試験説明
歓迎ムードなんて微塵もない。
というか、思い切り敵対されている。
俺は震えながらギルド内を歩く。
しかしながらエレノアはびくともしていない。
鼻歌を歌いながら普通に闊歩している。
「なんだか皆怖い顔してるねぇ」
と言った感じである。
俺も彼女みたいな精神力が欲しかった。
隠れる場所なんてないが、とりあえず姿勢を低くして自分は悪い人間じゃないアピールをする。
これが田舎……田舎の怖さが凝縮されている。
もしかして、辺境に来るの、間違ってた?
「おいおい。お前、挨拶もなしにギルドを何歩いてんだ?」
「あ、どうもです! 初めまして、アルマと申します!」
俺は何度も頭を下げる。
エレノアは小首を傾げていた。
とりあえず頭を下げさせる。
「彼女はエレノア。俺の仲間です、はい!」
「エレノアだよー」
やはりエレノアの雰囲気は変わらない。
彼女らしくていい……けど状況が状況だよ!
「ほう。貴様のようなゴミムシがこんなギルドにやってくるとはな。さては冒険者ライセンスを発行しようとしているのか?」
「そうですね……冒険者として活動したい、と思ってまして」
「貧弱そうに見えるが?」
「ま、まあそうですね」
怖い。怖すぎる。
相手のガタイがよすぎるし、多分握手すれば俺の骨は全て破壊されるだろう。
「まあ貴様のような者が冒険者になれるとは思っていない。せいぜい、試験で苦しむがいい」
そう言って、背中を押してきた。
怖い……!
俺は怯えながらカウンターへと向かう。
受付嬢さんが奥から出てきた。
「こんにちは! あれ、新人さんですか?」
「はい。えっと、この領地に来たばっかで。ライセンスも持っていないので、試験を受けれたらなぁ……と思っているのですが」
「なるほど! 試験ですね、かしこまりました!」
よ、よかった。
受付嬢さんは普通だった。
本当によかった。
いかつい受付嬢さんが出てきたら多分俺は泣いていた。
ここまで必死に辺境までやって来たのに、全く歓迎されていなくて泣きそうなのに。
受付嬢さんは資料を持ってきて、カウンターに置いた。
「こちらにサインをしてください!」
どうやら、試験を受けるためにはサインをしなければならないらしい。
アルマとサインをし、エレノアに手渡す。
エレノアもサインをして、受付嬢さんに渡した。
「ふむ。確認しました!」
そう言って、受付嬢さんは資料はノートに挟む。
俺たちのことを見て、こくりと頷いた。
「それでは試験の説明をしますね!」
どうやら試験の内容を伝えられるらしい。
緊張する。
これで失敗したら俺たちはお金を稼ぐルートがかなり狭まる。
特に生活するのにかなり苦労を強いられることになる。
失敗するわけにはいかない。
「と言っても簡単です。複雑なことはしません」
言いながら、受付嬢さんはにっこりと微笑む。
なんだろう。すごく和む。
これが受付嬢の力。
やっぱ違うな。
「殴り合ってください!」
「……え?」
俺は思わず聞き返してしまう。
受付嬢さん、ものすごく可愛い笑顔でとんでもないこと言わなかった?
「あの、もう一度お願いします」
俺は震えた声音で尋ねる。
すると、満面の笑みで返ってきた。
「殴り合うんです! 殴り合って、試験官を『よし』と言わせたら見事冒険者になれますよ!」
こ、怖すぎる!
平然とものすごく怖いこと言ってる!
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