第28話 調書
リザは泣き疲れて眠ったので私はレナの元へ戻ろうとしたが、部屋の外でレナが盗み聞きしていた。
「レナ〜盗み聞きははしたないと言ったわよね〜?」
「ひやーごめんなさい!」
私はレナの頬を摘み上げてお仕置きをした。
「ねぇ、セレン様。」
「なに?」
こめかみを揉みながらレナが質問してくる。
「それでリザちゃんはどうするんですか?」
「その話ね。盗み聞きしてたのに聞いてなかったの?」
「いえ、セレン様がリザちゃんにいかがわしい事をしない様に見張って……イテテ!」
「誰が誰にいかがわしい事するってー?」
「ひやああーごめんなさーい!」
とんでもない事を言うのでこめかみをグリグリしてあげた。くだらない思考をする頭には良いお仕置きだと思う。
「それでどうしゅるんですか?」
余程痛かったらしい。涙目で再度同じ質問をしてくるレナ。
「うーん。とりあえず憲兵さんの所へ連れて行って。あの子が孤児院に行くか、私たちが引き取るかを決めないとね。」
「親元には返さないのですか?」
「帰りたくないみたいよ。帰ったらまた売られるかもしれないから。あの子の兄たちも売られて行ったらしいからね。」
「なんですかそれ!」
まぁ怒るわよね。当然よ。私も聞いた時そう思ったもの。
「レナ、とりあえずお母様に手紙を出します。そこから近衛兵達を使って探させます。憲兵に内通者がいた以上これは国を上げて取り締まる必要があるわ。」
「そうですね!こんな犯罪を許してはいけませんよね。」
「まぁ、レナがやる事はリザの面倒を見るくらいで他に仕事はないんだけどね。」
「えー!じゃあなんで話したんですかー?」
私を責める様な言い方をしたので今度は耳を引っ張る事にしました。
「レナが聞きたがったんでしょうがー?」
「イタタ!ごめんなさい!ごめんなさい!耳はダメなのー!」
その夜に私はお母様達に手紙書いた。あの無能王を頼るのは癪だけど仕方ない。
次の日……
私とイズミさんとでリザを憲兵へと連れて行った。そのついでに手紙を配達員に渡した。急ぎという事で別途金貨を渡す羽目になったがやむなしだ。
「よし、調書はこの位でいいだろう。今日は帰っていいよ。」
「ありがとうございます。それでリザちゃんはどうすれば?」
「あぁ、君らの所に居たい様なら連れて帰っていいが、面倒を見切れないのならこちらで預かる事もできるぞ?」
憲兵さんがそう言うとリザは私の服の裾を掴んで離さなかった。
「面倒は見れるので連れて帰ります。」
「えぇ、4人もいるんだもの。見切れないなんて事はないわ。」
そう言って私はリザを抱き抱えてイズミさんと屯所を出た。
「リザちゃん疲れてない?」
「うん。大丈夫……」
そうは言うけれど目をしょぼしょぼさせているので疲れているのは丸わかりだった。リザなりの気遣いなのだろう。
「そっか。じゃあ何か食べて帰りましょうか。お昼も過ぎてる事だし。」
「そうですね。リザちゃんもいいかな?」
「うん。」
という事で少し早めのランチをするのでした。恐らくイズミさんは今お昼を食べさせておけば帰り道に寝ても再び起こさなくて済む様にと考えているのだろう。
「リザちゃんは何が食べたい?」
「えっ……!おにぎり……がいいです……」
「「えっ⁉︎」」
流石にこの答えには私もイズミさんも驚いた。
「えーっと……もっと良い物食べていいのよ……遠慮なんてしないで……?」
恐る恐るイズミさんはリザへと聞き返した。しかし返ってきた答えは悪い予想の方だった。
「ううん……おにぎりでいいです……お米を食べられるだけで幸せだから……」
それを聞いたイズミさんは頭を掻きむしるレベルで頭をかいた。そして……
「いいわ!それならとびっきり美味しい料理を出すお店に連れて行くわ。セレンさん行くわよ!」
確かに9歳になる子がおにぎり以外の食べ物を知らないのはいけない事だ。ここはイズミさんにお任せした方が良いと思うのでした。
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