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Body sharing  作者: 愛加 あかり
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緑川は、まともだった

緑川は、常識人に思えた。

ゲーム参加者を気遣い、買い出しにも率先している。

主催者が消えたのに、100万円を夢見る皆を励ましていた。



 「黒田さん、電話が繋がらないよ」


 緑川は、何度も自動販売機の元まで行き、黒田に電話をかけて。帰り際に皆の飲み物を、大量に購入している。



 「緑川さん、有難うございます」


 緑川が用意したマイバックから、1本のお茶を取り出して、橙野が感謝を述べた。


 「僕は、皆さんと違って、4階層上で戦っていますから。今さら追いつけませんよ。6時間くらい腹痛とトイレで無駄にしましたし」


 緑川は、100万円を諦めて、柴田から慰謝料を取ることにした。


 「だけど、買いだしで、女性用のパンツを買うとは、思ってもいませんでしたよ」


 風呂なしの環境で、4日耐久なのは知らされていたが。

 下剤を仕込む馬鹿がいるとは、知らされていないし。監視する人もいなかった。


 緑川は、下剤事件でゲームの進行が凄く遅れ、挽回する余地など無く。

 自ら、クーラーボックスの上に座りながら、痛み付けた柴田を監視して。マイペースで、ゲームを進めていた。



 一方、マスコミや報道、警察等は、山の中腹まで車を乗り入れて、取材をしていた。


 麓は、自販機と橋をカメラで押さえるだけで。

 当時19歳の赤石保の事は調べていない。

 未成年である事と、軽い知的障害がある事で、名前が伏せられていた。


 当時24歳だった緑川は、車も川沿いに止めていて、何度か職質を受けていたが。

 不審者等を見ていないと答え。警察犬も反応しなかった。


 目撃情報はないが。橋の監視カメラが、山に登ったのは、2人だけで。赤石しか降りて来ていない。

 キャンプ場のカメラも同じだった。


 動機は不明だが。赤石しか考えられない。

 警察も検事も、疑う余地がない。


 『犯人は、赤石だ』これで裁判に向かった。




 雑木林の中で、先川は語りかけてくる。


 両手は、サバイバルナイフを持ち、自分の喉元に向けられていた。


 彼女は、必死に何かを訴えていたが。音声は入っていなかった。

 無音の静寂の中で、彼女は微笑み。言葉を発した。



 次の瞬間、自分に向けられていたナイフを持ち替えて彼女に向けた。

 彼女は、咄嗟にナイフを押さえようとして、右手首を押さえた。


 そこで、赤石は右手の感覚を失い。

 左手だけに、感覚が残り。先川晴美の返り血を浴びた。


 その後は、馬乗りになり

 先川を切り刻んでいた。


 次に、出てきたのは、キャンプ場の前だ。


 カメラの前で、サバイバルナイフを投げ捨てて。



 『グァ〜〜〜』と泣き叫び、天を見上げている。


 ここだけ音声が入った。

 柴田以外ゲーマーで、配信もしている。自分の声でない事は、直ぐに気付いたが。


 夢のような出来事で、脳内変換されたように、自分の声に変換されているような感じもした。

 実際、ゲームをしながらも、多く叫んでいる。



 赤石は、真っ白い上下に、真っ赤な返り血を浴びて、ゆっくりとふもとに向かって歩き。

 途中から、手の感覚が無くなり。

 右手の機械を、投げ捨てて。次に左手の機器を口で剥がしながら、草むらに放り投げ。そこで、カメラは消えた。


 遠くで鳥が鳴き、川のせせらぎを聞きながら。

 赤石は、いじめられていた時にかかった、ブルーハーツのチェインギャングを口ずさんでいた。


 『ひとりぼっちが怖いから、半端に成長してきた』


 ゴーグルと左右の腕の機械は、優秀な警察犬によって発見されている。



 俺らは、京都の安宿で一泊している。


 「恐ろしいですね。ボディシェアリングって」


 俺は、清盛先輩に尋ねた。


 「そうだな、人の記憶までも操作できてしまう。ゲームを続けながらでわ無く。エンドレスで、動画を流されていたら、自分が犯人だと錯覚を起こしてしまうだろうな」


 「って事は、皆が犯人じゃない事になりますが」


 「実際、そうだろう。和歌山県警も検事も、弁護士だってよ、情状酌量を狙ったんだ。赤石以外の犯人は居ない。あり得ない」


 「だったら、俺達は、何の為に動いているのですか。赤石が、犯人なら調べる必要無いじゃありませんか」


 「分かっていない事はある。赤石の動機だ。何故、先川晴美を殺害したのか」


 「そりゃ、アレが原因なんじゃありませんか」


 「先川と黒田が、交際していたが。赤石が、障害を負い、病院でいかがわしい行為をしていた事か」


 「違いますよ」


 俺達は、安宿のロビーの自販機で購入した、裂きイカとビールで労い。疲れと不満と一緒に読み込んだ。



 赤石保は、何故ナイフを自分に向けて、動画をスタートさせたのか。


 5人を集めた意味が謎だ。


 黒田の名前を使う必要があったのか。


 わざわざ、自宅から電話配線を廃屋に繋ぐか。

 隣とはいえ、100m以上は離れているぞ。

 電源は、何故繋がなかったのか。

 自家発電機を使い、うるさくする必要があったのか。

 ヘッドホンをして、ゲームに没入しているのだぞ。うるさくする意味。


 柴田は、仲間では無いと断言した。

 俺も、そう思うし。

 柴田の行為は、イレギュラーな事件だったが正しい。

 一人でも、救急車を呼んでいたら、ゲームは終わっている。

 中止する予定なら、柴田自身が呼んでいたはず。


 青山は、ゲームの配信仲間は居るようだが。リアルの友達は皆無。

 グッズ販売が、上手く行っておらず。50万近く借金をしている。


 橙野は、チームストレンジャーで、紅一点として頑張っている。

 男達に舐められないように、神風特攻と書かれたアバターを作り込み。敵陣に突っ込む役を担っていた。


 緑川は、意外と好青年だったな。

 ゲーマーと言うよりも、裏方の方で頑張っている感じだ。

 服装もジャケットを着用していた。


 茶畑だが、明日の昼過ぎに、聴取を取る予定だが。結果は皆と同じだろう。


 今は、『青山和也の自首』担当は、清盛先輩がしていて、俺はサポートとして、研修を続けている。



 清盛先輩は、隣で大いびきを掻いて寝ている。


 俺は、緑川の聴取をまとめて、パソコンを閉じ。ロビーへ向かった。


 『優勝賞金100万円。参加者募集


 身長165cm前後、痩せ型で20代前半、服装も指定がありますので、女性の参加者は、胸のサイズのこともありますので、ご遠慮ください。


 黒田久』


 俺は、スマホ画面を見ながら、赤石が作った、ダンジョンマスター・リバイバル3の募集要項を眺めながら。ロビーで、4本目のビールを開けた。


 

 『明日の茶畑と、明後日の赤石の聴取を取ったら終わりだ。頑張るしかないか』


 俺は、先輩の待つ部屋へと戻り。電気を消して眠りについた。

読んでいただき、有難うございます。

皆の名字の色ですが、関係ありません。

騙されたと思った方のお帰りはアチラです。

星とブックマークを宜しければお願いします。

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