ポールの報告(ポール視点)
帰路も頭の中はスキルのことでいっぱいだった。
これからどうすればいいのか。
どのような立ち回りをすればいいのか。
そうだ。竜殺しにも失敗したんだ。
父にはなんて説明すればいいだろうか。
討伐してきた……なんて言っても通用しないだろう。
なんたって証拠がない。
討伐をした証である、角の確保。
それができていない以上、言い訳なんて通用しない。
帰るのが億劫だった。
全てを捨てて逃げ去りたかった。
「でも……逃げられない」
ポールは帰還の魔石に魔力を込める。
すると目の前がぱっと明るくなり、景色が変わった。
「おお、帰ってきたか」
目の前には父、アルバートの姿がある。
しかしすぐに表情は変わった。
自分が角を持っていないからだろう。
「まさか……失敗したのか?」
「……失敗しました」
「馬鹿者!!」
正直に白状すると、アルバートから思い切りビンタを食らった。
痛い……ものすごく痛い。
「貴様、これがどういう意味か分かっているのか!」
「もちろん、です」
だが耐えるしかない。
今はそれ以上に隠すことがある。
自分にはもう【剣聖】の能力はないのだ。
万が一、そんなことがバレたらどうなるか。
想像するだけでも恐ろしい。
「仕方がない……竜殺しは達成したことにしよう。もうスケジュールは決まっている……」
アルバートは苦悩の表情を見せながら、そんなことを言う。
「宮廷でのパーティーだ。【剣聖】が誕生したあかつきには必ず行われる儀式。そこで、国王に【剣聖】の力を見せるのだ」
「つ、つまり僕は許されると!」
「許そう……事故はつきものだ。今回はきっとたまたまだろう」
許された。
アルバートには呆れられたが、これで問題ない。
正直に言ってよかった。
で、でも待て。
国王に【剣聖】の力を見せると言ったか?
「あ、あの。【剣聖】の力を見せるというのは……どういうことですか?」
ポールは震えた眼でアルバートに尋ねる。
「そのままの意味だが、【剣聖】の証を見せるのだ。国王様は《神眼》を扱うことができる。スキルや能力を見極める力だ。そこで、国王様に自分の力を証明し、正式に家を継ぐという流れにしよう」
待て。
待て待て待て。
そんなことをしてしまうと、自分に【剣聖】の力がないことがバレるではないか。
「あの……それは本当に出席しなければならないのでしょうか」
「当たり前だ。せめて、そこで実力を証明してくれ。そうすれば私も許そう」
嘘だ……これじゃあ僕に【剣聖】がないのがバレるじゃないか。
父だけではない。
国王様にもバレるではないか。
レミアム王国全土に、自分の恥が広がる。
「準備をしておいてくれ。ああ……頭が痛い」
嘘だ。
こんな現実信じられるか?
勝ち組だったはずなのに。
アルマと違って……僕は……。
「あぐっ……!」
瞬間、頭に痛みが走る。
脳裏にアルマの姿がフラッシュバックした。
どうして急にアルマのことが……。
『アルマを恨め、憎め』
「あ、アルマを……」
いや、違う。
所詮アルマは負け組。
アルマは……アルマは……。
【夜分からのお願いです】
・面白い!
・続きが読みたい!
・更新応援してる!
と、少しでも思ってくださった方は、
【広告下の☆☆☆☆☆をタップして★★★★★にしていただけると嬉しいです!】
皆様の応援が夜分の原動力になります!
何卒よろしくお願いします!




