第62話 迎えの馬車にて
日が暮れる頃イズミさんが迎えに来てくれました。
「やっぱりここにいたんだ。」
「はい、リザがとても良い子だったのでご褒美にスイーツをご馳走してました。」
「なるほどね。レナはセレンさんがずっと帰って来ないからまだ怒ってるのかな?ってずっとソワソワしてたわよ。」
「あはは……それは悪い事したわね。しょうがないわね。お菓子でも買って行きましょうか。」
「そうしてあげて。たぶん喫茶店にいたなんて言ったら拗ねちゃうからね。」
イズミさんがやれやれという感じで私の言葉を肯定してくれたのでギラさんにレナとミスズさんの分のスイーツ作って貰って帰りました。
私は帰りの馬車の中でシエスタさんにギラさんの考えについて聞きました。
「シエスタさん。ギラさんの事で少し聞いても良いですか?」
「いいけど、答えられる範囲でよ。」
「ギラさんは何でシエスタさんとイズミさんを応援してくれてたんですか?1つはシエスタさんの笑顔が見れるのはイズミさんの前だからって言ってました。でも他にもあるという事だったんですが教えてくれなかったんです。シエスタさんに聞いてくれだそうですが……」
「あー……妙に頑固なところあるからね。まぁ簡単よ。あの人的にはイズミと対等に戦って負けたから応援出来るのよ。」
「対等?」
「男女だから勝てた……なんて言われたくなかったのよ。イズミを1人の人間として私を争って戦って負けた。それなら納得出来る。彼はそういう人なのよ。」
「つまり……性別を超えて正々堂々とイズミさんと勝負して勝てないと分かったから応援してくれたと?」
「そういうことよ。自分から負けたなんて言わないでしょ?しかも恋の勝負でなんてね。」
説明を受けて納得した。確かに負けた事を言う男なんて居ない。そこはやはりプライドなのだろう。
「まぁ私には分からない変化をアイツは知ったから諦めたのよ。私は確かにイズミと一緒にいる時が1番心地いいわ。でも、まだ付き合う前は態度をそこまで極端に変えたつまりもなかった。それに気づいたアイツは本当に私を愛してたと思うわよ。」
「そうなんですね。じゃあシエスタさんは幸せ者ですね。人生でそんな機微を分かってもらえる人が2人もいるんですから。」
「ふふふ。そうね……でも、少し違うわ。」
「えっ?」
「私の全てを理解してくれるのはイズミだけよ。その証拠に……」
「ねぇイズミさん。私が馬車の手綱持って大丈夫なの?」
「ええ、私も握ってるからね。」
「さっきまで近くで聞いていたリザちゃんの相手をしてくれてるでしょ。私たちの話を聞かない様にしっかりサポートしてくれてる。」
私は話に夢中で気が付かなかった。さっきまでリザが側で座っていたはずなのにいつの間にかイズミさんの側に行っていたのだ。
「私の事を気遣って先に動いてくれるのはイズミだけよ。」
「す、凄い……」
この2人は熟年婦婦の様だ。そして私はまだまだ親として未熟だった。
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