第20話 雪
一夜明けて私とレナはベッドの中にいた。
「レナ……」
「スー……スー……」
今日は更に北上するのだから早く起きなければならないのだが、レナはまだお眠の様だ。でも、昨日の失敗を繰り返すわけにはいかないので私はレナのおでこにキスをするとベッドから起き上がり身支度を整えた。
「今何時かしら?」
辺りは既に明るいが人の動きはあまりなかった。時計を見るとまだ朝の6時をまわった位だった。
「まだ時間あるわね……」
レナを起こすのはかわいそうなので、置き手紙を書いて少し散歩する事にした。
(朝から働き者ね……)
私が街を散策しているともう店を開けてある所も沢山あった。するとどこからか良い匂いがしてきたので匂いを辿っていった。
「いらっしゃいませ。焼き立てのパンがありますよー」
そこはパン屋さんだった。どうやら焼き立てのパンが出来上がったらしく店員さんは元気よく挨拶してくれた。
「おはようございます。朝早いんですね。」
「そうですよ。日が出てる時間が短いですからね。お嬢さんも1つ買って行きますか?」
「はい、では2つ下さい。」
私は焼き立てパンを2つ買ってから街を散策して宿へと帰った。
「ただいまー。」
「セレン様ー……」
部屋の扉を開けるとレナが泣いていた。そして私に抱きついてきた。
「な、何泣いてるのよー。」
「だって、起きたら隣にいないんだもん。また置いて行かれたのかと……」
「レナ……机の手紙見てないの?」
「ふぇ?」
この分だと見てない様だ。とりあえず私はレナの頭をグリグリした。
「レナを置いて行くわけないでしょーが!」
「あい……すみませんでしたー」
そうして私はレナを抱きしめて耳元で囁く様に話した。
「レナの事大好きなんだから……置いて行くなんてないわよ。」
「はぃ……」
そしてレナを解放してあげた。
「それじゃあ、朝食にしましょうか。焼き立てパン買ってきたからね。」
「でも、もう冷めてますよね?」
私はレナのほっぺたを摘む。
「誰のせいかなー?」
「はい、ごめんなさい……」
そうして朝食を食べた後、私たちは馬車に乗って更に北へと進む。
「お嬢さん達、そろそろ上着を着た方がいいわよ。」
他の乗客からこんな事を言われた。
「えっ?まだ晴れてますし。寒くありませんが?」
「この山道は標高が高くなるのよ。だから今のうちに着ておいた方がいいのよ。」
「そうなんですね。ご親切にありがとうございます。」
そうして私たちは服を重ね着した。空を見ると少し雲行きが怪しくなる。
「雪だ……」
運転手さんがポツリと呟いた言葉に私とレナは外を見る。すると本当に雪が降っていたのだ。
「セレン。雪が降ってますよ。」
「はいはい、落ち着きなさい。見てるから。」
私もテンションが上がるけど、レナと一緒にはしゃぐわけにはいかないのだ。
「着いたら雪遊びしましょうよー。」
同乗者の方は温かい目で私たちを見ていた。正直恥ずかしい……
次の町に着くとそこは一面の銀世界だった。
「凄い……」
「私……こんなに雪が積もってるの初めて見ましたよ……」
レナ同様私もこんな景色は見たことがない。
「セレン。散歩しましょうよ!」
「待って、その前に宿探しよ。荷物も置かないと。」
そう、町に着いたらまず宿探し。こんな雪の中で野宿など凍死してしまう。町の人に聞いて宿を決めると、荷物を置いて外へ出た。
「宿の部屋の中に暖炉がありましたね。」
「北国ならではよね。これで部屋でも暖かく過ごせるわ。」
「寒ければ私が添い寝しますよ?」
「ふふふ。それも良いかもね。」
私はレナの頭を撫でてあげるのでした。
それから手を繋いで町の人に聞いた高台に来ていた。高台には誰も居なかった。なので新雪を踏みしめて歩いた。ここまでの道には私とレナの足跡しかなかった。
「「おおー!」」
そこはまさに一面白い絨毯をひいた様に真っ白だった。森も町も雪に覆われていたのだ。
「来てよかったですね。」
「ええ、レナと来れて本当に良かったわ。」
空はどんより曇り空だがとても綺麗な景色だった。
ここまで読んで頂きありがとうございました。次回もお楽しみに!
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