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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

昨日見た夢「シンデレラ」

作者: Bergamasque

シンデレラ「王子様が舞踏会を開くんだって! 素敵だと思わない!? ねえニャン太郎」

チョッキを着たネズミ「舞踏会だぁ? 遊び相手を見つけたいだけだろ、欲求不満だな」(実際にはもっと下衆なことを言ってた)

シ「えーっと何言ってんのか良く分からないけど、仮にも11歳の可愛いお嬢様相手にそういうこと言うのは良くないわよ」

 

 現代か昔かよく分からない、ヨーロッパだと思われるけれど若干あやしいような国の、ある所に(よわい)11の女の子が、姉と母親(多分実母)と広いお屋敷に住んでいました。


 芙蓉(ふよう)の花を思わせるかんばせに、愛らしい笑顔。ただ、おてんばで気の向くまま行動するところがあり、そこらを歩けばすぐ失敗ばかりしていました。由緒ある家の娘でありながら、転んで顔を汚していても全く気にしません。母と姉は呆れて「シンデレラ」、つまり灰かぶり娘というあだ名をつけて呼んでいました。



 ある日のこと、国の王子様が結婚相手を選ぶために舞踏会(ぶとうかい)を開くという報せが入ってきました。上の姉と母親は先にその話を聞きましたが、困ったのは末娘のことです。

 シンデレラを結婚候補として連れていくにはまだ少し年が足りませんし、何より勝手な行動をされて舞踏会をめちゃくちゃにされてはたまったものではありません。うるさく連れて行けとせがむであろう末娘の耳には入れるまいと、母親と姉達はひそかに舞踏会の準備を進めることにしました。しかし、舞踏会の当日になってシンデレラはどこからか舞踏会のうわさを聞きつけてしまいました。


 絶対に自分もきらびやかな恋の舞台に行きたいシンデレラは、お屋敷へ帰ってくるなり部屋の扉をバタンと開きます。

「お母様! 知っていましたか今日は舞踏会ですよ!! 私も……」

 その途端母親と二人の姉がさっと振り返りました。

 母親はワインレッドのコート。姉たちはバレエ帰りのような、というか多分バレエ帰りと思われる、頭上でシニヨンにがっちり結って固めた黒髪と、真っ白なファー付きのコート、その下に上品なモノトーンのドレス、という姿でした。

 それと同時に、3人の後ろにある舞踏会用ドレスの海がシンデレラの目に飛び込んできました。隠し事をされていたことに気が付いた彼女は母をとがめようとしましたが、母親が言いました。

「騒々しくして何だというの、部屋に戻りなさい。今夜はとても大事な用があって私たちは夜から出かけていきますからね、そそうをして家の物を壊すような真似をするんじゃありませんよ!」

 早口でまくし立てる母親は、いつもの倍ぐらい冷たい目をしています。姉たちもシニヨンのきつさのせいなのか、見たこともないほど目が吊り上がっていました。

 さすがにシンデレラもあぜんとして言葉を飲み込み、その場はすごすごと引き下がりました。


 しかし、それであきらめるシンデレラではありません。

「お母様には用意してもらえないから、何とか自分で舞踏会用のドレスを用意しないと……そうだ、下のお姉さまのドレスを持ってっちゃえばいいのよ。色の好みも私と近かったはずだし、一着あれば十分だわ!」

 早速次女の部屋に行って、自分に合いそうなドレスを物色することにしました。次女が部屋を出たすきに持ち出してしまおうという作戦です。


 髪をほどき、部屋の大きな鏡の前で化粧を落としていた次女は、シンデレラが部屋の前を通り過ぎたのに気が付きました。

「あんた、部屋に戻ったはずじゃないの?」

「ただのお手洗いよ」

 化粧を落としたら、一息つく間もなく着替えを始めなければなりません。

 シンデレラがまた部屋の前を行ったり来たりしています。ちらちら視線も感じます。次女は少し苛々して言いました。

「今度は何?」

「ああお姉様、お構いなく。今から掃除しようと思って」

「そうは見えないけど。ていうか掃除も今しなくていいわよ、私の髪や服に埃がついたらどうするの」

 次女はシンデレラを追い払い、開いていた部屋のドアを閉めました。視線が無くなると、次女はクローゼットから出したドレスを、あれがいいかしら、これがいいかしらと、鏡の前で体に当ててみます。

「うーん。こっちの黄色がいいかしら、肌を明るく見せないと。お姉さまのドレスとは違う雰囲気にしないといけないわね」

 迷っていると、なぜかまた視線を感じます。鏡を見て次女はぎょっとしました。閉じたはずのドアが少し開いていて、そこから灰色の人影がじとーっとこちらを見ているのです。次女が振り向くと人影はぱたぱたと隠れていきます。

「ちょっと! あああもう! お母様ー!」



 シンデレラのもくろみは失敗しました。母親に引きずられて家の端っこ、自分の部屋に戻されます。

「いいこと、私たちの支度が終わって出かけるまでこの部屋から出るんじゃないよ!」

 そう言って、母親はシンデレラの部屋の扉に鍵をかけてしまいました。

 シンデレラはもちろん面白くありません。怒って部屋にあったベットサイドランプを床に叩きつけようとします。

「こうなったら暴れてやろうかしら。……でもこれ私のものだし。高いし。さらに呆れられるだけだし」

 南東の国から届いたランプ。極彩色のガラスがはめ込まれ、大粒の真珠がいくつもあしらわれています。シンデレラもお気に入りのものです。

 シンデレラはため息をついて、ランプをそっと机に戻しました。

 ……というか、この部屋、末娘の部屋にしてはぜいたくすぎるほどです。窓には白いカーテン、素朴な木の机には本が数冊。シンデレラがすぐ転ぶためか、ベットの周りに柔らかい敷物が敷かれ、クッションもいくつか用意してあります。おまけにベットには簡単な天蓋(てんがい)がついていて、白いかけ布団には七色の糸を使った見事な刺しゅうがほどこされています。

 多分、この家は国の貴族の中でもかなり裕福なのでしょう。もしかしたら、王家ともつながりがあるのかもしれません。


 そんな部屋をシンデレラは何度も歩き回ります。服は帰ってきた時のまま、姉と同じ、白いふわふわのファー付きコートを着たままです。

「どうせ王子様にも最初から好きな人がいるに決まっているのよ。いくらきれいな格好をしたって上手くいかないに決まっているわ。あーあ、なんで私ってタイミングが悪いのかしら。もう2,3年後だったら連れて行ってくれたかもしれないのに」

 クローゼットを開けてみますが、やはり舞踏会にふさわしい服はありません。

「こうなったらドレスを一から……なんて無理よね。ここにははぎれの布しかないし、縫いものなんてやったことないし」

 丁寧さが必要な細かい手仕事なんて一番シンデレラの苦手なことです。しかも、「あんたみたいなのが針なんか持ったらみんなの命が危なくなる」と言って母親はまだ針にもさわらせてくれません。

「ニャン太郎ならドレスを仕立てられるかしら。うん、もっと無理そうね」

 ぶつぶつ言っていると部屋の扉が開いて、母親が顔を出しました。


「それでは行ってきますけど、くれぐれも留守番中変な真似をするんじゃありませんよ。そうそう、どうせひましてるんなら森で獲物でも捕ってきなさい。あれは美味しいから、捕ってきたなら明日の晩さんにでもしてやります」

「分かりましたわ、お母様」

「あとそのコートをいい加減ぬぎなさい、すぐ汚すんだから」

 こうして母親と二人の姉は舞踏会に出かけていきました。



 シンデレラは、屋敷から少し離れたところにある森へ行きました。夕暮れ時の森の中は暗くなってきています。

 まだ舞踏会のことをぶつぶつ言いながら、木の柵で何かを作っています。

「でも、これだけはお母様も褒めて下さるから、やらない訳にはいかないわね」

 作ったのは円形の罠のようですが、見たことも無い形です。シンデレラは、喪服のような黒く裾の長い服に、顔半分が隠れるヴェールという姿に着替えています。

 小瓶に入った液体を罠の真ん中に振りかけて、罠から離れます。


 近くに住んでいる子供が家へ帰ろうと森の小道を歩いていると、綺麗な黒い服を着た女の子が立っていました。森の中を迷っているようです。

「すみません、知り合いの家へ行きたいのに迷ってしまったんです。ここから町へ出る道を教えていただけませんか」

 子供がシンデレラを連れて森の中を歩いていくと、木立から少し出ている木の柵を見つけました。昨日までは無かったものです。

「あれはなんだろう」

「何でしょう。少し近づいて見てみましょうか」

 子供はふしぎに思って柵に近づきます。そこでシンデレラが子供の背中をどんと押すと、子供は吸い込まれるように柵の真ん中に入っていきました。

 柵の真ん中は沼のようにぬめっていて、足が黒い地面に埋まったまま離れなくなりました。柵から出ようとしても、柵は一度入ったら出るのが難しいしかけになっています。

 子供は驚き、怖くなって叫ぼうとしましたが、声がでません。ばたばたともがくうち、子供はとろんと眠くなって、動かなくなりました。


 木陰から出てきたシンデレラは子供を麻袋に入れて持ち帰ります。

「今日舞踏会に行けなかったかわりに、明日は絶対ごちそうにしてもらうんだから。それにしても、どうしてお母様たちは上手にできないなんて言うのかしら。何回かやればできるし、こんなに簡単なのに。きっと舞踏会に行くための言い訳ね」


 シンデレラの家族は人間を食べて生きている魔物なのでした。


シンデレラというより白鳥の湖のブラックスワンの話に近いような気がする。


それはそうとこういうどうでもいい話を上げる場合、開示設定とかどうしましょうね。適当に書いているけど見せたくない、とまでは行かないようなものなので適当に読んでくださったなら幸いです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] すごく読みやすくて、面白かったです! 夢を小説のネタにすることはありがちですが、本作は破綻のないストーリー性がありながら、ラストのオチは見事でした。 やはり、作者様の実力を感じました。 ち…
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