第77話 親子
1日経って私とレナはとある場所へ来ていた。
「セレン様!こちらです。」
近衛隊長から案内されたテントへ向かうと中にはスピカの母親が手首を拘束されていた。
「あなたの差金だったのね。」
「元々あなたの会社は目をつけていたわ。税金も払っている。怪しい荷物もないと報告があった。でも、武器を輸入しているのを知った時、何か怪しいと思って諸外国に諜報員を派遣したわ。そしたらあなたの旦那さんの名前が上がったのよ。」
「いつから……?」
「私がお城に居た頃からよ。今の王様との婚約が無くなった時は私たち王家に反旗を翻すつもりだったのでしょう?」
「まさか10年以上前から気づいていたとはね……でも不思議ね。諜報部にも気づかれない様にしていたつもりだったのだけど……」
私は独自の諜報部を持っている。だけどその事を伝える必要もない為結論だけを言う事にした。
「あなたは限りなく死刑になるわ。」
「そう。スピカも死刑かしら?」
普通ならば国家反逆罪を犯した場合一族全て死刑だ。しかし。
「あの子は死刑にはならないわ。2、3年はお城の監視下に置かれて反逆の意思がないと分かればその後は自由よ。」
「それはあなたの権力かしら?」
「まだ10歳前半の子に死刑を執行したら王族に批判がくる。だから16までは執行猶予という措置を取ってるだけよ。女児なら侍女へ、男児なら兵士という形でね。」
スピカちゃんとリザには教育実習という事で言っているが本当は監視下に置く為である。本人達には余計な負担を掛けさせるのを避ける為に本当の事は言わないのである。
「そう……」
何ともあっけない返事を返されてしまい。これ以上話す事がなくなってしまったのでテントから出る事にした。しかし1つだけ気になる事を聞いた。
「スピカちゃんに伝える事はあるかしら?」
「ないわ。あの子はもう大人よ。そして私以上に賢いわ。きっと私の仇を討ってくれるわ。」
「……賢い子ならばこんなバカげた事はしないと思うわよ。」
私の言葉にスピカちゃんの母親はクスッと笑って見せた。そうして私たちはテントの外へ出た。
「セレン様……」
「大丈夫よ。リザが居るのならきっとね」
不安そうな顔のレナを見て私は頭を撫でてあげた。
そして家に帰って夜になってから私はスピカちゃんとリザに昼間の話をした。
「……ありがとうございます……」
「スピカちゃん?」
「お母様が間違えを犯す前に止めて頂き……ありがとうございます……」
頭を下げていて顔は見えないがスピカちゃんは泣いていることが分かる。
「まだ判決はこれからだけど……覚悟だけはしてて欲しい。」
「はい……」
今回の一件はこれで片付いた。本当は私自身が関わるつもりはなかったのだ。元よりシューラには全て話していたのだから。ただスピカちゃんだけは助けなければリザが悲しむ。職権濫用と言われても構わない。それでも娘の幸せを願うのは親の勤め。例え血が繋がってなくても……
ここまで読んで頂きありがとうございました!
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