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頑張ろう

 色々と忙しかったこともあり、もう空は茜色に染まっていた。

 しかしながら約束事は守らなければならない。


「お洋服ー! お洋服ー!」

「可愛い服ー!」


 二人はテンションが上がっている様子で、今回に限って仲よさげに歩いていた。

 俺は先頭を歩く二人を追いかける形で歩く。


 中央広場まで戻ってきた俺たちは、周囲にある服屋を吟味していた。


 そこで、どうやら気に入るようなジャンルの服屋を見つけたらしく急ぎ足で二人は入っていく。


 入ってみると、完全に女性向けの服屋であった。

 ま、眩しい。


 初見の印象はそんな感じ。


 男が入るにはあまりにも眩しい服屋だった。


 田舎にもこんな店があるんだな、と半ば関心する。


「うわー! めちゃくちゃ可愛い!」

「よね! これもいいし……あれもいい!」


 二人はキャッキャと騒ぎながら服を見ている。

 女の子らしいひらひらとした可愛らしい衣服だ。


 精霊もやっぱり女の子なんだなーと不思議な気分になる。


「ねね旦那様! どっちの服がいいと思う?」


 ぼうっと眺めていると、エレノアが二着の服を俺に見せてきた。

 スカート……だと思うんだけど、これを選ぶのか?


 なんというか、俺にはどっちも同じに見えるんだけど。


「ええと……どっちがいいだろう。こっちとか?」


「えー旦那様センスない」


「……すまん」


「ま、旦那様が良いっていったほうにするんだけどねー!」


 正直本当に分からなかった。

 こういうシチュエーション、小説とかで読んだがまさか本当に起こるとはな。


 なんて思っていると、シャーロットもこちらにやってきた。


「アルマ的にどっちがいいとかあるかしら?」

「ええ……ちょっと待ってくれ。俺にはどちらも同じに見えるんだけど」


「違うわよ! ほら、こことここが違う」

「ここと、ここ……確かに少し違う……のか?」


 リボンの形が少し違う気がする。

 多分、合っているのかは分からないけど。


「えーと、こっち?」

「んーそれじゃこっちにするわ」


 あかん、泣きそう。

 俺は悔しいというか悲しいというか、複雑な感情に飲み込まれた。


 こういう類のものを完全にマスターしている人物はいるのだろうか。

 もしいるのなら、俺はその人を大賢者と呼ぼう。


 残念ながら、俺には大賢者になる才能はないらしい。


 悲しきかな。

 いや、これで大賢者扱いされるのも困るだろうけど。


「それじゃこれで!」

「支払い頼んだわ!」


「はいはい」


 俺はレジに持っていき、支払いを済まそうとする。


「400ゴールドです!」

「400……?」


 待ってくれ。

 ここのお店ってそんな高い場所だったのか?


 確かに見た目は輝かしい。

 ちらりと他の服の値段を確かめてみると、余裕で100とかを超えていた。


 貴族の買い物かな?


 俺は「やっぱりなしで」とエレノアたちの方を見る。

 めっちゃ輝かしい目で俺のことを見てる。


 駄目だ。これ、引き返せないわ。


「400ちょうどで……」

「ありがとうございましたー!」


 俺は涙が溢れそうになるのを堪えて、エレノアたちに服を渡す。


「やったー! 大好き旦那様!」

「最高よ!」


「あ、ああ」


 明日から稼ごう。

 頑張ろう。

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