炎
「ゴブリンの数は?」
「かなり多い。多分、数十体はいる」
祠付近までやってきた俺たちは、木々の陰に隠れて数を確認していた。
ぱっと見でも分かるのだが、何体もここ周辺でうろうろしている。
接敵せずに祠付近まで近づけたのは奇跡と言ってもいいだろう。
祠には明かりが灯っており、周囲のゴブリンが手を突っ込んでいる。
そして、ゴブリンの目は赤い。
額には紋章が刻まれている。
通常種にはない物だから、特殊な個体と考えていいだろう。
ゴブリンの狙いは間違いなく祠にいる精霊。
やはりドラゴンと関連があるようだ。
「エレノア、力を貸してくれ」
「もちろん! 旦那様の言われるがままに!」
俺が手のひらを掲げると、エレノアが周囲を飛び交う。
光りが俺を包み込み、加護が付与される。
――やってやる。
飛び出し、ゴブリンたちに向かって手をかざす。
「《風の刃》!!」
風が周囲を飛び交い、ゴブリンたちを切り刻んでいく。
力はこちらの方が上だ。
あとは一気に殲滅するだけである。
「《旋風》ッッ!」
周囲一体に風を放ち、ゴブリンを殲滅していく。
風の加護が強力ということもあり、勝負を一気についた。
倒れたゴブリンを確認した後、俺は祠を見る。
「エレノア、もう大丈夫」
「オッケー!」
人間の姿に戻ったエレノアが隣に立つ。
周囲が静まり返り、逆に緊張感が走った。
祠に一歩、また一歩と近づく。
ここに誰かがいるはずだ。
俺が覗き込む――瞬間のことだった。
「きゃっ!?」
急にエレノアの気配が消えた。
隣を見ると、彼女の姿はない。
「……!? どういうことだ!?」
慌てて辺りを見渡す。
一体全体なにが起こっているんだ。
視線を右往左往し、一つの地点で止まった。
森の中。微かにエレノアの気配を感じた。
……そして、一人の男の気配もする。
「誰だ!」
叫ぶと、「やれやれ」という声が聞こえた。
かつかつと足音を鳴らしながら、男が姿を現す。
「君が【精霊使い】だね」
長い髪を持つ男の隣には、腕を掴まれているエレノアに姿があった。
「お前――」
「まあ落ち着きたまえ。交渉しに来たんだ」
男は手を突き出し、ニヤリと笑う。
「私は『魔の一族』三男坊、名をエンビーと申します」
エンビーと名乗る男は一礼し、俺のことを見る。
「簡単に言えば幹部ですね。ええ、偉い人です」
「エレノアを離せ」
「お断りします。そこで交渉しましょう」
エンビーは指を立てて、
「私たちの仲間になりませんか? 部下であるドラゴンから話を聞いていると思いますが、神々の力を扱う君の力があれば、世界を手にするのも容易いこと。一緒に世界を掴みませんか?」
「断る……と言ったら?」
「残念ですが……無理やり拘束させていただきます」
エレノアを見るが、どうやら意識がないらしい。
だが……生きてはいるようだ。
肩で息をしているのが見える。
「ですがー、君は戦えるんですか。【友人】はもう、私の手にあります」
どうやら相手は俺の能力を知っているらしい。
まあ……それもそうか。
どうする。エレノアの力がないと相手を倒すのはかなり難しいだろう。
「……どうやら俺にはまだ、味方がいるらしい」
「ほう?」
瞬間、背後の祠が赤く輝き出す。
熱い炎とともに中から一人の精霊が飛び出した。
「うーーーーあーーーー!!」
炎。
どうやら、この祠に眠っていた精霊は炎の精霊らしい。
そして――俺に力を貸してくれるようだった。
「名前は後でしっかり聞かせてもらうよ! だから、今力を貸してくれ!」
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