第29話 ランチ
「ここよ!」
「ここは喫茶店ですか?」
「そうよ。高級店なんて行かなくてもここで充分美味しいランチが食べられるわ。」
外観を見ると城下町にあるサンセットを思い出す。確かにこういうところの方が美味しいのだ。実際私はお城で出される料理よりサニーが作ってくれるランチの方が美味しいと思っている。
「さぁ、この時間ならまだお客さん少ないから行きましょう。」
そう言うとイズミさんは店の扉を開けてくれた。そして中には筋肉質なおじさんと美人な女性がいた。
「おや、イズミちゃんじゃん!久しぶりだな!」
「おっす!お久しぶりですねダンナ!」
(めちゃくちゃ口調が男の人だー!)
普段と違うイズミさんに私は度肝を抜かれた様に驚いてしまう。
「おっ、今日はレナちゃんじゃない人を連れてきてるね。」
「ひょっとしてイズミちゃんの彼女か?」
「残念ながら、この子はレナの嫁よ。」
「へぇー、あのレナちゃんの!こりゃ盛大に祝ってやらねぇとな!それじゃあその子はレナとの……」
いかがわしいことを考えていた亭主に美人さんが持っていたお盆で店主の頭を引っ叩いた。
「アンタ!お嬢さん達の前で何いやらしい事考えてるのよ!ごめんなさいね、この人根は良いけどデリカシーがないのよ。改めまして、私はこの喫茶店のウエイトレスをしてるシエスタよ。そしてこっちが店主のギラ。私の旦那でもあるから気分を悪くした時は言ってね。」
「は、はぁ……」
私はあまりの衝撃に自己紹介もせず空返事をしてしまうのでした。
……気を取り直して私は自己紹介をした。
「ええっと……セレンと言います。レナの嫁です。」
「きゃー、女の子同士で結婚⁉︎いいな、いいな!」
シエスタさんは凄くテンションを上げていた。そして私達の事を詳しく聞かせてと言ってきたが、そこは亭主のギラさんが止めてくれた。
「おいおい、そういう話はまた今度にしな、それでイズミたちはメシを食いに来たんだろ?」
「ええ、いつもの3つお願いね。」
「おう、ちょっと待ってな!」
そう言うとギラさんは厨房へと入っていく。シエスタさんはその間イズミさんとおしゃべりしていた。
「ねぇイズミちゃん。その子はどうしたの?」
シエスタさんはリザを見てこう言った。
「まさか!イズミちゃんの娘?」
「んなわけないでしょ!人身売買してる奴らが捨てた子よ。それでこの子の安否を確認に来た売人が家に来たからそいつらボコボコにして憲兵に引き渡したのよ。その事情聴取に来たってわけ。」
「そうなんだ。売人さん達生きてた?」
「なんでそっちの心配するのよ!」
「だってイズミって腕っ節は男の人顔負けだし。喧嘩も強いし、生半可な人なら死んでると思うよ。」
「シエスタ……遺言はそれでいいのね?」
「えっ……?」
まぁそこまでおっかない人にそんな事を言うんだからただでは済まないよね。と思う私。そうこうしてるとギラさんがランチを持ってきてくれた。
「あいよ。お待たせしたな。」
「おっ、来たね。」
「早いですね。」
「……」
「そっちの子にはデザートもつけておいたぜ。」
「えー、私たちには?」
「そりゃー、大人は別料金だ。」
大声で笑うギラさんについ私も笑ってしまう。
「あの……こんなに沢山食べていいの?」
「いいわよ。子供は沢山食べて成長するものよ。」
「そうよ、子供は遠慮しちゃいけないわ!イズミちゃんの奢りなんだから!」
先程イズミさんにゲンコツを落とされていた腹いせなのだろう。シエスタさんがリザに助言していた。この方は怖いもの知らずらしい。
「ちょっと、ギラ!これ大人用のフォークとナイフじゃない。子供用は無かったの?」
「おっと、いけねぇ。出してくるわ。」
「いいわ。私がとってくる。」
そう言ってシエスタさんは店の奥へと入っていった。
「凄く明るい方ですね。」
「あの子は明るすぎなのよ。疲れるわ。」
「何を言うか、アイツの元カノなのによ。」
「えっ?」
「ちょっと!」
「良いじゃねぇーか。セレンさんももうアンタの身内だろ。知ってて貰った方がいいだろ?」
渋い顔をしてるイズミさんをよそにギラさんは話してくれました。
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