倉賀野 九品寺周辺道路、出会い
繰り返すが、これは単なる俺のメモで物語にすらなっていない。起承転結もない。
この場所での物語は1979年に一度終わり、2013年に悲劇が発生しただけだ。
なくてよかった悲劇。
ご実家跡地は更地であり、だいぶ広い。
逆さL字型の空間で奥の方が広くなっている。手前が狭く、奥が広いからか、視界が広がって見える効果があり、裏側に光を浴びた一面の曇り空が、嫌に綺麗な寂しさを見せる。
敷地自体は手入れもされておらず、木の杭にロープが張られただけ。雑草だらけで石も見えるが手前側に石があまりない。
記録によると、裏側は納屋、倉庫で飛び火したとある。所有者不明だが、更地のままということが事件の気狂いさを感じる。
所有者が誰であれ、この場所が「聖地」。
もう、ここはザムザムの泉で、この場所で水が取れなくなっても、このアドレスを持つ限り、信者には聖地に映る。
ここでは石を持って帰るらしい。
この方の「意思」にあやかるらしいが、俺はこの土地に手を触れなかった。なんとなく、許されない気がした。
ロープの奥では2匹の猫がこっちを見ていた。
怪しいくろねこではない、と言いたいが、あまり長居してもなんだから、とお寺の周りを一周しようと歩き出した。
このあたりの記述には、幼馴染のベーシストが買って貰った新品の自転車をカツアゲして側溝に落ちた by小学校三年生
という、令和にもなれば、微笑ましくもない、単なるいじめの記録が残っている。時代は移り変わる。まあ、なんだかんだで28歳まで一緒にいたんだから仲良しだったのは間違いない。
流石に側溝はないだろうが、道はわかるかもしれないと歩いていると、猫が現れた。
灰色縞模様のふっくら冬毛な猫さんは、大怪我をしていた。唇の肉が抉れ、歯と歯茎が剥き出し。真っ赤な口からはまだ瑞々しい肉が見えている。
お財布の中身は三万円。クレカはある。
動物に保険は効かない。だが、放置していたら、化膿する。
息を吐き、覚悟を決める。
目の前に現れた弱っている動物を助けるぐらいの優しさは出さないと「ダサい」!
声を掛けると逃げていく。
逃げて行った方向は、土の道。お寺を囲む一段低い場所を通る歩道のよう。
風鈴の音が強く聞こえている。