15.5話 プロポーズ
1年前の話……ある朝起きるとレナが居なかった。
「ミスズさん。おはようございます。」
「あら、おはよう。今日はゆっくりで良かったのに。」
「いえ、レナが居なかったので……」
私は力無い声でレナの事を聞いた。
「あー、レナね。買い物があるとか言ってイズミと出かけたわよ。聞いてなかったの?」
「聞いてないです……」
私はとても寂しくなってしまう。いつも朝起きたらレナが隣で寝ている。それが日常だったからだ。
「そんなに遅くはならないそうだからそんなに心配しなくて大丈夫よ。」
「はい……」
心配もあるけど、何も言わずに出かけられたのが寂しかった……
それからお昼になっても帰ってこないレナに焦りを感じ始めた。
「あの……レナ達どこへ行ったか分かりませんか?」
「分からないわね。でも、馬車を使ってるから少し遠い場所かもね。」
待つのがこんなにも辛いと初めて知った。私がレナを置いてけぼりにした時もレナはこんな感じだったのかと思うと本当に申し訳なく思う。
「あの、ミスズさんはイズミさんが馬車で荷物を運んでる時心配なんかないんですか?」
何故か分からないけど聞いてしまった。答えなんて分かっているのに……
「心配してるわよ。でも、生活する以上は必要な事だもの。だから私はここであの子が帰って来るのを待っているのよ。そして帰ってきたらおかえりなさいと言うの。あの子のただいまを聞くまではずっと心配してるのよ。」
「……私は待つのが苦手の様です……」
「その様ね。セレンさんはレナの事好きなのよね?」
「もちろんです!」
私は間髪入れずに答えた。あの子がいなくなるなんて考えられない。
「それならレナの事を信じてあげなさい。」
「えっ?」
「それだけで少しは安心出来るものよ。」
「そうなんですか?」
「そうよ。私はイズミの事を信じてるもの。無事に帰って来てくれるって。」
(なるほど……)
ミスズさんに言われて少し納得すると同時に気休めだけど安心できてしまう。
「さぁ、お昼からはやる事があるから手伝って下さいね。」
「は、はい!」
お昼を過ぎても帰ってこないレナ達を心配してたがミスズさんが気を紛らわす様に用事を私にさせてくれた。ミスズさんなりの気遣いだ。おかげで夕方までは気が紛れるのだった。
日が沈む頃にイズミさんが帰ってきた。
「えっ?レナは……」
「ふふふ。セレンさん。レナを迎えに行ってあげてこの先にいるから。」
「えっ?イズミさんとレナ喧嘩したんですか?」
「まぁそんな所。だからあの子を迎えに行ってあげてくれない?」
私は違和感を覚えたが早くレナに会いたいから道を走って行った。
「あの子も幸せ者ね。こんなにも思って貰えてるんだから……」
「お互いに愛してるからこそ真っ直ぐ走れるのよね。」
「あ、お母様ただいま。」
「おかえりなさいイズミ。さぁ仕上げをするから早く手伝って。」
「はい!」
私は走った。早くレナに会いたい。その一心で。そうして走っていると声が聞こえた。
「セレン様!」
「レナ?どこにいるの⁉︎」
レナの声を聞いて辺りを見回した。すると白い花畑の中にレナが立っていた。
「レナ!」
私はレナへと走った。そしてすぐに抱きしめた。
「良かった……無事で……」
「セレン様泣いてます?」
「うるさい!心配したんだから……」
「ごめんなさい。でも今日この日じゃないとダメだったんです。」
私はレナを離して一歩下がった。レナは後ろ手に何かを持っていた。それを私に渡した。
「お誕生日、おめでとうございます!」
渡されたのは赤い花束だった。
「綺麗……なんて花なの?」
「アングレカムです。花言葉はずっとあなたと一緒にいたいです。」
「ずっと一緒……それって!」
「はい、私とずっと一緒にいて下さい。」
どうやらプロポーズされたらしい。これはつまり答えを返さなければならない。なので!
「それじゃあ結婚しないとね。」
「結婚!いいですか⁉︎」
「プロポーズしたのはレナでしょうが!レナが驚いてどうするのよ!」
「しょうでしたー……」
私はレナのほっぺたを摘むのでした。
「改めて、セレン様私と結婚してください!」
「はい!喜んで!」
私は返事と同時にレナにキスをするのでした。
そうして私たちはゆっくり歩いて帰った。帰るとイズミさんとミスズさんが私たちを迎えてくれた。そしてレナと結婚する事を話すと盛大に祝福されるのでした。
完結した翌日ですが、完結後に読んでくれた方が凄かったので15話と16話の間の話を書きました。読んでくれてる皆様へのささやかなお礼と思って下さい。
本当に読んで頂きありがとうございます!
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