第30話 イズミの過去
「イズミとシエスタは学生の時から知り合いだった。それで俺もこいつら2人の事は知っていたんだ。」
「そうなんですね。」
どうやらイズミさんとシエスタさんは学生時代からの知り合いらしい。私とリザは黙って聞いていた。
「まぁコイツらが特別な間柄なのは俺でも分かっていた。その証拠にコイツらはよくこの店に遊びにも来てたんだ。」
「懐かしいわね。15歳くらいだったっけ?」
「そうだな。その後すぐにお前さんの親父さんが亡くなって家を継いだんだよな。」
「あの、イズミさんとシエスタさんは付き合っていたのですよね?何故結婚までしなかったのですか?」
私は疑問に思った事をそのまま質問した。
「それは……」
「あの子の親が認めなかったのよ。ちゃんと結婚して世継ぎを産めってね。」
言い淀んでいたギラさんに代わってイズミさんがスパッと答えた。
「セレンさん達は周りが理解してくれた。でも私たちは違った。理解してもらえなかったのよ。」
そうなのだ。例え好き同士でも一緒になれないことなんて男女ですらあるのに同性同士がそんな簡単に認めて貰えない事は当たり前だった。私たちは上手くいき過ぎて失念していたのだった。
「……お姉さんたち可哀想……」
黙って聞いていたリザもこんな言葉を漏らすのだから当の本人たちは更に辛かっただろう。
「いっそ、私たちだけで遠くに行こうとも考えたわ。でもね。私が消えたらレナと母さんがと考えるとそれは出来なかったの……」
凄く寂しそうに語るイズミさん。
「だから、俺がシエスタを一時預かっているんだよ。」
「えっ?」
そこへまさかのギラさんが出て来たことに私は驚いた。
「さっき言ってた通り俺はシエスタと結婚はしている。だが世継ぎを産む予定なんてさらさらないんだよ。」
「な、何故ですか?」
「なんでって……アイツの隣はイズミって知ってるからな。だからシエスタの親が死ぬまでシエスタは俺が一時的に預かる事にした。そうすればアイツの親は安心は出来るだろう。その後俺はイズミにシエスタを返すって約束してるんだ。」
「なんでそこまで……?」
私はギラさんがそこまでする理由が分からなかった。
「お嬢ちゃんは若いからわからねぇーか。損得じゃねーんだよ。好きな奴には好きな所に居て欲しいんだ。本当に好きな奴の隣によ。」
ギラさんは少し遠い目をしていた。恐らくギラさんはシエスタさんの事が好きだったんだろう。でも、好きな人の為に好きな人を諦めたんだ。それでその人の恋が上手くいく様にと協力まで……めちゃくちゃ良い人だ。
「まぁ、いつになるかわからねぇーけどな。」
「そうね。だからシエスタの事お願いよ。」
「任せておけ。」
そう言って笑うギラさんはかっこよく見えました。そして話を終える頃シエスタさんが戻ってきた。
「お待たせ!何の話をしてたの?」
「ん?アンタの恥ずかしい昔話よ。」
「はぁー?何を話したのよ!」
「教えないわよ。」
「教えなさいよ!」
「やーだよ!」
2人が戯れあってるのを見て幸せそうにするギラさんはなんて言うかカッコいいです。
「どぉだ?」
「美味しいです!」
「美味しい……!」
ギラさんが作ってくれたランチは凄く美味しかった。サンセットのサニーの料理に引けを取らないレベルだ。そして何よりリザが今まであまり感情を面に出さなかったのに料理を食べて笑顔になっていたのだった。
「でしょー、顔に似合わず美味しいのよここは。」
「ええ、顔に似合わずね。」
「うるせぇーよ。」
この3人は本当に仲がいい様だ。イズミさんも家ではクールだけどここでは気兼ねなく話してる様に見えた。そしてランチを食べてお客さんが増えてくる前に私達は店を出た。
「「ご馳走様でした!」」
「おうまたおいで!」
「じゃあまた近いうちに来るわね。」
「ええ、待ってるわ。」
こうして私たちはギラさん達の喫茶店を後にした。
「ごめんなさいね。ギラ、あなたを利用してしまって……」
「いいって事よ。俺はお前とイズミの幸せそうに笑ってるのを見てるのが好きなんだ。その為なら協力は惜しまないさ。」
「……もし、イズミちゃんがいなかったらあなたと一生を添い遂げてたかもね。」
「俺はもしもの話は嫌いなんだよ。じゃあ今日も店を頼むぜ、シエスタ。」
「ええ、任せてよギラ。」
お待たせしました。ここまで読んで頂きありがとうございました。
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