ウサギになり損ねた女の子
「人間はいや。生まれ変わるならウサギがいい!」
前世で酷い目に遭って亡くなった女の子が必死で頼んでいました。
「今、ウサギの生まれ変わりは人気大集中で、なかなか空きがないんですよ」
魂管理局の職員が困った顔で言いました。
「ぬいぐるみも?」
「ああ、そーゆーのでもオケーなんですね?ちょうど今、ウサギあみぐるみ編んでる人いますよ」
「そのウサギがいい!」
「あみぐるみ初心者の人が作ってるのだから、あんまりきれいにならないかもですよ?大事にされるとも限らないし……あんま、おすすめでないやつですね」
「そのウサギでいいです」
肌色の毛糸で本体と頭部までできている段階でした。
ヒュー、スポン。
女の子はその中へ入りました。
「あーあ、そこまでで放置される危険性もあるのに」
魂管理局の職員がはらはらして見ています。
「うーん。あとは耳を編んで、顔を作って……」
あみぐるみをつくっている最中の人は、興味が逸れた様子で、あみぐるみの本をKindleでチェックして、着せ替え人形の女の子のあみぐるみになぜか心惹かれ、ダウンロードしてしまいました。
「ちょっと!何やってんの!?」
耳にするはずのところに茶色の毛糸を植毛し始めました。
ピンクのワンピースを着せて、顔を可愛く刺繍。
「パンツはいてないや」
「ちょっとー!やめてよね!」
空色の毛糸でパンツが編み上がり、はかせてもらい、女の子はウサギではなく、女の子のあみぐるみになりました。
「かわいいねー。マルシェで売りに出すまで、うちで一緒に遊ぼうね」
「……うん」
女の子はこれはこれで納得するしかないな、と思いました。