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Body sharing  作者: 愛加 あかり
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青山和也の自首

青山和也が、暮れの人がいない時に、大きな事件を持ってきた。

最近死刑が決まった赤石保が、無罪であるかのように、自分が刺したと、自首してきた。

渡瀬は、新人研修みたいなノリで、青山を取り調べるが。先輩の清盛が、異変に気づいた。




 2028年の大晦日。

 愛知県中村署に、青山和也が出頭してきた。


 青山和也、23歳、ニート。自称ゲーム配信者。

 SNSのコンテツを使い、ゲーム配信をして。『ゲーム実況の契約』や『投げ銭』、『グッズ販売』等で生計を立てている人物だ。


 「あの〜。先川晴美を殺した犯人は、僕です。逮捕してください」


 165cm、痩せ型。ボサボサ頭に、だらしない格好で。入り口を警備している、制服警官に話しかけた。


 付き添いは無し、青山は何も持たずに、手ぶらだ。暴れる様子はなさそうだが、警戒は緩めなかった。


 「もう一度、お願いします」


 制服警官は、念の為に聞き直した。


 「2年前の和歌山県で起きた、先川晴美が殺害された事件の犯人です」


 制服警官は、理解が追い付いていなかったが。青山和也を、捜査一課に案内した。




 『先川晴美、殺人事件』


 先川晴美は、同級生の赤石保に呼び出されて、休業中のキャンプ場で殺害された。

 キャンプ場の入り口には、防犯カメラが設置されていて。キャンプ場の入り口は、ここ一つだけだ。


 防犯カメラも、2人がキャンプ場に入り。

 血だらけの赤石保だけが、1時間後に防犯カメラに映っている。

 先川晴美の遺体には、争った形跡は無く。

 即死となった、首の刺殺痕の他に。30カ所の裂傷が、胸に刻まれている。


 当時、19歳だった赤石保は、軽度の知的障害有りと認定されていて、弁護士は知的障害を主張していたが。

 知的障害が、軽度だったために。先日、無期の判決が決まったばかりだが。

 本人は、裁判中に無罪を主張している。


 「違う。先川を抱きかかえた時に、血が着いた。僕は、助けを求めて山を下り、救急車を呼んだんだ」と、主張したが。


 だが、赤石はふもとに降りても、救急車を直ぐには呼ばずに、自販機で喉を潤していた。


 これは、自販機近くの民家に停めてある車の車体カメラに、録画されていた。

 赤石は、毎日この自販機で、サイダーを買っている。

 この日も、同じように一気に飲み干して。ごみ箱に缶を入れてから、救急に連絡を入れている。


 田舎の平日で、目撃者は無かった。

 寒い冬の山に入る者は無く。山から降りて、自販機までは、距離が短い。



 俺の名は、渡瀬佑たすく26歳、捜査一課に来てまだ日が浅い。

 Fラン大学を卒業してからの、警察学校へ通い。現在に至る。


 先川晴美事件を、茶化す為に自首してきたと思われる。青山和也の事情聴取を取る為に、取調室を使った。

 先輩の清盛が指導につく感じで、緊張しながら始まった。


 「もう一度、お名前を教えてもらえますか」


 俺は、調査報告書に自分の名前を先に打ち込んだ。


 「青山和也です。21歳です」


 青山は、自首してきたわりには、怯えている。

 清盛先輩の顔が怖いせいか。4課でも通用するもんな。


 「どういった内容で、自首をされましたか」


 『パチン』


 いきなり減点されたかのように、いつもの平手打ちが頭に当たった。 

 いきなり、核心をついたのが行けなかった。


 「分からないんです。僕は先川晴美さんを、刺殺したかもしれません。赤石保が、ニュースで死刑が確定したのを知り。被害者の先川晴美さんが、殺されたのを知りました。その時まで、ずっと夢だと思っていたのです」


 「青山さん、落ち着いてください。話は、全部覗いますから。ゆっくり話してください」


 怯えていた、青山が机にしがみついて、恐怖に満ちた顔で、こちらを睨んだ。


 「ゆっくり、深呼吸をしましょう。落ち着くかもしれませんよ。はい、吸って。吐いて。吸って。吐いて」


 また、頭を叩かれた。


 『かも』を、使ってしまった。原点だ。


 だが、青山が深く深呼吸をしてくれて、命拾いをした。


 「落ち着きましたか」


 青山は、少し落ち着きを取り戻したのか。机から手を離している。


 「わかりません。先川晴美さんは、赤石保が殺したで、間違いありませんか」


 青山は、自信なさげに聞いた。


 「和歌山県警さんは、そう主張していますが。ご不満が、お有りですか」


 まだ、一審だが。死刑は確定している。

 裁判官、検事、共に有罪で死刑となり。

 弁護士は、障害者として、情状酌量を願ったが。

 本人は、裁判が始まると、無罪を主張している。


 誰がどう見ても、被害者と加害者しか存在しない事件だが。第三者が現れた。


 「時折、見る夢があるのですが、被害者が先川晴美さんに似ているのです。雑木林の中で、先川さんの首をナイフで刺して、倒れた先川さんに馬乗りになりながら、同じナイフで、何度も、何度も、胸の辺りを、裂くように傷つけるのです。違います。左手に、感触が残っているのです」


 俺が、パソコンに文字を打ち込んでいると。


 「本当か。もう一度同じ話をしてみろ」


 先輩の清川が、声を荒げて声をかけた。

 先輩、ここは1課ですよ。4科ではありません。


 「ですから、夢に見るんですよ。先川さんに、馬乗りになりながら。ナイフをコウするんです」


 青山は、左手で何度も交差するように、動いてみせた。


 青山は、先川の首を刺した後に、ナイフを持ち替えている。左右では無く。グリップを持ち替えて、刃を下にして、力強く引いている。


 赤石保は、障害者だ。知的障害もあるが、身体的にも障害がある。


 学生時代に、虐めにあい。加害者から、熱湯を浴びせられて、胸と右手に重度の火傷を負っている。

 右手は、重傷で握ることが困難だと、聞いた事がある。


 青山もまた。左手だけで、先川を切り刻んだと。右手を、1ミリも動かしていない。


 「違う。そこじゃない」


 俺は、忙しく。カタカタとパソコンを弾いている。


 青山は、我に返り。清盛を見た。


「だから、コウ刺して。倒れた先川さんを、馬乗りになり」


 清盛先輩は、言質を取るために必死だった。


 「もっと前だ。最初から頼む」


 俺は、『お願いします』では、ないのか。と心で突っ込んだ。


 「ですから、夢に見るんですよ。先川さんを殺害するシーンを」


 警察も、誘導する事が出来ず。何度も同じ質問をしてしまう。


 「違う。どこでだ」


 言ってしまった。清盛先輩は、罰が悪そうに、口を、押さえたが。吐いたものはしょうがない。


 俺は、書き足す手を止めた。

 清盛先輩を立てるためじゃなく。止まった。


 会話文を、読み取るように、上の文面に目がいった。


 「だから、雑木林って、言っているじゃありませんか」



 キャンプ場じゃ無かった。

 俺が、振り返ると。清盛先輩は、頷いた。


 こうして、青山和也の勾留が決まり。

 和歌山から、先川晴美の報告書を取り寄せることとなる。

読んでいただき、ありがとうございます。

この作品は、オリエント急行殺人事件をモチーフにしています。ので、お帰りはアチラです。

宜しければ、星とブックマークをよろしくお願いします


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