第27話 母性
イズミさんの殺気に私まで気圧されてしまった。そして次の瞬間イズミさんは男達の間合いに飛び込んでいた。そして蹴りを入れて1人の男を吹き飛ばした。
「このアマ!」
「ぶっ殺す!」
危ないと思い私も加勢に入ろうとしたけどそんな心配はいらなかった。何故ならイズミさんが1人の男を背負い投げしてそのまま纏めて吹っ飛ばしたのだから……
「凄い……」
あの細い腕のどこにそんな力があるのか分からないレベルで強かった。
「セレンさん、縄を持って来て、コイツら縛り上げて村まで連れて行くから。」
「は、はい!」
私は急いで縄を持って来て男たちを縛るのでした。
「さてと、あなた達が人身売買してた人たちかしら?」
「フンッ!誰が言うかよ……」
私はまだ状況が分かっていない男の太ももにナイフを近づける。
「な、なんだよやるのか?虫も殺した事も無さそうな顔しやがって!」
シュッ……
「ぎゃーー!」
「虫?よく殺してるわよ、花を食べる害虫は特にね!」
「うぎゃーー!」
イラッと来たのでとりあえず男の太ももナイフで薄く削り取った。
「さてと、話したくなるまで黙っててもいいけど、そのうち骨が見えてくるわよ。」
そうして私はなるべく薄く皮膚を削っていったが3度目の削りを始めた事で男は音を上げた。
「分かった!話す!話すからやめてくれ!」
「それじゃあ聞かせてもらおうかしら。まずあなた方は人身売買をしてるの?」
「俺たちは人身売買はしていない。その代わりに逃げた奴の回収や捨てた奴の死体処理をやってるだけだ。」
「あなたたち馬鹿なの?」
「えっ?」
「それは共犯者って言ってね。人身売買と同じ罪に問われるのよ。」
「そんな馬鹿な!」
「馬鹿はあなた達よ、しかもまだかなり悪質な事してそうねもう死刑は覚悟しといた方がいいわよ。」
私の言葉に男たちの顔は白くなるのだった。
こうして私が尋問しているとイズミさんが本物の憲兵さんを連れてきた。この人は顔見知りの為、確認の必要はなかった。
「すまないな。どうやら内部にコイツらのスパイがいたみたいだ。無論その男も捕縛している。」
「憲兵も一枚岩ではないのですね。」
「恥ずかしながら……それで例の子供は?」
「まだ眠っております。連れて行かれるのですか?」
「そうしたいが、今日はやめておこう。後日その子が回復した時に皆さんと一緒に来て下さい。その方が安心するでしょう。」
いかつい見た目の割に結構気が効いている。私たちは了承するとその日は憲兵たちは犯人たちを連れて帰って行った。
その日の夜リザと話をする事にした。
「リザちゃん。お母さんとお父さんたちの所に帰りたい?」
「えっ?」
「本当ならリザちゃんの両親はリザちゃんを売ったとして逮捕されてしまいます。でもリザちゃんが帰ったらその罪は見逃される可能性もあるの。どうする?」
「帰りたい……です。」
まぁ分かりきっていた答えだけども少し寂しく思えてしまう。レナが落ち込むのが目に浮かぶからだ。
「分かったわ。じゃあ明日憲兵さんのところへ行って……」
「でも!」
私の話してる途中でリザが遮った。
「本当は帰りたくない……私が帰ったらまた売られるから……」
「えっ?」
帰りたいと言ってたのにいきなり真逆の事を言うリザに私は戸惑った。
「私のお兄ちゃん達もどこかに行っちゃった……私も今こうなった。帰ったらまたどこかに連れて行かれる……でもここに居たらお姉さんたちに迷惑がかかる……だから帰らないと……」
リザは泣きながらそう言った。どうやらミスズさん達との会話を聞かれてたみたいだ。
「帰りたくないなら帰らないでいいのよ。」
「えっ?」
「この国には身寄りのない子を保護する孤児院もあるわ。他にも里親になるって場合もね。」
「私は……もう売られないの?」
「リザちゃん。あなたは道具じゃないのよ。本当は売る売られるなんて道具みたいな扱いされたらいけないんだからね!」
「私は……」
もう何かを言う前に私は抱きしめた。これ以上辛い思いをさせる必要はないのだから。
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