2-2:預金してみた
内容を見ていくと。
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No.2
<花見会場の設営>
依頼者:青年団団長デグルス
内容:イベントの設営。杭打ちやゴミ拾いなど。
報酬:7500G
フラワーコイン1枚
備考:街の西側にある百花樹の下に集合。動きやすい恰好で参加すべし。
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No.3
<新作ケーキのモニター>
依頼者:パティシエのオルディア
内容:新作ケーキを試食して感想を言って欲しい。
報酬:4000G
フラワーコイン1枚
備考:街の東通りにあるケーキ屋さんに行こう。お腹を空かせておくのが吉かも。
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ということだった。なるほど。これは体力的にもしんどそうな2番をやらせて、3番でご褒美という感じだね。良い塩梅だ。
だけど、
「ももちゃん、こっちがいい」
指さす先は……ケーキのモニターの方だった。言うと思ったけど。
「ももちゃん、先にしんどそうなのやらない? こっち頑張った後にご褒美で」
「や」
うーん。
正直、2つ同時に出さないで欲しかったよねえ。逆に言うと、こういうところを保護者に諭させる目的なのかも知れないけど。でも大体の保護者は幼児には甘いから……
「ももちゃん、ケーキはさ……昨日パパが」
「ちらない」
「買ってきてくれて、みんなで」
「ちらない」
……ちらないハズないんだけどなあ。ちっこいフォークであんなに懸命に食べてたのに。
「ももちゃん、こっちやる」
うーん。仕方ないかあ。私は厳しくも正しい保護者にはなれないよ。
「じゃあ。こっちやったら、次は絶対こっちだよ? 約束できる?」
3の後、2へと指を動かして示す。
「うん!」
お返事は立派なんだけどねえ、いつも。
……まあ良いや。
私はももちゃんを床に下ろし、小指を突き出す。ももちゃんも同じようにして、私の小指と絡み合わせた。私の半分くらいしかないような、ちっちゃなお指を優しく振って、指切りげんまん。
「ウソついたら、パパの靴下お鼻に当てるからね?」
「や~~! くしゃい!」
嫌なら約束は守ること。
というワケで、私は『No.2』の方をスルーして『No.3』の依頼書を剥がす。それをパールさんに渡すと、彼女は前回同様ハンコで『受諾』の文字を押した。
それで本来なら、私たちはギルドを後にしてクエストへ向かうハズなんだけど。今日は訊ねなきゃいけないことがあるからね。
「ん? どうしたの?」
「あの。この街って銀行とかあります?」
「え? あ、ああ。硬貨を持ち歩くと重いからね」
良かった。やっぱりあるっぽい。
「中央広場から少し北に行った辺りにあるよ」
ということは、王城の方か。なんとなく貴族とか豪商がやってるイメージあるけど、やっぱりこの街は北側がリッチな感じなのかな。
「ありがとうございます。行ってみます」
というワケで、今度こそ出発。ももちゃんと手を繋ごうと、斜め下に掌を伸ばしたけど、スカッと空振り。ももちゃんは既にタタタと走り出していた。うん、ケーキの魔力は凄いね。
「ねえね、あけて!」
「はいはい」
ドアを押して開ける。「キーッ」とも「キャー」ともつかない甲高い声を上げて、ももちゃんが飛び出していく。テンションあがりすぎ。
「ああ、ダメだよ、ももちゃん」
その腕を掴んで引き留める。慣性でダランと足首が砕けちゃった。こけないように、膝で背中を支える。
飛び出しからの、フニャンからの、膝押さえ。お散歩するようになった1歳児の頃からやってる動きだからね。私も、もう完全に熟練してしまったよ。
「飛び出したら危ないでしょ」
「ん」
首を小さく縦に振って答えるももちゃん。
まあこの世界では、どうも街中を馬車とかも走ってないみたいだし、轢かれる心配は無いんだろうけどね。
抱き上げて、通りに下ろす。それでももちゃんも落ち着いてくれたのか、私の手を握ってゆっくり歩きだした。うんうん。ケーキは逃げないからね。
それに、依頼の前に銀行に行ってみたいし。ももちゃんには退屈かも知れないけど。
「よし、じゃあ改めて出発だね」
まずは中央広場を目指して……
「はんたいだよ?」
「……」
方向音痴、治したいなあ。
………………
…………
……
パールさんの言った通り、噴水広場から北通りに入って、角から2番目の建物が銀行だった。店舗上部の石材を立体的に削って『ブロッサム銀行』と浮き上がらせている。他の店は木の看板を掲げているのが多いのに、とても凝ってるよね。
……儲かってるんだろうなあ。
扉もガラス張りなので、中の様子が見える。マジマジ見てると、行員さんと目が合った。なんか雰囲気的に、ちょっと入りにくいなあ。
まあ言ってられないんだけどね。
「すいませーん」
小声で言いながら、ガラスドアを押し開ける。先程の行員さんとは違う、若い女性が対応してくれた。
口座開設もゲーム登録時に使った名前とかが自動入力されているようで、非常にスムーズに事が運んだ。それでもまあ、ももちゃんは退屈そうに足元に絡みついてたけどね。
ともあれ、無事に銀貨7枚を預けることに成功した。冒険の拠点を変えても、どの街にも『ブロッサム銀行』の支点はあるそうで、どこでも入出金が可能とのこと。
ここら辺は、便利システムになってるよね。
「ももちゃん、ゴメン。行こうか」
「ん……」
少し拗ね気味。けど大人しく待っててくれた方だね。
ちなみにフラワーコインも預かってくれるそうだけど、ももちゃんが拒否した。「ももちゃんがもっとくの!」との仰せ。オモチャを取られそうになった時と同じ反応なので、ももちゃんの中ではコインもその類なのかな。
その後。並びの雑貨屋さんで、フラワーコインを入れるガマグチ財布と、粘土を入れる用のカバンも買ってから。
「よし、それじゃあ東の……ええっと」
あ、あった、あった。今回は矢印が出てる。こういうのに頼るから、いつまで経っても方向音痴が治らないんだろうけどね……




