呼び出し
「クリス男爵様がアルマさんを……」
「男爵様が?」
早速ギルドに向かい、冒険者としての昇格任務について尋ねようかと思っていた時のことだった。
受付嬢さんが不思議そうな表情を浮かべて、俺にそんなことを言ってきた。
どうやら男爵様から直々に呼び出しがあったらしい。
「俺……何かしちゃいました?」
「さぁ……私は呼んできてくれ、としか言われていなくて」
どうしよう、本当に何かしちゃったのだろうか。
相手は貴族。そしてここはクリス男爵の領地だ。
いわば、ここは彼の敷地。
下手をすれば……首が飛ぶ!
「貴族から呼ばれたの!? すごいね旦那様!」
「よく分からないけど、すごい人なのね! やるじゃないの!」
二人は能天気なものだった。
俺は頭が痛い。目眩もする。
どうしよう、全く心辺りがない。
もしこれで速攻「お前、死刑な」なんて言われたら死んでもしにきれない。
「とりあえず早急に向かった方がいいですよね?」
「そうですね。悪い人ではないので、心配する必要はないと思いますが」
「いや……それは無理ですって。貴族様からの呼び出しなんですよ。絶対俺何かしちゃってますって」
「ですかねぇ? まあ頑張ってください!」
この受付嬢……やっぱり色々と怖い。
俺はこの街に地図を受け取り、ギルドの外に出る。
快晴……眩しいくらい晴れている。
と言っても、俺の気持ちは憂鬱だ。
「楽しみだね!」
「楽しみだわ!」
「二人とも、俺が死んでも頑張って生きてくれよ」
「どういうこと?」
「んん?」
そういうことなんだよ!
全く、俺も精霊になりたい。
どんなにやっても死なない体になりたいよ。
ああ、でもここで死ぬわけにはいかないんだよな。
俺にはやらないといけないことが山ほどある。
精霊たちを守るためにも、世界を守るためにも。
ここで死ぬわけにはいかないのだ。
頬を叩き、気合いを入れる。
よし、大丈夫。
ギロチン刑になっても多分一発は死なない。
それくらいの気持ちの整理はできた。
「それじゃあ行くか」
◆
男爵、と言っても相手は貴族である。
貴族ということもあって、屋敷はかなり大きかった。
門番がいて、俺の顔を見るなり、
「アルマだな」
と確認を取ってきて、首肯するとすぐに通された。
執事が現れて、今は絶賛案内されている。
長い廊下はやけに静かで、その分緊張した。
「うわー広い」
「こんな家初めて見たわ」
精霊たちは楽しそうである。
うん、もう慣れた。
しばらく歩いていると、一際大きな扉の前で執事が立ち止まった。
「こちらでございます」
「あ、ありがとうございます」
俺は一礼して、扉の前に立つ。
深呼吸した後、
「すみません、アルマです」
扉をノックしてそう言うと、少しの静寂の後。
「おお! 来たか来たか! 入ってくれ!」
やけに明るい声音が俺を出迎えた。
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