俺は戻らない
俺は目の前のソファに腰を下ろし、正面を見る。
あまり居心地はよくない。
少なくとも、彼は俺の追放を促した。
俺の友人を、馬鹿にした。
「ここまで来てどうしたんですか」
分かってはいるが、一応聞いてみた。
すると、ポール兄さんはうつむく。
しばらく黙った後、口を開いた。
「アルバート家に戻ってきてくれないか」
「どうしてですか」
「……色々とあったからだ。それにお前、貴族階級に戻りたいだろ? せっかくのチャンスなんだ。今なら家に戻れる」
貴族階級に戻りたい、か。
そりゃ、貴族だと色々と都合が悪いこともどうにかなったりする。
事実、スキルが発現する前までは苦労せずに生活することができた。
これは貴族だからこそ、と言えるだろう。
でも。
「俺はもう興味ありません。家にも戻りません」
はっきりと断言すると、一瞬でポール兄さんの表情が変わった。
拳を思い切り机の上に叩きつけ、睨めつけてくる。
「どうしてだ! 貴族が恋しくないのか!?」
「恋しくありません。俺は、今の生活に満足しています」
「……今戻ったら僕がサービスで次期当主になる権利を与えてやる。これならどうだ!」
僕がサービスでって。
最後の最後まで上からなんだな。
まあ、そりゃ貴族と平民だから当然だけど。
「俺は興味ありません。次期当主は兄さんに譲りますよ」




