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第33話 疑い

 3日後、また私とレナとリザとイズミさんは憲兵の屯所にきていた。今日の目的はリザの引き取り手続きだった。そのためにレナを連れてきたのだ。


「それじゃあ君たちが里親になるんだね。」


「はい。」

「ええ。」


 レナと私が返事をすると憲兵さんは次にリザの方を見た。


「お嬢さんはこの2人で良いのかい?今なら孤児院は空いているよ?」

「私はレナさんとセレンさんと一緒にいたいです!」


 どこかこの憲兵さんは私たちを信用していない様だった。


「あの……何か言いたい事でも?」

「いや、出来過ぎてると思ってね。」


「まさか、私たちがこの子を攫って洗脳したとでも?」

「そう思われてもおかしくないだろう。たまたま君たちの畑にいた少女が人買いに売られてその人買いを自分たちで追い返してる。おかしいと思わない方がおかしくないかい?」


 どうやら私たちをあの人買いの仲間と思ってる様だ。


「あの、その言い方は失礼じゃないですか?」

「おや、本当の事を言われて怒ったのか?そんな怒りっぽい性格で子供を育てられるのかな?」


「ちょっと!何ですか、先程から失礼な事ばかり。私たちは人買いなんてしませんし、この子を助けたのも偶然です!」


 珍しくレナが声を荒げた。だけどそれは……


「そうやって声を荒げるというのは動揺の現れだね。君、本当にこんな人たちに育てられたいの?」


 こんな感じになるのだ。レナはまだまだこの辺りの駆け引きが出来ないのだ。それを分かっているからイズミさんは先程から黙っているのだ。そして私も冷静さを装っている。


「あの、私たちはここに手続きに来たんですが、事情聴取でしたらまた日を改めさせて頂きますか?」


「ほう、それは口裏合わせの為かな?ならば帰すわけには行かないな。」

「事情聴取ならば民の任意のはずです。私たちが断るのはおかしくありません。それよりあなたこれ以上私たちを侮辱する様でしたらこちらにも考えがありますよ?」


 私の鋭い視線に少し引いた様子だったが、ここで今まで黙っていたリザが声を出した。


「お姉さんたちは悪くないです!私はレナさん、セレンさんイズミさん、ミスズさんに沢山優しくして貰いました!お姉さん達を悪く言うな!」


 最後の方は泣きそうになりながらも叫んだリザに私は泣きそうになりました。こんな風に思われていたなんて思っても見なかったのだ。ならば私たちはこの信頼に応えなければならない。


「この子の言葉を信用しないのですかね憲兵さん?」

「ちっ……その内尻尾を掴んでやるからな……」


 ボソッと言った一言に私は冷たく圧のある言葉をかけた。


「あなたにはこの仕事は向いていませんね……」

「なんだと?」


 いきなり憲兵は声を荒げた。


「あなたは人のあらを探して人を疑っています。憲兵は疑うのが仕事ですが、今回私たちはリザさんの里親となる為の手続きに来ただけです。それを疑うだけ疑い手続きを全く行っていません。」


「そ、それは……」

「更には私たちへの侮辱行為、こんな事を他の方々にもしてるのであればこれは報告しなければなりません。」


「ほ、報告だと、小娘風情に何ができると?」

「まだ気が付かないのですね……残念です。」


「な、何を……」

「私の名はセレン、クレンセ王国の姫、シュウラの姉です!」


「なっ!」

「今回のことはあなたの上官、及びお城の近衛隊隊長にも報告させて頂きます。裁きは追って伝わるでしょう。では、ごきげんよう。」


 私たちは踵を返して屯所を出た。後ろでは何かを言ってる憲兵がいたが全部無視した。




 その数日後、家に屯所のお偉いさん達が謝罪に来た。その中にはあの時の人もいた。もう憲兵ではない一般人になったが頭を丸められて土下座していた。自分の年の半分もいかない娘に頭を下げなければならない。なかなかの屈辱だろうが身から出た鯖だろう。死罪にならなかっただけマシだろうが……


 でも、これでようやくリザの里親となる事が出来るのでした。

 ここまで読んで頂きありがとうございました。次回もお楽しみに!


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