はい、私が聖女です。
「そんなはずはない!」
顔を歪めながら私に呪術を放ってきた。
「だから無理ですって、私は貴方の天敵ですよ。
残念でしたね。
この国に誕生する聖女を力が増す前に葬るため、王家やそれに属する男に呪術をかけていたようですが、無駄に終わりましたね」
「なぜそれを知っている!」
「知ってますよ。
貴方が300年前から存在してることや、本当は殿下の力が強すぎてそこに倒れてる人達しか呪術をかけられなくって、肝心の陛下にかける力がなかったことも知ってますよ」
「他にも」
彼女をあくまでも無表情で見て。
「貴方を消し去る方法も」
「まっまさか」
「はい、その通りですよ。三百年前に貴方を消し去ることはできなった聖女様が開発したあれですよ。
でも、安心してください。
病弱ゆえにその身に宿す聖女としての魂の強さが発揮できなかった聖女様とは違い。
私は見ての通り。
公爵家に恥じぬよう教育を受け、心身ともに磨きあがった公爵令嬢です。
分かりますよね?」
それを聞いたリリアーナは会場の出口に向かい走っていったのですが。
「なぜ開かない!」
ドンっドンっドンと扉を叩く彼女に向かって歩きながら
「ダメですよ。五年もこの機会のために力を貯めてきたんですから。
この空間からは逃しません」
「ひぃー」「くるな」「開けっ開けっあけてくれ」「消滅はいやだ!」
近づくたびに怯えて騒ぐ彼女にやっと辿り着いた。
「ではさようなら」
私は右腕を振りかぶり全力で彼女にぶつけた。
「魂厄破棄です」
「いやだ、、消える、力が、厄神様、
助け、、」
彼女は着ていた白いドレスだけを残して、消えていった。
「だから騙されませんよ」
彼女着ていたドレスから一匹の蜘蛛を掴み上げ、壁に投げ捨てた。
「殿下これで、終わりましたよ。
私は疲れたので先に帰りますね。
皆様ごきげんよう」
前にある扉から出て行く。
殿下の声が聞こえていましたが流石に疲れましたので帰ります。
それから三日後。
「殿下、お招きいただきありがとうございます」
「いや、遅くなってすまない。
立場上調べなくてはならないことが多すぎてな、今日という日まで待たせてしまった」
「いえ、とんでもございません。王族としての職務を優先するのは当然でございます」
「ありがとう、それでいつまでその口調なのかな?あと座っていいよ」
殿下は困り顔をして聞いてきた
「まず、殿下と私は冥府の契りを解消しました。前のようにはいきません」
「いやでもさ、あれは呪術のせいでもあるから無効だと思うんだよ」
「しかし、貴族の嫡男や令嬢に見られております。
ただでさえ、厄災の巫女が起こした今回の事件で反王族派の方々の発言力が増したと聞いております。」
「それはそうなんだけど、でも2人っきりの時ぐらい前みたいに話して欲しい。
頼む」
殿下は頭を下げてお願いする。
私は用意された椅子に座り。
「はあーわかりました。2人の時だけですからね」
「あと名前も前みたいに呼んでくれないか?」
頭を上げ、笑顔で話す殿下に向けて。
「それは、当分は嫌です。何度名前で呼ぶなと言われたかわかりますか?」
「それは、本当にすまない。
それにたくさんひどい言葉と態度をしたな。
改めて本当にすまないことをした。」
また、頭を下げる。
「それも当分は許しません。そもそもなんで呪術にかかるのです?
この国の王族ならそれに対抗する物を身につけてますよね?
そんな無防備な状態の殿下と平民がどうやって会えるのです?」
「えーと、、マートンが連れてきた」
「はいわかりました。
どうせ王族専用の個室のついたレストランに従兄弟と待ち合わせして、あの騎士団と魔法団長の息子を連れて行った先に従兄弟と一緒に彼女も現れたんですね。
確かにあそこなら防犯もしっかりしてるから殿下も無防備になりますしね」
「すごいな、まるで見ていたかのようだ」
「殿下、次期国王になるのですよ?
身内に甘すぎです、しっかりしてください。
そういえばあの三人はどうしたんです?」
ふと疑問に思ったので聞いてみた。
「ああ、グロウは今頃新兵に混じって一からやり直してるらしい。
副団長に認められたら、ステフに謝りに来るらしいぞ」
「副団長ですか?」
「騎士団長も魔法団長も、流石に無罪ではすまないしな。
だが、普通の兵にするわけもいかんということで、副団長が落とし所だということだ。
今は色々と忙しいが、2人とも近々謝りに行くと言っていたよ」
「そうですか。では息子さんが謝りに来るのは気長に待つこととします」
「レインはもう無理だろうな。
プライドが高かった分、心底落ち込んで部屋から出ないらしい。
手紙も出したが、返事もこない。
マートンは原因を作った張本人なので、おそらく処刑されるだろうな」
悲しい顔をしながら教えてくれる。
「あれほどマートンに貴方は騙されやすいから女には気をつけてと言ったのに、、、」
「すまないな、流石に庇いきれなかった。
父上に何度も慈悲を訴えたのだが、今回は無理だと言われてな。」
「今回?そもそも今まで陛下達は何をしていたんです?五年もあったのに何にもしてませんでしたよね?」
「いや、父上も母上も俺に甘くてな」
笑いながらそう伝えてくる殿下に。
「お忘れになっていると思いますが、冥府の契りを解消した以上、婚約破棄をさせていだだきます。では、ごきげんよう」
「まってくれ!」
引き留める殿下を置いてその場から去った。
流石の私もキレた。
その日の翌日から、殿下は王都にある屋敷に毎日押しかけてきました。
我が公爵家の家紋である薔薇を携えて。
「ステフ今日も金色の髪がきれいだね」
「相変わらずその蒼い眼は可愛いね」
「今日は君の眼に合わせて蒼い薔薇を持ってきたんだ、花言葉は『奇跡』だって、まさにステフの存在だね」
「この蒼い宝石の石言葉は「慈愛」なんだって、聖女に相応しい色だよね」
手を変え品を変えてくるが最後は決まって。
「婚約破棄の件だけど、撤回してくれない?」
と困り顔で言うので。
「素敵な薔薇に贈り物、
ありがたくいただきます。
でも婚約破棄はします」
毎回絶望した殿下を見送る日々をして、いつかは終わりが来ると思ってました。
父様が買収されました。
なんと公爵領の税金を撤廃、そして公爵領を自治権をもつ公国にすること。
属国ではありますが、破格の待遇です。
もちろん条件は私と殿下の婚約破棄の撤回。
「父様絶対に嫌です。父様も五年もの間助けてくれなかったですよね?」
「それはそうだがな、スティよ公爵領に住む民たちを考えてみよ。
税が撤回されれば今よりいい暮らしができるだろう?わかってくれ」
「わかっていますよ、これでも公爵家の娘ですから。
でも嫌なものは嫌です。
もし婚約破棄を撤回して欲しかったら、
王族が土下座して謝ったら考えます。」
そう言い放って父様の書斎から出て行った。
そして、、
「余が息子に甘かったせいでこの度は迷惑をかけた、どうか婚約破棄を撤回してほしい」
「わらわは、貴方に娘になってほしい。
どうか考え直して欲しい」
「義姉上!このままでは俺は王位を継がないといけなくなる。
王位などいらない、俺はサリーの元に婿養子に入りたいんだ。
サリーの友達であるなら、頼むよ義姉上!」
「すまないステフ、初めからこうすればよかったんだな。
この通りだ。
ステフを失いたくない。愛しているんだ」
王宮に呼ばれ指示された部屋に入ると、
王様、王妃様、第二王子、殿下が土下座した格好のまま言い放ってきました。
「、、、」
流石に私も理解が追いつかない。
パタンと後ろからドアを閉めた音がしているのだけは理解できました。
沈黙の時間がそれなりに経ちました。
今の状況はおそらく私が作り出したことを理解しながら、どうすればいいか考えます。
はぁー選択肢がないですね。
友人であるサリーファ嬢が婚約解消することはしたくありませんですし。
あの事件で唯一私を信じ、爆笑していた人ですからね。
「わかりました。婚約破棄の件は撤回します。
ですが条件を付けます。
いいですか殿下?」
私は、殿下を見下しながら見てると。
顔だけを上げて。
「ああ!どんな条件でも受け入れる!」
「はぁーではこの国では今迄国王のみが政治に関わり、王妃は発言の権利すらありませんでしたよね?
もし殿下が王になった時、私に発言する権利をいただきます。
いいですか?」
「もちろんだ!ステフの知識は俺以上だからな、俺としてもそれを望むよ!」
「あと一夫多妻制は許しません。」
「当たり前だ!ステフ以外必要ない!」
と言いながら私を抱きしめる
「まったくウルは私がいないとダメですね。
次、私以外にウルと呼ばせたら今度こそ許しませんよ。本当に婚約破棄です」
「多分その時は操られているだろうから、
またステフの一撃で治してくれ」
「魂厄破棄ですか?」
「婚約破棄、、?」
「魂から厄災を破棄するで魂厄破棄ですよ、なんでも三百年前の聖女様が顔や性格に似合わず格闘技が好きだった影響で作られたようです。名前も必殺技をイメージしたとか。
賭け事が好きな人たちがよく行くあのコロッセオもほとんど聖女様が出資したそうなんですよ。」
「あのコロッセオがか!
びっくりするな、まあきっと三百年前の聖女様もステフと同じように規格外だったんだろうな」
「わかりましたから、少し力を緩めてください」
「すまん、嬉しくてついな」
それから一ヶ月後にはウルは国王に即位し、私は王妃となり、第二王子のクリストフはサリーファ嬢の伯爵家に婿養子にいきました。
前王、前王妃達は王室属領に入り、その御子息と令嬢は、王族らしく王族派の婿や嫁になることになったようです。
私が王妃として政治に関わるのを反王族派に妨害されながら、大人しくしているわけはありません。
即座にその貴族達を王宮に招び出します。
「陛下からの王命により、我々は参りましたが如何様でございますか?」
と膝をつき礼をとる反王族派の筆頭貴族。
グランファート・レイブン侯爵家。
「招び出したのは陛下ではなく、私です。
面倒なのではっきり言います。
貴方達は王家に従うのか従わないのかはっきりしてください」
「もちろん我々は従いますとも」
「そんな、当たり前の答えなどいりません。
私は知っているのですよ。
奴隷商売、違法麻薬、罪状をあげたらきりがありませんけど。
最初の問いは最後の慈悲ですよ、貴方達の組織はもう潰してあります。
素直に吐けば家族は助けたのですが。
王妃の権限により其方らを処刑する」
罵詈雑言を吐きながら反王族派は騎士達に拘束されて連れていかれた。
その騎士の中にあのグロウがいるのを見て不謹慎にもはにかんでる陛下を見てため息をついた。
これで終わりだと思ったんですが。
酒のつまみかコーラのつまみかわからないけど。
あざっす。