第3話 初デート2
料理を待っている間、レナと話していた。
「あのサニーさんとはいつからお知り合いなの?」
「うーん……結構前からかな。子供の頃に母上に連れて来て貰ったのが最初かな?その後はちょこちょこ1人で来てるわね。」
「そうなんだ。」
「朝早くに来ればおばさん1人だから変に気を遣わなくていいってわけ。」
「なるほど。」
私がここに来た理由を伝えるとレナは納得した表情を見せた。すると調理室からおばさんが料理を持って戻ってくる。
「2人ともお待たせ、沢山食べてね。」
「「ありがとうございます!」」
おばさんはワンプレートにサラダと目玉焼き、ベーコンを載せてきた。そして別皿に焼いた食パンを持って来てくれた。
「あ、美味しい!」
「でしょー、おばさんが作る料理はこの国で1番だからね。味わって食べなさいよ。」
「はい!」
私たちは楽しく朝食を食べるのだった。
「「ごちそうさまでした!」」
「2人とも綺麗に食べてくれたわね。ありがとう。」
「残すはずないわよ。こんなに美味しいんだから!」
「そうですよー、久しぶりにまともな朝食でした。ありがとうございました。」
「そう言って貰えればこっちも作った甲斐があるってもんよ。お2人はこれからどちらに?」
「今日は買い物よ。必要な物を買いに行くの。あと、この子の私服探しね。私服が1着もないなんて言うんだもん。予定にはなかったけど買いに行くわ。」
(セレン様、私の事しっかり考えてくれてる……この方は本当にわがまま姫なのかしら?分からなくなってきました……)
「あの、私の私服はまた別日でもいいですよ?それよりセレン様の物を……」
「あん?」
レナがなんか私の計画にケチを付けて来たので睨む。
「いいのよ。アンタは私の言うこと聞いてなさい!あと敬語と様付けたから帰ってお仕置きよ!」
「うぐっ……す、すいませんでした。」
「とりあえず、今日の帰りに鞭を買って帰りましょうかね。」
「そんなー……」
(鞭なんて……どのくらい痛いのかしら……?)
「まぁいいわ。じゃあ帰りにまた寄るわ。」
「はいよ。またおいで。あー、レナちゃんちょっと!」
私が店を出ると後ろでおばさんにレナが呼ばれた。恐らく私に聞かれたくない事なので私は黙って外で待っていた。
「お待たせ。」
「遅いわね。何話してたの?」
「ふふふ。セレンが愛されてるって話だよ。」
何がおかしいのか分からないけど馬鹿にされた気分なのでレナの足を踏みつけるのだった。
「さぁ、先ずはここよ。」
「ここは?」
「小物店よ。アンタ、クシとか持ってないでしょ?私も新調するからついでに買ってあげるのよ。」
「いいのですか?ありがとうございます。」
「畏まらないでって言ってるでしょ!ほら、入るわよ!」
(あっ、少し頬が赤くなった。これは照れてますね。)
私はレナの手を引いて店に入る。店には客がおらず店員が2人しか居なかった。
「ほら、好きなの選びなさい。」
「ええー、どれも良いけど……」
レナが選んでる間に私は私の買い物をする。1つ目はクシ、2つ目はヘアゴムだ。ここでの買い物はこんなところである。私は目当てのものを買うとレナの所に戻る。すると……
「お客さま、こちらのクシは髪を良くすいてくれますよ。」
「あっ、いえ……私は……」
何やらうじうじと断る事が出来ないレナを見てなんかイライラしたなので……
「この子が困ってるから押し付けはやめて下さい。これとこれとこれ!会計してきて!」
私がまくし立てる様に言うと店員は渋々と下がっていった。
「ありがとうござ……」
ゴツンッ!
「あんなのすぐに断りなさい!全くもう。私が居なかったらどうなってた事か……」
何故かは分からないけどイライラしてレナの頭にゲンコツを落としてしまう私、何故か他の人と話してるレナが嫌だったのだ。
「ありがとうございました。」
店員に品物を受け取ると店を出る。
「あの、セレン……」
「何よ?」
「怒ってる?」
「……うん。よくわからないけど何故かイライラしてる。それでレナに当たったわ……ごめんなさい。」
「……セレンって本当はいい人?」
「はぁ?何よ急に!」
「いえ、確かにすぐに手を上げるし、私たちが分からないレベルの事を強要してきてましたけど……」
散々な言いようだな。間違ってないけどだが、堪えて次を促す。
「でも、他人の事をよく見てるよね。今回の買い物も私の事を考えてだよね?」
「な、何言ってるのよ、アンタのはついでって言ってるでしょ?」
私でも気づいてないことにこの子は気づこうとしている。そしてそれは恐らく今の私が気づいてはならない事だと直感的に理解した。なので……
「あーもう!この話は終わりよ、終わり!さぁ次の店に行くわよ!」
私は話を終わらせる事にした。半ば強引だが今はこの手しか無かった。
(なるほど……確かにおばさんの言ってた通りだ。)
『あの子の側に居てあげてね。へそ曲がりの所もあるけど、根はいい子なのよ。』
『はい、分かっていますよ。』
『やっぱりあの子は見る目があるわね。私もレナちゃんになら任せられるわ。あの子をお願いね。』
レナは先程のおばさんの言葉を思い出しながらセレンを追うのだった。
一通り見て回って今は城下町のはずれにある平原に来て座っていた。日が傾き始めていた為少ししか居られないがここに来たかったのだ。
「ふぅー、1日歩き回ったわね。」
「そうですね。セレンは疲れてない?」
「お生憎様、これでも騎士団長に鍛えて貰ってるからレナより体力はあるわよ。」
「そうなんだね。」
「ねぇ……レナ……?」
「はい?」
「今日は楽しかった?」
「えっ?」
「楽しかったか聞いてるの、早く答えなさい!」
「もちろん!楽しかったです。」
「そっか……」
私は何故か知らないけど口元が緩んだ。そして立ち上がる。
「そう。ならいいわ。じゃあ帰りにおばさんに挨拶して帰りましょう。ほら、手を貸して。」
「はい!」
私はレナに手を差し出した。そしてレナはその手を掴んだ。それが何故だかとても嬉しかった。そうして私たちは城下町へと歩きだした。お城に帰り着くのは夜になりそうだが、久しぶりに良い1日になった。
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