風の精霊、覚醒
公爵家ということもあって、この屋敷は広い。
無駄に長い廊下に多くの部屋。
綺麗な服装をした使用人が俺の隣を通り過ぎて行く。
無視、か。
まあそれもそうか。
俺が外れスキルを引いたのは誰もが知っていることだ。
特に追放される、なんて事実は前々から知られていたことだろう。
悲しいが事実だ。
「うわ……」
廊下を曲がろうとした瞬間のことだ。
自信満々で素振りをしているポール兄さんの姿が見えた。
ここは避けていこうか。
子リスのように、さながら小動物のように身をかがめながら中庭を歩いて行く。
しかし、そう現実は上手くいかないらしい。
なぜだか俺の姿を発見したポール兄さんが嬉々とした表情でこちらに向かって叫んできた。
「おいおい! アルマじゃねえか!」
「兄さん……」
俺は咄嗟にエレノアに隠れるよう指示を送る。
しかし、エレノアはポールのことを嫌っている。
そのため、俺の前に浮かんでポールを睨めつけた。
「これはこれは、アルマのご友人じゃないか」
「うー!!」
やばい。エレノアを怒らせるのは不味い。
どうにかエレノアの前に立って、ポール兄さんを見る。
「ふん、礼儀がなっていないな。まあ所詮追放された残念息子の友人ってところか」
「あまり俺の友人を馬鹿にしないでください。俺のことならいくらでも馬鹿にしてくれていいので」
「ははん。自虐か、お前らしいな」
自虐……もう癖のようになってしまっていた。
しかしながら自衛のためにやっていることだ。
仕方がない。
生きていくためにはこうするしかないのだ。
「それじゃあ……俺は出ていくから」
俺は踵を返し、あまり兄さんと絡まないようにする。
これ以上はまさに不毛である。
「おい、待てよ」
だが兄さんは見過ごしてくれなかった。
俺の肩を掴んで止めてくる。
「最後くらい僕の相手してくれてもいいんじゃないか? 最後の別れなんだぜ?」
言いながら木剣を投げつけてくる。
……あまり戦いたくはない。
「ありがたいけど……俺はいいです。兄さんには敵いませんので」
「もう兄さんじゃないんだが? これは貴族様である僕からの命令だ」
……そう来るか。
こうなってしまうと俺は下手なことはできない。
指示に従い、木剣を握る。
「さて、どういたぶってやろうか」
「……本当にいいんですか?」
「いいとは? 僕に怯えているのか?」
「いえ、別に」
ここは俺が負けるべきだ。
大人しく負けて逃げるのがベストである。
「うー!!」
だが――俺の隣でブチギレているエレノアが許してくれないだろう。
まだ彼女は――本気を出していない。
しかしもう、俺にはどうすることもできないだろう。
なんせ精霊は――スキルの創造主。
風の精霊、エレノアはスキルを司る者なのだから。
「それじゃあ行くぞ!」
ポール兄さんが【剣聖】の力を発動する。
剣を構え、そして俺に対して振るう。
刹那――
「私の旦那様に手を出すな!!」
轟音。
風が吹き抜け、ポール兄さんを吹き飛ばす。
「うぐあ!?」
ポール兄さんは愕然としている様子だった。
俺はというと、「やっぱりこうなるか」と嘆息していた。
目の前には、一人の少女がいる。
風の精霊であり、名はエレノアと言う。
先程までの小ささとは打って変わって、今は人間の女の子レベルにまで体が大きくなっていた。
「な、なんだよ……それ……」
ポール兄さんががくがくと震えながら、エレノアと俺を見る。
ああ、なんというか。
「俺の友人です」
「友人じゃないよ! お嫁さん!」
ぎゅっと抱きついてくるエレノアの頭を撫でながら、俺は一礼する。
これ以上騒ぎにすると面倒なことになる。
「それじゃあ、お世話になりました」
「な、なんなんだよ……今の……」
踵を返し、エレノアにデコピンする。
「痛い!」
「怒ってくれるのは嬉しいけど、やりすぎはよくないでしょ?」
「……だけどぉ」
「だけどじゃない。怪我をしたら危ないじゃないか」
「むう」
そう言って、エレノアはそっぽを向く。
全く。でも、俺のことを思ってくれるのは嬉しい。
でも……彼女のことを認めてくれないのも悔しい。
認めてくれなくて、俺は追放されてしまった。
【精霊使い】。
【剣聖】より強い自信はあるんだけど、父上が求めているものとは違うのだ。
「ゼロから、頑張ろう」
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