第2話 初デート
私の発言に戸惑うレナ。なんかかわいい……
「えっ?急にそんな事言われても……」
「何?私の言うことが聞けないの?」
「そういう訳では……ただ先輩に許可をもらわないと……」
「ふぅーん。分かったわ。侍女頭に話を付けてくるから待ってなさい。」
「ええー⁉︎」
そう言うと私は部屋を出て侍女頭の元へ行く。
「あっ、居たわね。」
私は洗濯物を集めている侍女頭を見つけたので近くまで行く。背は私より高くメガネをかけている。この王宮では家族の次くらいに長い付き合いだ。
「ねぇ、侍女頭!」
「あら姫さま。なんの用ですか?それと私は侍女頭ではありません。クレアです。」
「あー、じゃあクレア。レナを今日1日借りるからレナの仕事やっといて!」
「はぁ⁉︎いきなり何を言い出すんですか!ダメに決まってるでしょ!」
「ふぅーん。私の頼みを断るんだー……この前母上のドレスを間違えて洗濯したせいで色落ちしたのを助けてあげたの誰かしらねー」
「ぐっ……」
「誰だったかなー父上のコーヒーに砂糖を入れたのは?そしてそれをかばってあげたのはだれでしたっけ?」
「あーもう!分かりましたよ!幸い人手は余ってるので好きにして下さい!」
「分かればいいのよ。」
部屋へと戻ろうとする私にクレアが一言声をかけた。
「セレン様が人の名前を覚えるなんて珍しいですね。」
「……そうね。でも毎日顔を合わせてたら覚えるでしょ?」
「私は覚えてもらってませんがね。」
「……忘れる事も多いのよ。」
私は振り返り部屋へと走って戻った。
(姫様はまだご自身の気持ちに気づいていらっしゃらないのですね……)
セレンの後ろ姿を見送ったクレアは仕事に戻るのだった。
私が部屋に戻るとレナが立って待っていた。
「了承は得たわ。部屋に戻って準備してきなさい。」
「ええー⁉︎」
「驚いてないで部屋に戻って私服に着替えて来るのよ!」
「いや……あの……」
「何、言いたい事があるならハッキリ言いなさい。」
「あの……私、私服が……」
「何、私服持ってないの?」
「……はい……ここに来る時に着て来た服はもうボロボロで……」
申し訳なさそうに言うレナ。まぁ侍女はあまり休みを貰えないと聞く。給金もその割に高くない。だから服など持っていないのだ。
「じゃあいいわ、私の貸してあげるからそれを着なさい。」
「そ、そんな畏れ多い事……」
「いいのよ!私が良いって言ってるんだから。それともあなたは叩かれないと動けないのかしら?」
「……分かりました。有り難く着させて頂きます。」
「分かればいいのよ!」
そして私はクローゼットから服を取り出した。
「レナは私より身長が高いから、これとこれ、あと帽子ね。」
「あの……よろしいのですか?こんな高価な物を……」
「いいわよ。私じゃぶかぶかだし。着らない服をずっと持っているより着られる人にあげた方が服も喜ぶと思うのよね。」
「はぁ……」
「ぼけっとしてないで早く行く!」
私はレナのお尻に蹴りを入れて部屋から追い出した。
(初めてお尻を蹴られた……なんか気持ちいい……)
しばらく部屋で待ってるとレナが着替えてやってきた。
「お待たせしました。」
「遅い!ほら行くわよ!」
私はレナの手を掴んでそのまま走ってお城を出た。外は青空が広がっていた。
「いい天気ですね。セレン様。」
レナの何気ない言葉に私は立ち止まり振り返って空いてる左手でレナの唇を抑える。
「外では様付けも敬語も禁止!」
「えっでも……」
「禁止!あくまでもお忍びなのよ。分かってる?」
「はぁ、はぁ……ではなんと?」
「呼び捨てでいいわよ。怪しまれない為にね。」
「それは畏れ多いですよー。せめてセレンさんに……」
「ふーん。私に逆らうんだー……」
私は繋いでる手を外して、レナの首を小脇に抱え、頭をグリグリした。
「イタタター!痛いです!」
「言う事聞くわよね?」
「は、はい分かりました!呼び捨てにします!」
レナが言う事聞いてくれたので私は解放してあげた。少し苦しかったのか顔が真っ赤になっていた。
(セレン様、凄くいい匂いした……痛いよりこっちの方が嬉しい。)
再びレナと手を繋いだ私は城下町へと走って行った。
「おおー、久しぶりに来たなー。」
「よく来られてたのですか?」
私は敬語になったレナをキッと睨みつける。後でお仕置きよっと目で訴える。そしてしまったという顔をしてるレナであった。
「ええーっとセレン……何か食べない?」
「……そういえば朝から何も食べてなかったわね。じゃああそこに行きましょうかね。」
そうして私は行きつけの定食店サンセットに行く。
「すいませーん!」
「はーい!」
私の声に反応してくれたのは女性店主である。
「あらあら、姫さまいらっしゃい。お久しぶりね。おや、今日は付き添いもいるのかい?」
「付き添いではないわ。私の友人よ。」
「姫さまにご友人……ついに、ご友人ができたのね……良かったわ!」
「な、なんでおばさんが泣くのよ⁉︎」
私が戸惑っていると、おばさんはレナへと歩みよる。
「あなたお名前は?」
「え?レ、レナと言います。よろしくお願いします。」
「レナちゃんね。これからもセレン様をよろしくお願いしますね。」
「は、はい。」
レナは勢いに負けて返事をしていた。だけどずっとは無理だと私は思っている。
「おっと、自己紹介がまだだったね。私は定食屋サンセットの店主サニーよ。よろしくね。」
「あっ、よろしくお願いします!」
レナとおばさんが握手していたけど、ここへ来たのはレナの紹介ではないので注文する。
「おばさん、挨拶はいいから朝食作ってくれない?お腹空いてるんだけど。」
「そうね。開店前に作ってあげないとね。」
そう言うとおばさんは調理室へ入って行く。そして私たちは席に着いて料理が出来るのを待っていた。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
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