第43話 条件
「良いでしょう。ただし、条件があります。」
「条件?無条件じゃないの?」
「当たり前です。私は考えるとだけ言ったのです。無条件などとは言ってません。」
確かにその通りだ。私もさっき考えるとしか聴いていないのだ。だからこそそれが保険だったのだと気がついたのだ。
「まずギラさんにしっかりとお詫びをする事、あなたが浮気という形なので当然の事です。」
「それはもちろん考えてます。」
「あぁ、俺たちでその辺は決めたので大丈夫だ。」
そうたぶん……というか、これはあり得ると思っていたので始めからギラさんシエスタさんイズミさんで話し合っていたようで、今まで通り店で働く事を条件としている。1人では店が回せないらしいし、他の人を入れるのはギラさんが嫌だそうだ。
「そうですか、では、2つ目にイズミさん、あなたにはシエスタを幸せにする義務があります。」
「はい。」
「では、シエスタに苦労をかけない為にどのくらい収入があるのかなどを聞かせてください。それはこの次に来る時でいいですので。」
「分かりました。」
シエスタさんのお母さん。やっぱりシエスタさんを大切にしている様だ。何よりも子供の事を大事に考えている様だ。
「そして、もう1つ……」
「まだあるんですか?」
シエスタさんは呆れた風に言っていたが次に出た言葉に場は凍りついた。
「子供を作りなさい。」
「「……は?」」
シエスタさんとギラさん2人で間抜けな声を上げた。
「平たく言えば孫の顔がみたいのです。」
「はぁ?いやいや、これから別れるって言ってるのになんで?」
「あの人の最期の望みだったのです。死ぬ間際まで孫の顔を夢見ていました。無論あなた達が離婚後は私たちが育てます。」
「いやいや、そんなの子供が可哀想でしょ?親が生きてるのに会えないなんて……」
「では、あなた達のどちらかが育てるのですか?」
「いや、そもそも俺はシエスタと子作りなんてするつもりはない。」
「では、この話は無かった事にせざるを得ないですね。」
「そんな……」
絶望するシエスタさんをよそにイズミさんが話し出した。
「分かりました。」
「えっ?イズミ?」
「ギラ、お願いシエスタと子供作って。」
「はぁ?何言ってるんだお前まで⁉︎」
「アンタの事だから私に気を遣ってくれてるんでしょ?大丈夫よ。もしここで諦めて他の男にシエスタが抱かれるくらいならギラがいいわ。」
「イズミ……」
「本当にいいのか?」
「ええ、子供も私たちが見るわ。それが責任だもん。」
「話は纏まったかしら?」
「「「はい。」」」
こうして話は纏まった。帰りの馬車ではようやく幸せが掴めるとイズミさんとシエスタさんは泣いていた。そして馬車を運転するギラさんも涙を浮かべているのだった。
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