叩いても大丈夫ってことだな」
「腕が鳴るぜ」
青年団がヤル気マックスだけど、モグラたちは首を横に振る。
「ムキムキハゲとその仲間は禁止モグ」
「そのフニャ素材でも危ないモグ」
「そっちの2人が良いモグ」
と、私たちを長い爪の先で指す。
えっと……
「もう1本作るモグ」
「2人がかりで来るモグ」
「2分間で、20回叩けたらそっちの勝ちモグ」
ということは、6秒に1回は叩かないとダメな計算か。ももちゃんの足も考えると、結構しんどいかも。
「きたねえぞ、モグラ」
「そうだぜ。女の子を指名するなんて」
「そうまでして勝ちてえのか」
青年団からは不平不満があがるけど。まあ仕方ないね。多分、プレイヤーがやらないといけないイベントなんだろうし。それに、ももちゃんのキラキラした瞳ね。コレを見せられちゃうとね。
「……やれるだけやってみます」
ちなみに、失敗しても再挑戦できると踏んでる。流石に1発勝負で百花祭が中止になりえるって、厳しすぎるからね。メタ読みで悪いけど。
「仕方ねえか」
「頼んだぞ、2人とも」
「冒険者の意地、見せてくれ」
青年団のみんなも応援に切り替えてくれたみたい。
ももちゃんもヤル気満々みたいで、自分の分のハンマーも超特急で作ってしまった。
「それじゃあ、位置につくモグ」
「今のうちに、穴の場所を把握しておくモグ」
「作戦も立てておくモグよ」
敵なのに色々親切に教えてくれるこの感じ、ゲームあるあるだね。
素直に従い、私たちは周囲をグルリと回ることにした。
モグラの穴は全部で9つあった。打っている途中の杭の辺りに3つ。その手前の打ち終わった杭の周囲に3つ。これから打つであろう位置に2つ。最後に私が引っ掻かれそうになった、少し離れた位置の1つ。
正直、離れの1つは無視が良いと思う。あそこまでケアしてると、他の8つの密集地帯から離れすぎるからね。
「ももちゃんも、やっていいの?」
「うん」
モグラたちは、この競技中は引っ掻いたりの反撃はしないとのことで、安全は確保されてる。違えれば反則負けだし。
その後、私たちは配置を決めた。1人4つずつの穴をケアして、明確に線を引く。本当は私が5、ももちゃん3くらいにしようとしたんだけど、グズッたので平等に。
まあさっきも考えた通り、きっと負けてもコンティニューできると思うしね。
「それじゃあ、準備は良いモグ?」
「負けた後コンティニューするには、3000Gかかるモグ」
「ナメてかかると痛い目見るモグよ?」
え!? まさかの新事実。お金取られるの? 子供向けじゃないの? むしろ子供向けだからこそ、この世にノーリスクなんて無いと教えるためなのか。
ていうかメタい……
「頑張れー!」
「やっちまえー!」
「頼むぞー!」
青年団からも野太い声援が飛んできて。
「それでは、位置につくのじゃモグ」
長老さんが音頭を取るので、慌てて私たちも予め決めた位置につく。
「よーい、始めじゃモグ!」
と宣言した瞬間、視界の上の方に『残りタイム:2:00』と『叩いた数:0回』という表示が出た。親切設計だね。
そして同時に、私の右手側の穴からモグラAが飛び出してきた。
「えい!」
ピコピコハンマーを振る。
――ピコッ!
可愛らしい音が鳴って、1ヒット。叩いた回数が1に増えた。続けざまに、左の穴からも出てくるので、
「えい!」
ただ反応が遅かったみたいで、寸でのところで引っ込まれてしまった。
そのまま、2秒、3秒と私側のテリトリーには出ない時間が続く。
「そこだ、ももちゃん!」
「もっと速く振り下ろせー!」
「ああ、ダメだ! 逃げられた!」
ももちゃん側に多く出てるみたい。少ししてワッと歓声。ようやく叩いた回数が2になった。だけど残りタイムが『1:41』だ。ペース的には6秒に1ピコを下回ってる。
「きた!」
こっちにも1体。素早い反応で叩く。これで3回。
と。少し離れた穴からヒョッコリ出てきた。一歩が遅れてしまう。見送るべきか、いや、ももちゃんのペースが上がってないし、行こう。
「てい!」
だけど間に合わず、空振り。振り返ると、さっきまで私が居た辺りの穴から2体が同時に出ていた。ああ、しまった。判断ミスだ。
また歓声。ももちゃんが4回目を刻んだみたいだけど、やっぱりタイム的には遅れてる。
なんとか巻き返さないと。




