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社畜×公爵令嬢

 

 もう日付も変わろうかという頃、ふらつく足取りで霞ヶ関のビルを後にした俺は眠気のせいか或いは疲労からか、それともただの怠慢か……赤信号の灯る横断歩道へと侵入し激しい衝撃とともに全ての感覚を失った。

 で――――――今に至る。

 目を開けると派手な装飾の天井。

 どう考えても家じゃない。

 病院に搬送されたのか……でも病院らしさは皆無だ。

 こんな華美な天井、病院にあったら治る病も治らなそうだ。


 「ルイーザ様、お目覚めになりましたか?」


 部屋の外から女性の声が聞こえた。

 え、ルイーザ?誰だそれ……。 

 俺には親に貰った小鳥遊たかなし湊音みなとという名前があるぞ?

 俺じゃない他の奴のことだよな……とりあえず二度寝するか……。

 連日の残業で疲れた身体には、ふかふかな寝台があまりにも心地よすぎた。


 「ルイーザ様!?起きてくださいまし!お部屋に入りますよ!」


 足音がなって部屋の扉が開けられる。


 「どうしたのですか?いつも寝覚めが良いはずですのに」


 入ってきたのは、Theメイドって感じの姿をした少女だった。

 歳は俺とあんまり変わらないぐらいだ。

 ひょっとして俺は変な夢でも見てるんじゃないか、そう思った。


 「お、そうだったっけ?」


 そもそもルイーザが誰かもわからんし、そんな奴の寝起きのことまで知らんわ。

 試しに適当に答えてみる。


 「な、口調が……!?」


 少女は、あんぐりと口を開いて俺を見つめた。

 お、やべ、いつもの調子で喋ったらマズかったか……?


 「気のせいだ」


 メイドがいるってことは上流階級、きっと実業家の息子かなんかだろう。

 だとしたら変な夢なんかじゃなくていい夢を見てるのだろう。

 育ちのいい口調ってのは、こんな感じか?


 「え、口調……ほんとにどうさなったんですかぁぁぁッ!?」


 メイドが俺の肩を掴んでガタガタと揺する。

 どうやらこの口調じゃなかったらしい。


 「ルイーザ様は、女性らしくなければいけないのですよ?」


 え……ルイーザって俺の事か……そんでもって女性……だと!?

 遅れてついてくる理解。

 俺は、胸元を見た。

 大きくてたわわなものが二つ――――おっぱいだ。

 とりあえず揉んでみる。

 あ、柔けぇ……てかこれ絶対Gカップはあるよな?

 いい夢見させてくれてありがとうございます。

 いるかどうかも分からない神様に感謝した。

 

 「なっ……!?何してるんですかぁぁぁぁ!」


 メイドが俺の手を掴んでおっぱいを揉む手を止めさせる。

 えぇい、離せ!この感触を堪能させろ!そして夢なら覚めてくれるな!


 「何って、おっぱいを触ってるだけだが?」


 そう言うとメイドは、ボンッと顔を赤らめた。


 「そ、そうですよね……ルイーザ様も年頃の美少女……」


 納得してくれたのかメイドは俺の手を離した。

 これでおっぱいを揉むことに専念できるな――――至福!


 「って、納得しかけるところでした!」


 メイドは、我に返ったように再び俺の手を止めた。

 俺はメイドと見つめ合う。

 ちょっとうるさいだけで顔は、結構可愛いじゃん。

 そしておっぱいも小さくない。


 「……離せ」

 

 そう言うとメイドは、手を離した。

 手が自由になった俺は、おもむろににメイドのおっぱいを鷲掴みにした。

 なんだろう……これもまた違った良さがある。


 「きゃぁッ!?」


 メイドは、飛び下がると胸を押さえてうずくまった。

 でも待てよ?女性の体になっているとしたら、俺の長年連れ添ってきた相棒がいないということか?

 俺は、着ていた服の中に手を突っ込んでおち〇ちんの存在を探す。


 「え……な、無いだとぉぉぉ!?」


 おち〇ちんが、おち〇ちんがない!


 「なッ!?私がいるのにも関わらず自慰行為を!?」


 慌てて下半身をまさぐる俺を見据えるメイド。


 「こ、こ、こんなのわたしの大好きなルイーザ様ではないのですぅぅぅぅ!!」


 メイドは、拳をあげると俺の頭に振り下ろした。


 「あぎゃぶぅぅぅ!?」


 咄嗟の行動に判断が追いつくはずもなく殴られる。

 さらに受け身も取れず、見事にベッドから転げ落ちた。


 「ハッ!?私ったらなんて事を!?」


 慌てて駆け寄って来たメイドに揺さぶられて俺は、思考がクリアになった。

 そして自身の置かれている状況も何となく把握できた。

 いや、失ってた記憶を取り戻したとでも言うべきか。

 俺もとい私は、エルドニア王国サレンツィオ公爵の娘、ルイーザ・サレンツィオ。

 そしてこのメイドの名前は、リリア。

 その記憶にはもちろん、普段の話し方も含まれている。


 「大丈夫よ、リリア。心配をかけたわね。ちょっと魔が差しただけよ」


 そう言うとリリアは


 「ルイーザ様ァァァァ!戻ってきたぁぁぁ!」


 俺の胸に抱きついて泣いた。

 俺は、どうやら貴族の娘に転生したらしかった。

 

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