第60話 手紙
「はい、ではみなさん今日は道徳の授業です。お母さんやお父さんたちにお手紙は書きましたか?」
(親への手紙⁉︎)
私が驚いている間に生徒のみんなは元気に返事をしていた。
(ええー!何を書いたの?リザは何を書いたか知らないんだけど!変な事書いてないわよね?)
道徳と先程聞いていたけど、何を書いたのかは何も知らない……
「今日はみんなでお母さんやお父さんに日頃の感謝を伝えようという事で皆さんに手紙を書いてもらいましたね。それでは前に出て発表をお願いします。お母様、お父様方も前に出て貰いますのでご協力お願いします。」
(……本当に何書いたのかしらリザは?)
それからは出席番号順に呼ばれて行った。リザは転校生なので1番最後だった。そしていよいよリザの番になって私もドキドキする。
「リザさんのお母様。前へ出て貰えますか?」
「あっ、は、はい!」
緊張しすぎてリザの元へ行くのを忘れてしまった。私は急いで前に出る。こんなに緊張したのはレナの告白以来かもしれない……私が前に出るとリザは2枚の紙を出した。
「えっ、2枚もあるの?」
「うん……伝えたい事いっぱいあるから……」
少し顔を赤くして緊張した様子。リザの緊張した顔なんていつ以来だろう……私がそう思っているとリザは手紙を読み始める。
「セレンさん。私を拾ってくれてありがとう。」
その言葉で教室がざわついた。
「リザ……何を?」
「レナさんが瀕死だった私を見つけてくれて。それで2人で……ううん。4人で私を育ててくれた……私とセレンさん達は親子じゃないけれど。いつも優しく、時に厳しく……物凄く大切に育ててくれました……本当に感謝しても感謝しきれません。」
リザは涙ぐんで手紙を読み続けた。
「もしあそこでセレンさん達に会わなければ私はここにいません……本当にありがとうございます。私はこれからも2人の娘です……これからも厳しくそして優しく笑って一緒に過ごしたいです。」
そうして読まれたのは1枚だけだった。そして読まれなかった方をリザは私に渡します。そこには私とレナ、そしてイズミさんにミスズさんの4人の間にリザがいる絵を渡されました。
(あぁ……今日ここに来れて良かった。)
私は目から落ちそうな涙を拭うとリザに話しかける。
「うん……私たちこそありがとう……最初こそ距離感も掴めなかったし。リザには凄く気を使わせた所もあったと思う。それでもこんなに良い子で健やかに育ってくれた事が本当に嬉しいわ。これからもよろしくね。」
私はリザの頭を撫でてあげた。本当は抱きしめてあげたかったけど公衆の面前で行えるほど私の肝は据わっていない。
その後はリザ達がホームルームを終えるまで別室で待機になった。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
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