第40話 相談
翌日ギラさんとシエスタさんがやってきた。
「いらっしゃい。」
「こんにちはセレンさん。イズミいる?」
「イズミさんなら今は出かけていますが。」
「そう、どこに行ってるか知らない?」
「そうですね。今日はレナも一緒について行ってるので港町の方かと。夜には帰ってくると思いますが。」
「そう。じゃあイズミが帰ってくる前に話し合いをしましょう。」
「そうですね。よろしくお願いします。」
私がお辞儀をするとギラさんが慌てて止めた。
「おいおい、セレンさんが頭下げないでくれよ、俺たちの方が迷惑かけてんだから。」
「そうよ!私たちの為ありがとうね。セレンさん。」
とりあえずこれでイズミさんの一人相撲は止められるだろう。
私はとりあえず私とレナの部屋へ2人を案内し、ミスズさんがお茶を持って来てくれる。そして話を始めた。
「それで。イズミはなんで1人相撲してるんだ?」
ギラさんは至極まともな質問をしてくる。当たり前だ。
「どうしても1人で片付けたい。それだけしか言わないのですが。恐らくギラさんに迷惑かけたくないんじゃないですか?」
「迷惑?なんで迷惑なんだ?」
「恐らくギラさんにシエスタさんをすでに守ってもらってるのにこれ以上迷惑をかけたくないんじゃないですかね?」
「あー、それはあるね。あの子負けず嫌いの独りよがりのとこあるからね。」
「正しく今じゃねーか!」
シエスタさんの言葉に盛大にツッコミを入れるギラさん。この2人もいい夫婦なのだろう。
「じゃあどうしたらいいのでしょうか?」
「決まってるじゃない!もう真っ向から手伝わせてって言うしかないでしょ。」
「……やっぱりそうなりますよねー……」
もうこれは仕方ないと思ってました。何故ならシエスタさん自体が匙を投げているのですから。
話が終わったので後は雑談タイム。出来ればイズミさんの弱みを聞き出して交渉材料及び後で叱られそうになった時の逃げ道を作っておきたいのだ。
そして日が暮れる頃にイズミさんとレナ、そしてリザも帰ってきた。どうやらリザは帰り道で出会ってそのまま乗せて帰って来た様だ。
「セレン様!ただいま戻りました!」
「ただいまです!」
リザは足元に抱きつき、レナは体全体を覆う様に抱きしめる。2人に愛されて幸せである。
「はいはい、2人とも手を洗ってきなさい。」
「「はーい!」」
「セレンさんの所は大きな子供と小さな子供がいるわね。」
「ええ、出来る事なら大きい大人はもう少し親離れしてほしいですけどね。」
シエスタさんがクスクスと隣で笑っているので私は苦笑いをしながらやれやれという感じで答えた。
「あれ?シエスタ、今日来るなんて言ってたっけ?」
「俺もいるぞ。」
「あれ?ギラも?どうしたのよいきなり。」
「アンタが独りよがりになってるって聞いたから来たのよ。私の家まで行ってるそうじゃない。なんで言ってくれないのよ!」
「な、なんで知ってるのよ!まさか昨日レナがいなかったのは……」
「そうよ!レナちゃんが教えに来てくれたのよ!」
するとたった今戻ってきたレナをキッと睨みつけた。
「レナ!なんで余計な事言うのよ!」
「手紙を書いたのはセレン様です!」
なんと、レナが裏切った。
(余計な事を……)
(逃がしませんよ……)
これで後で叱られるのは確定。
「2人はイズミを心配して連絡くれたのよ。2人を怒るのはおかしいわ!」
「そうだぞ。今のお前にはシエスタを返せない。まずは冷静になれ。」
ギラさんにも言われてイズミさんは深呼吸をした。
「はぁ……確かにこのままやっても埒が明かないのは薄々感じてた。でもね。ギラにこれ以上迷惑かけたくはないの。本当は私たちの問題なのに。巻き込んでしまっているんだもの。」
「俺は巻き込まれたなんて思っちゃいないぜ。自ら巻き込まれに来たんだ。お前らの幸せを願ってだ。」
「ギラ……」
「あと一踏ん張りじゃねぇか。一緒に連れて行ってくれや。お前さん達の夢が叶う場所までよ。」
「……ありがとう。」
涙ぐむイズミさん。そして横からシエスタさんが肩を寄せる。
「でも、頂上に登るのは私とイズミであってギラはその一つ下よ。」
「分かってるよ!俺はお前らを見届けるまでだよ!」
しっかりと念を押すシエスタさん。しっかり者だ。
ここまで読んで頂きありがとうございました。次回もお楽しみに!
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