赤石保の刑
赤石は、障害を抱えていた。
右手だけでなく、精神なのか、幼稚なのか。
だが、裁判をひっくり返して、死刑に持ち込んだのも事実だ。
刑事事件として、責任を負えると下したのだろう。
「刑事さん、どうです。僕が、無実だと分かっていただけましたか」
いつもの取調室とは違い。面会室は、真ん中にアクリルガラスが有り。
清盛先輩は、声量が少し上がっているが。冷静を保っている。
「イヤイヤ、残念な事に。赤石さんが、犯人だと調べるほど深まりましたよ」
グレーのトレーナーの上下を着て、両手に手錠で繋がれた赤石が、椅子に座り対峙している。
悪びれる様子もなく、相変わらず太々しく無実だとほざいている。
「何処を、見ているのですか。しっかりと調べてください、その目は節穴ですか。このまま、僕が検察に殺されたら、化けて出ますからね」
赤石は、自分の言葉に酔って、ニヤついている。
「悔いを改めるのは、赤石さんの方ですよ」
「何を、言っている。僕は、無実だと。何度も言わすな」
赤石のニヤけ面が止み、清盛先輩の方を向いた。
眉間にシワを寄せ、口角を下げて、手錠を隠すこと無く、アクリルガラスに触れた。
「赤石さんは、先川さんのご家族の方から、晴美さんを殺すように、ご依頼されませんでしたか」
「何を、言うかと思えば。バカバカしい」
赤石は、アクリルガラス空手を離し。目を逸らすように、左下の床に目をやる。
「おかしいですよね。黒田家は、離散して。黒田久は、行方不明のままで。赤石家は、事故後も変わらぬ生活をしている」
赤石は、頭の向きを変えて、左下を見た。
「先川家も、年頃の娘を殺されたのに、赤石家を攻撃しているように見えないのは、何故でしょうか」
俺は、カバンの中から。黒田晴美のDVDのパッケージを取り出して、清盛先輩に手渡した。
「このAVと、病院での不貞行為がバレたら。田舎で笑い者にされてしまう。だから、親のメンツを保つ為に、先川家から依頼をされた。違いますか」
「何だそれ、全然違うよ。見当外れだ」
赤石は、清盛の顔を見ずに答えた。
「今度は、ナゼあの5人を集めたのか。教えてくれないか」
清盛先輩は、時間制限のせいで、別の質問に変えた。
「募集のチラシを配って、適当に選んだんだよ」
「違いますよね。あの5人を、殺害しようとしましたよね」
赤石は、ソワソワしながら、座り直したり。椅子をズラしたり。挙動がおかしなり。
次の瞬間に。
両手を高々と上げて。
「用便願います」
この日の面会は、終わりを告げようとしている。
このままだと、1日が無駄になる。
「何故、あの5人を殺そうとした」
今度は、俺がアクリルガラスに触れて、赤石に聞いた。
清盛先輩は、椅子に座りながら。俺を見上げている。
「前の刑事さん達にも伝えたが、殺そうとなんて思っても居ない。結果がそうなっただけだ」
『おい、赤石』
赤石は、刑務官の脇をすり抜けて、俺の前に立ち。アクリルガラスに触れた。
「数人が、ノイローゼなった程度だろ」
赤石は、椅子に座り直した。
『赤石、用便はどうした』
「うるさいな、引っ込んだよ」
俺と清盛先輩は、刑務官に頭を下げた。
「リハビリをしている頃に、掲示板に書き込みをしたんだ。『少女の苦悩』って書いて」
『少女の苦悩』なんて、どの調書にも書かれていなかった。新たな情報だった。
「先川さんの事を書いたら。奴らは、自分なら自殺すると回答してきたんだ。だから、僕は、自殺する感覚を、与えてやろうとしただけだ」
赤石の話では、応募してきた奴らの中に、『自殺する』と書き込みした奴が数人いて。ランダムに色の奴を選んだだけらしい。
「何故、『自殺する』のが、殺害に変わった」
「頼まれたからだ。先川のオジサンに、ではない。本人に、お願いされたからだ」
俺は、刑務官に睨まれて、アクリルガラスから離れた。
赤石の目が、鋭くなり。手錠された手は、拳を握っていた。
「先川さんは、黒田が消えても、搾取される人だったんだよ」
赤石は、清盛先輩を睨みつけて。
「黒田は、先川さんとの動画を、お金の為にヤクザに売ったんだ。黒田は、お金に困っていたから。そして、黒田から、ヤクザに代わっただけで、彼女の人生は何も変わらなかった」
「何故、警察を頼らなかった」
「先川さんにも、後ろめたい事が、有ったから」
「何だそれは」
「部室の事だよ。アレは、事故だ。僕が、ヤカンに触れたんだ。黒田に、虐められていたのも事実だが、アレは事故だったんだ」
刑務官も、静かに聞いている。
「黒田が部屋から出て、先川さんが僕を見つけて。犯人は、黒田だと決めつけたのが、事の始まりなんです」
黒田は、先川との動画をアダルトビデオに売り。
先川が、高校卒業するのを待っていた、連中に搾取された。
「部室の事件から1年後くらいに、黒田が不意に戻ってきたんだ。お金にも、女にも困っているようで、先川さんをキャンプ場に呼び出したんだ」
今日の赤石は、饒舌だった。
「黒田は、何度も何度も、先川さんをなぶり。警戒が緩んだ時、僕が背後から殺した」
赤石は、ロープを引くようなパントマイムをして。
「黒田の首に、ロープの輪を掛けて。大木の枝を滑車代わりにして、思いっきり走ったんだ。ロープを、体中に巻いて。最後は、裸の先川さんと一緒になって、ロープを引いていた」
「黒田は、5分ほどで動かなくり。僕達は、キャンプ場の奥に黒田の死体を捨てました」
「その年は、早く台風が訪れて。黒田の死体を、土砂が運び去ってくれた」
「黒田がいなくなった所で、誰も困らなかったが。卒業式と同時に、ヤクザが先川さんを連れ去った」
「先川さんが戻って来て、黒田を殺害した場所で、殺してとお願いされた」
「僕は、すべてに嫌気が差して。僕を苦しめ続ける先川さんの体を、何度も、何度もナイフで傷つけた」
最後の方は、言い訳にしか聞こえなかった。
懺悔をしているのか。
コレも赤石の罠なのか。
死刑を求めた、男の末路か。
裁判の途中から、無罪を訴える赤石の事だ。知的障害を疑いたくもなる。
だが、これで全てが解決した。
結局、5人は巻き込まれただけだった。
俺たち刑事も、巻き込まれたが。
ボディシェアリングも、売り上げが一時的に落ち込んだが。
別なパーツを違法に組み込み。既製品と損傷のないレベルのモノを作り、腕以外のパーツが売られ始めた。
『人は、神の領域に近付き。悪魔と呼ばれる』
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駄作にしてしまい、申し訳ございません。