第34話 母様が来た
リザの里親となって1週間後……母上がクレアと共に私たちのもとへやってきたのだった。
「久しぶりね。セレン。」
「母様!どうしてここに⁉︎」
「どうしてって、あなたが手紙をくれたのでしょうが。」
「そうですが、まさかここに来るとは……」
いつものサンセットで密会するつもりだったので私は驚いていた。
「今回の件は国として大変良くない案件です。そんな話を外でするわけにはいきません。」
至極まともな解答だった。
「それに、久しぶりにミスズさんともお話ししたかったのよーミスズさんはいるかしら?」
かなり不純な理由もあった……
とりあえず私は家の中に母様を上げた。中にはミスズさんとイズミさん、そして休憩中のレナとリザがいる。
「あら、お久しぶりねーレイナ様。」
「久しぶりねー、手紙はちょくちょく貰ってたけどこうやって話すのはいつ以来かしら……」
レイナとは母様の名前だ。この2人はどうやら名前で呼び合うほど仲が良くなっていたようだ。
「そして、そちらがリザさんかな?」
そういうと母様はリザの前に膝をついて挨拶をした。
「初めまして、セレンの母のレイナです。」
「は、はじめまして、リザと言います。よろしくお願いします。」
「まぁ、しっかり挨拶出来るじゃない!セレンが9歳の時は人見知りでもう苦労が……」
「ストップ!それは置いといて今日は何のようなのですか?」
私が無理矢理話題を切ると、レナがはやしたててきた。
「ええー、なんですか、聞きたいです!」
「私も聞きたいわ。」
「イズミさんまで⁉︎」
レナはクレアがいないからと調子に乗っているので後でお仕置き確定。でもまさかのイズミさんまで聞いてくるとは……これは恐らくこの前のシエスタさんとの過去を聞いたからの仕返しである。その証拠に口元が少し緩んでいた……
「まぁ話してもいいけど、その前にリザちゃんの話ね。」
なんとか話題逸らしには成功して一安心する私。
「まず、今回人身売買に関わったグループはどうやら一筋縄ではいかない様です。」
「はい?」
「盗賊たちがやってたというわけではないと?」
イズミさんの言葉に母様は頷いた。
「どうやら裏で貴族が糸を引いていたみたいね。」
「はぁ⁉︎どこの貴族ですか!」
「現在調査してるわ。ただ近衛兵、騎士団の諜報部からの情報だと、他国にも網があるらしいわ。だから国家間で調べをしていくみたい。」
「あの無能王に出来るのですか?」
「女ったらしではありますが、その辺りは問題ないわ。後ろにはシュウラも私も先王もいるのですから。何より信頼が下がってる今、この事件を解決して何としても信頼を取り戻そうとしてるみたいよ。」
なんかアイツの得になるのは些か気に食わないけど、これ以上リザみたいな子がでないのであれば致し方ないと納得する。
「まぁそのせいでシュウラとクレアは来れなかったのだけど……」
「えっ?」
「シュウラは今も情報を集めてるわ。その補佐にクレアも付けたの。人が全然足りないの。」
「そんな中で来てくれたのですか?」
「ええ、でもここからが本当に伝えなければならない事があったからね。」
そういうと母様はリザの方を向いた。
「リザさん、あなたのご兄妹は3人は亡くなっていたわ……そしてリザさんあなたも亡くなった事になっていたわ。」
それに対してレナは驚きの声を上げる。
「えっ、えっ、どういう事?だってリザちゃんは生きてますよ?」
「レナ、母様が言ってるのは戸籍上の話よ……」
「えっ?」
「戸籍ってね。生きてる人に対して国が与えてるものなのよ。その中には何歳になったから学校へ、そして大人になれば税金って形で国がその人の事を知る為のツールなのよ。」
「う、うん。それで……」
「でもね、死んじゃうとその戸籍も消えちゃうの。そうなると国はもうその人をいない者と判断するのよね。」
「つまり?」
「つまり、リザちゃんはこれから学校にも行けないし、仕事もこの国の人って証明もできないから仕事も受けれないのよ。」
「ええ!何でそんな事に?」
「簡単よ、この子を奴隷にするためよ、奴隷には何の権利もない、おまけに逃げ出したとしても社会復帰できない様にする為よ、そうすれば戻って来ざる終えないから。」
「ひどい!ひどすぎます!」
「ええ、だからこの犯人たちは全員死罪にします。関わった末端まで全てです。これが国家間での総意です。そしてリザさんには新たに戸籍を作って貰います。それを説明する為に今日は来たのです。セレン、やり方は分かっていますね。」
「えっ?確かに知ってますが私がやってもよろしいのですか?」
「ええ、これを渡しておきます。何か言われた時はこれをお見せなさい。」
母様が渡して来たのは1枚の紙だった。そこには……
「これは……王家の印と私の名前と母様の名前……」
「これを見せれば役所であなたは私の娘であると証明されます。大切に保管しておきなさい。」
「かしこまりました。」
「王家の印は決して偽造は不可能となっています。何故ならこの印の模造品を作った。それだけで死罪だからです。そしてこれは王家の者にしか渡しません。その重みを重々承知しておきなさい。」
「謹んで、受け取ります……」
王家の血を引いてはいる……だけどこの重圧は凄まじかった。
「さて、重たい話も終わった事だし、セレンの昔話でもしましょうか。」
私の重責を他所にいきなり母様は楽しそうにそんな事を言い出した。まぁ重い話の後だから仕方ないと思う私……しかしこの後私はこの判断をすごく後悔しました……
ここまで読んで頂きありがとうございました。少し暗い話になりましたが次回もお楽しみに!
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