第59話 親子の絆
私が学校に着くとまだ授業は始まっていなかった。けれど早すぎるというわけでもなかった。
「セレンさん!こっちです!」
私を呼ぶのはここでは1人しかいません。
「リザ、学校ではお母さんと言いなさいって言ったでしょ!」
「あっ、そうでした。お、お母様。」
顔を少し赤らめて照れていました。滅多にそんな表情をしないのでめちゃくちゃ可愛く見えてしまいます。
「まだ授業始まらないの?」
「もうすぐ始まります。だから一緒に教室まで行きたかったの!」
「可愛い事言ってくれるわね!じゃあ行こうか。」
私はリザの頭を撫でてあげてからリザの手を繋いで向かいます。
「リザ、少し大きくなったわね。」
「えへへ。毎日食べて寝て遊んでますから!」
「そうね。今日の授業は何?」
「道徳です。内容はお楽しみに!」
ニコニコ笑顔でいるが目には少しの緊張があった。やっぱり初めての授業参観だから不安もあるのだろう。前にも2回あったけど私がお城に呼ばれていたりと時間が合わない事もあって今回は連絡を見てなくて急遽だ。
(まずい……私まで緊張してきた……)
私は初めて手汗が出るのを感じた。リザにバレてはいけない為に私は平静を装う。
「お母様……緊張してます?」
「ちょ……ちょっと……ね……」
「めちゃくちゃ緊張してるね!」
ニコニコと笑うリザ……私を安心させようとしてくれてる様だ。これじゃあどっちが親かわからないわね。
「大丈夫よ。私はしっかりリザの勇姿を見届けるわ!」
「大袈裟だよ!でも……楽しみにしててね!」
私たちは本当の親子ではない……だけどその子との絆はちゃんとある。それを再確認する瞬間だった。
「じゃあお母様は後ろで見ててね!」
そう言うとリザは教室へ入って行った。私は後ろの扉から教室へ入る。中には保護者の方が数名来ていた。まだ早いからなのだろう。まばらだった。
「誰のお母さん?」
「めっちゃ美人さんだー!」
「お姫様みたい!」
子供達が何やらザワザワし出していた。私は後ろを振り向くも誰も入って来ていなかった。と言う事は……
(私の事……?)
もう昔の様に肌は白くもないし、髪だって昔に比べて痛んでいるはず……それでもこの言われようだ。恐らく若いからだけだろう。30手前だが確かに他の保護者の方に比べれば若い方だ。そっとリザの方を見るとドヤ顔していた。どうやら鼻高々といったところ様だ。
「私のお母様だよ!美人でしょー!」
「ええ!リザちゃんの?」
「うそー!いいなぁー!」
周りからめちゃくちゃ尊敬の眼差しを受けていたリザ。そうしていると担任の先生が入ってきた。
「はーい、みなさん授業を始めますよ!」
さぁ私とリザの初めての授業参観が始まった。
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