第4話 別れ
「あなたここ一月休みがなかったわね。」
「ええ、まぁ……」
私は私の衣類を整理しているレナにそんな疑問を投げたところその通りだった。
「明日と明後日お休みを与えます。」
「えっ!?」
私の言葉に驚くレナ。当然だ。私の思いつきだから。
「でも、明日は……」
「いいから!休みなさい。事情は私からカレンに伝えておくわ。」
「うっ……は、はい……」
「たまには両親に顔を出してあげるのも親孝行よ。レナは今いくつだっけ?」
「19です。」
「私は今年16だから3つ違うのね……早く結婚しないと行き遅れになるわよ。」
「そうですね。早く結婚しないとですね……」
どこか寂しそうに言うレナ、そして私も何故か言ってて寂しくなった。だけど気にせず私はレナの頭を撫でてあげる。
「あなたはしっかりしてるわよ。私が保証してあげるわ。」
「ありがとう……ございます……」
さっきより寂しそうな顔をするレナ。私はこれ以上レナの寂しそうな顔を見たくなかった為、部屋から退出を促す。
「さぁ、話は終わりよ!部屋にお戻りなさい。」
「は、はい。」
そうしてレナは部屋を出て行くためドアノブに手をかけた。
「セレン様……」
「何?」
「……いいえ、おやすみなさい。」
「はい、おやすみなさい。」
お互いに睡眠前の挨拶を済ませてレナは扉を閉めた。
「……ありがとうレナ……」
ドアが閉まる直前に私はボソッとレナにお礼を言った。これがお別れだと思ったからだ……
3日後……私がセレン様の部屋へいつも通り洗面器にお湯を入れて向かうと部屋には何もなかった……
「セレン様……?」
「あー。レナおかえり。」
私の後ろには友人のセイが居たので挨拶そっちのけでセレナ様の事を聞く。
「あの……セレン様は?」
「あーあのわがまま姫?あの人ならお城を追い出されたわよ。」
「えっ!どうして?」
「その事については私が説明します。」
「「シュウラ様!」」
彼女はセレン様の妹君である。そして私はこの2日の事を聞く事になった。
2日前……それはセレン様の16歳の誕生日だった。そしてセレン様の婚約日でもあった。
今は謁見の間にて父上と私だけで面会していた。
「セレン、お前の婚約は無くなった。」
「そうですか。」
「残念である。お前が幼子の頃は聡明であっただけに非常に残念だ。」
「お戯を。私は幼子の頃から愚者でしたよ。」
私は愛想笑いを浮かべて父上を誤魔化した。
「まぁ良い、お前にはこの城を出て行ってもらう。」
「おや?何故ですか?」
私は内心喜んでいたがとぼけた調子で理由を聞いた。
「それはお前の妹であるシュウラに婚約の申し出が出たからじゃ。」
「そうですか。つまり私がいると邪魔なのですね。」
「そう言う事だ。明日にはここを発て。」
「おや、あの子はまだ14です。婚約は16からしか出来ないはずですが?」
「察してくれ、お前の悪名は今や国中の者が知っている。そんな者をここに置いておいてはいずれ反逆が起こる。」
「つまり私にのたれ死ねと……?」
「身から出た錆だ。自分でケジメをつけよ。」
「分かりました。では2つだけ条件を。」
「申してみよ。」
「1つ目は私の貯金は持って行ってもよろしいかしら?」
「それは構わん。お前の金だ好きにせよ。」
「ありがとうございます。2つ目は侍女のレナについてです。」
「お前に仕えてた侍女か?」
「はい、あの者への給金を上げて頂きたいのです。」
「なんだと?」
「私の様な面倒な人間に仕えていてくれたのです。当然の配当では?」
「自覚があるのなら治さんか馬鹿娘!だが、それはワシの一存で決める事ではない。だから諦めてくれ。」
まぁそう言われるとは思っていたので交渉材料を持って来ている。
「父上はこの前とある名門伯爵家に向かわれましたよね?」
「なんだ急に……」
「そこでとある夫人と密会していたとの情報がありましたが?」
「な、何のことかわからんのだが……」
額に汗をかいてる辺り図星らしい。嘘が下手だ。
「……わかりました。では、証人2人を母上の元へ連れて行きましょう。あとは夫婦でのお話合いになりますが……」
「分かった、進言はしておく。だが、出来なくても恨むなよ。」
「安心して下さい。既に侍女頭と母上には話を通してあります。お2人とも快く納得してくれましたから。」
「……お前は一体何人の弱みを握っておるのだ……?」
「人聞きが悪いですね。脅しを使ったのは侍女頭の方と父上だけですよ。母上は直ぐに納得してくれましたので。」
私は満面の笑みで父上に言い放つと父上は苦虫を噛み潰したような顔となっていた。
「では、そろそろ失礼します。」
「早くどこかへ行ってしまえ!」
相当不機嫌になってしまったらしい。私はお辞儀をして最後に一言……
「父上……」
「なんだ、まだ何かあるのか?」
「16年間、こんな私を育てて頂きありがとうございました。母上と末永く幸せにお過ごし下さい。」
父上はポカンとしていた。そして何かを言われる前に私は部屋を出た。廊下を歩いていると誰かがかけてくる足跡がした。
「お姉様!」
「あら、シュウラ廊下を走っていると母上に叱られますよ。」
息を切らせて顔を真っ赤にしている妹に優しく注意する。いつもは私がされていた事を。
「聞きましたよ。お姉様このお城から居なくなるって!」
「あら、耳が早いわね。誰から聞いたの?」
「母上です!私、今からでも父上に進言してきます!お姉様だけに……」
私はその先を言わせない為に人差し指でシュウラの唇抑えた。
「良いのよ。私が撒いた種だから。それに私はあんな男大っ嫌いだからね。」
「だからって、追い出される事ありませんわ。」
目に涙を溜めて言うシュウラは本当に良き妹だ。だけどここで未練を断ち切らないとこの子の為にならない。そして視界に侍女が入ったので厳しい言葉で放つ
「私、あなたのそういう所が嫌いなのよ!」
「えっ?」
「泣けばなんとかなる。そういう考えじゃ国は纏められないわよ!」
「そんなつもりじゃ……」
「いい、二度と私と顔を合わせないで!さようなら!」
そうして私は早足で部屋へと戻った。妹に私の泣いてる顔なんてもう見せたくないから……
翌朝……レナではない侍女が部屋へと入ってくる。いつもより熱い湯だ。だけどもう引っ叩く必要はない。これが最後だから。
「あなた、侍女のレナとはお知り合いかしら?」
「ええ、親しいですが……なにか?」
私は机の上に昨日書いたレナへの手紙をその侍女に渡した。
「これをレナに渡して下さいますか?」
「ええーっと……ご自身で渡された方が……」
「ふふふ。ごもっともね。」
引っ叩かれると思っていたのか私が笑っていたのをキョトンとした顔で見ていた。
「でもね。無理なの。私があの子に会う事はもうないから。だからお願い。この手紙をあの子に渡してくれない?」
「は、はぁ……わかりました。」
そう言うと侍女は手紙を懐に直し、洗面器を持って部屋を出て行った。そして私はお城を後にする。見送りはいない。お城の門番にお礼を言うと城下町へと向かう。そこで必要な物を買って旅の準備をする。
(おばさんに一言言っておこうかしら……いや……やめておこう。)
今はもう夕暮れ。この時間から飲食店は大忙しだ。迷惑になる。
なので私はそのまま城下町から南に出ている馬車に乗りこの地を去るの事にした。馬車の荷台から外を見た。するとそこにはレナがいた。
「レ……」
呼ぶ訳にはいかない。もう私はこの国の姫ではないのだ。あの子にも仕事がある。ここで呼ぶ訳にはいかないのだ。それに……言いたい事は全て手紙に書いた。これであの子はまた平穏な生活になるんだ……私に付き合って地獄にくる必要はないんだ。
そうして私は馬車に揺られて次の町へと向かうのだった。
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