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第8話 過去と現在

 夢を見た。昔の出来事の夢だ。私がまだ12歳の時、部屋で泣いていた。婚約者の男が私を置いて他の女の人と遊んでいたからだ。


コンコンッ

「セレンお姉様。」


 妹のシュウラが部屋へとやってきた。


「何、また泣いてるのお姉様?」

「いいえ、泣いてなどいませんわ。」


「お姉様は嘘が下手ですよ。涙の跡が残ってますよ。」

「あっ……」


 私は急いで涙を拭く。


「あのクソ王子でしょ?今度は何したのよ?」

「えっ……?」


「何かされたんでしょ?言いなさい!」


 この頃は妹のシュウラが凄くかちきで喧嘩早かった。


「浮気してた……私とのデート中に……」

「それで、何か言ったの?」


「言ってない……逃げてきた……」


 するとシュウラはパチーンっと私の頬を叩いたのだ。


「お姉様がそんなんだからアイツが自由奔放でこんな事してくるのよ!」


 そう言うとシュウラは1通の手紙を私に突き出した。差出人を見ると絶句した。


「クラウド様……」


 私の婚約者である。まさか妹にまで手を出したなんて……


「私、お父様にこの事を話して……」


 すると再びシュウラは私の頬を叩いたのだ。


「バカ!お姉様が言ってもお父様は動かないわよ!あの王子に適当にあしらわれて終わるんだから。それかお姉様が悪いとか言い出すかも。もっと大胆に変えないと!」


「変えるって何を変えるの?」


「その性格よ!まずは性格を変えなさい!」

「性格って……」


「だから、そのうじうじした性格を変えるのよ!」

「そんな……」


「分かったわ。私はお姉様の様な性格になるわ。だからお姉様は私の様な性格になるのよ!」

「ええー!」


「そうよ。私が猫かぶってあのクソ王子の嫁になれば後からは逃げられないわ!例えどんな事をしてもね!」

「でも、そんな事したらシュウラが不幸に……」


「ならないわよ。あのクソ王子を死ぬまでこき使えるのだから。フフフ……」


 シュウラの発言に驚いた私。そうあの日から私は今の傍若無人のわがまま姫になったのだ。





 目を覚ますと隣にレナが寝ており、規則正しく寝息を立てていた。


「この子は凄いなー……私を追いかけてここまで来てくれたんだから。」


 私はレナの頭を撫でようとしたのだが……


「あれ?腕が動かない!」


 私は少し身体を動かして布団の中を見た。すると……


「嘘!縛られてるなんで?」


 そしてレナの手には縄が握られていた……


「私を逃がさない為か……もう逃げないのに……可愛い子。」


 もう私はこの子から逃げられないし、逃げるつもりもない。そのくらいこの子を愛しているのだから。


 仕方ないので寝ようとした時、ある事に気づく。


(……トイレ……どうしよう……)


 こういうのは気にすると余計に行きたくなるので考えない様に眠る事にした。


……

…………

…………………


(ダメだ……気にしない様にしたら余計に気になる……)


 仕方ないのでレナを起こそうと声をかけた。しかし夜なのであんまり大きな声を出せない。


「レナ、起きて……」

「スゥー……スゥー……」


 起きる気配が全く無かった。なのでもう少し大きな声でレナを呼んだ。


「レナ、起きて。」

「スゥー……スゥー……」


 全く起きる気配がない。そうしているうちにどんどん我慢の限界に近づいていく。


「レナ、レナ。起きて!」

「ん……」

(起きた⁉︎)


 と、思ったが、まさかの寝返りを打たれて向こうを向いてしまうレナ……なので縄が余計に私の身体を締め付ける。


「レ……レナ!起きて……」


 もう我慢の限界だった。なので普通にレナを呼んだ。


「ん……?あー、セレン様……おはようございます。」

「挨拶はいいから、この縄を解いて!トイレに行きたいの!」


「あー……大丈夫ですよ?」

「何が大丈夫なのよ!早く解いて!」


「大丈夫ですってばーセレン様は今おしめを付けてますのでそのまま出して下さい……では、おやすみなさーい。」


 私は一瞬血の気が引いた。


(つまりこの子は私の……)


 そして一気に頭に血が昇った。


「レナーー!」


 その後、レナをもう一度起こして縄を解いて貰ってトイレに行った。そして戻ってきた私はレナの顔に全力の往復ビンタするのだった。


「ずびまぜんでじだ……」


 流石にやり過ぎた。レナの頬は朝になっても真っ赤に腫れ上がっていてまともに話せていない。


「こ、こっちこそ少しやり過ぎたわ……ごめんなさい。」


 今は氷袋を貰ってレナの頬を冷やしてあげていた。流石にアザになるほどは叩いていないので半日で元に戻った。


「それで、これからどうしますか?」

「そうね。船で南の土地へ向かう予定だったけど、レナがついてくるのなら一度レナのご両親に挨拶しておきたいわ。」


「えっ?私のですか?」

「ええ、これからもずっと、どこまでも付いて来てくれるんでしょ?」


「……はい!」


 満面の笑顔で返事をされた。こんな顔見せられたらもう離れられないでしょ。


「「お世話になりました!」」


 私たち2人は宿の方々にしっかりと挨拶をした。何せ4泊もさせて貰って1泊の料金にして貰えたのだから。


「いえいえ、私も良い物見させて頂きました。2人の未来に幸あれ。」

「はい!」


 良いものとはなんだろうかと考えている横で返事をしているレナ。分かっているのなら後で聞こうと思う。


「またこの町に寄る時はここをご利用下さい!」

「ええ、そうさせて貰うわ。色々とありがとうございました。」


 そうして私は船の代金を払い戻して町を出た。そして町を少し離れた所でレナに聞いてみた。


「ねぇ、さっきの女性の良いものって何?」

「えっ?」


「えっ?って、レナ返事してたじゃない。」

「分かりません。ただ成り行きで答えました。」


 レナの言葉に私はビンタしようと思ったが、流石に今日の朝の事を思い出して頬を摘み上げた。


「分からないのに返事なんてしないのよ!」

「はひ、すみみゃせん……」


 レナが謝ったので私は摘んでたレナの頬を離して代わりにレナの手を握った。そして……


「ん……」

「………もう……離さないから!」

「……はい!」


 私は少し背伸びしてレナの唇に自分の唇を重ねた。

 そうして私たちは次の目的地レナの実家を目指すのでした。

ここまで読んで頂きありがとうございました。

これで第1章はおしまいです。


第2章は鋭意制作中です。お楽しみに!恐らくは来週の金曜日から土曜日にかけて纏めて更新となると思います。良かったらまた読みに来て下さい。


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