最終話 終わりと始まり
3年後……
私は19歳、レナは22歳になっていた。私達はまだレナとイズミさん、ミスズさんと暮らしていた。そして今日は城下町まで来ていた。
「セレン様、見て下さいこの記事!」
「えっ?なになに?」
最近はシンブンという世の中で起こった事を紙に書いて伝えてくれるという物が出来た為、民衆はこれを楽しみにしている。かく言う私もその1人だ。
「あー……シュウラは相変わらずね。」
「この王様も懲りませんね……」
結婚当初は仲の良い夫婦と言われていたが社交場にてあのクソ王が他の女の人にちょっかいをかけてはその場でシュウラが殴る、蹴る、踏みつけるなどして締め上げていた。
「今回は馬乗りになって首を絞めてたって書いてますね。」
「直にこの人死ぬかもね……」
「「あはは!」」
「2人ともお久しぶりね。」
2人で笑いあいながら話していると当のご本人の登場である。
「久しぶり、あれお母様は?」
「今はお父様と北の国に旅行中よ。旅行と言っても視察も兼ねてらしいけどね。」
「そうなんだクレアも同伴で?」
「ええ、侍女も何人か付いて行ってるわ。身の回りのお世話と父上の監視も兼ねてね。」
「いいなー、私たちも行きましょうよ!セレン様!」
こういう話が大好きなレナは早速大はしゃぎである。
「はいはい、今年の冬にでもいきましょうねー」
「むー……」
私はレナを軽くあしらう。レナは不服そうだが仕方ない。今は私たちも花を育てて売っているのだから。寒くなる冬まではそんな暇がない。
「あなた達はどっちが年上か分からないわね。」
「ええ、面倒な妹みたいなのよ。私より歳上で身長高いのに。」
「良いじゃないですかー、セレン様も楽しそうですし。」
そうして談笑していると店の外に1台の馬車が止まった。
「ん?あれは……」
「あら?どうやら追いかけて来たみたいね。」
そうして馬車の中から現王様のブラウン様が出てきた。
「悪いが後をつけさせて貰ったよ。」
「その様ですわね。」
「ああ、だがこの際だ君とは離婚したい!」
街中にてのいきなりの話である。他所でやってほしい。
「あらあら、街中の定食屋でして良い事ではありませんよ。国王様。」
「いいや、この際はっきり言わせてもらう。君は性格が最悪だ!俺の自由を奪い、旦那を尻に敷く悪妻だ!」
「言いたい放題ね。でも、そしたらあなたはもうこの国の王様では無くなるわよ?」
「その心配はない。君の隣にいるセレンと婚約する。元々は彼女と結婚予定だったのだから俺が再びセレンと結婚すれば良いだけの話だ!」
(うわー……コイツやっぱり最低だ……)
「お生憎とお姉様はもうご結婚されてます。そこのレナさんとね。」
「ふん、そんな何処の馬の骨とも知らん女より俺の方がが良いに決まってる。」
私はレナの悪口を言われたのでスッと立って拳を固めて奴の横っ面を殴った。
「さっきから聞いてれば好き勝手言ってくれてるわね!私はあなたの事なんて大っ嫌いなの!二度とその顔見たくなかったわ!」
「お、俺を殴ったな!不敬だぞ!」
「そう!なら私を逮捕して縛り首にでもしたらいかがですか?そんな事をしたらあなたの評価はガタ落ちよ!今の一部始終全部見られてるんですから!」
私はレナの事を悪く言う奴は許さない。レナをいじめていいのは私だけなのだから!
「クッ……」
クソ王が黙っているとシュウラが間に割って入った。
「はいはい、お姉様、そこまでですよ。後は私に任せてください。」
「なんでよ!あと2、3発殴らないと気が済まないの!」
「いいわよ。お姉様がそこまでしなくても。これからこの人の足を切断しますので。」
「「「えっ?」」」
クソ王、私、レナ3人とも絶句である。そして周りの民衆は驚きを通り越して顔を青くしていた。
「私たちの楽しいひとときを壊したのです。もう2度と歩けなくした方が今後二度とこの様な事が起こらなくて良さそうだもの。お母様とお父様とも話していたのです。どうやったら彼の浮気癖が治るのかを。」
そうしてシュウラは持ってたナイフでクソ王の足に刺した。
「ぎゃあーーーー!」
「でも、こうして足を壊してしまえばもう歩く事が出来なくなりますね……」
「お、おいお前たちこの女を止めろ!このままでは俺は殺される!」
しかしお付きの兵士は微動だにしない。当然だ。この兵士もシュウラの息がかかっている。連れて来ただけでも後が怖いのにこれ以上余計な事をしては殺される羽目になる。それだけはごめんなのだろう。
そしてレナが私に耳打ちしてくる。
「あの……シュウラ様はこんなに恐ろしい方だったのですか?」
「レナは知らなかったわね……シュウラは怒ると手が付けられないのよ。今日のお茶会は御開きかもね。」
「残念です……」
ヒソヒソ話をしているとシュウラがこちらを向いた。
「お姉様、レナさん。」
「「は、はい!」」
「私たち、これから用事が出来たので今日は帰らせていただきますわ。」
「あ、うん……」
「皆さまも騒がせてしまい申し訳ございませんでした。お詫びに皆さんのお食事代は私どもが負担させて頂きます。それではごきげんよう。」
そう言うとシュウラは兵士にクソ王を担がせ馬車に連れ込んだ。
「あのセレン様、あの方どうなるのですか?」
「さぁ?でもあの子はやると言ったらやる子よ。」
「おや、何かあったのかい?」
奥からサニーが出てきた。
「ええ、まぁ色々と……」
「ふーん。まぁいいわ。ほら席について料理持って来たから。」
「う、うん。あ、サニー、お金は後でシュウラが支払いに来るらしいわよ。」
「2人の分かい?」
「いや、今店にいる人たちの分だそうよ。」
「そうなのかい?なんか悪いわね。」
「良いわよ。あの夫婦がやらかしたんだし。」
そうしてその日はサンセットで昼食と夕食を食べて帰宅するのでした。
数日後、家に戻ってた私たちはシンブンを見てやっぱりと思った。
「やっぱりやったのですね。」
「やっぱりやる子だったわ。」
記事には妻の逆鱗に触れ、足を失う王と書かれていた。絵から見るに膝から下を切り落とされた様だ。
「でも、殺さなかっただけ優しいですね。シュウラ様も。」
「何を言ってるのレナ?」
「えっ?」
レナは不思議そうな顔をしていたので教えてあげた。
「あの人これから移動の際には誰かに手伝ってもらわないといけないのよ。もう自由なんてないの。しかもシュウラには愛されてもいない上にあのクソ王も愛してないシュウラと一生一緒にいないといけないのよ。」
「あっ……」
「ある意味死ぬより地獄よ……」
「まぁ……セレン様も侮辱したからこその罰なのかもしれませんね。」
私はシンブンを畳むとテーブルに置いた。
「さぁ、暗い話はおしまい。私達は私達で生きましょう。」
「そうですね。ねぇセレン様、今幸せですか?」
「もちろんよ!レナと一緒にいられてるんだからね。」
「私もセレン様と一緒で幸せです!」
レナはそう言うと私の唇を自分のそれを重ねた。
「もう……甘えん坊ね。」
そうして私たちは庭園へと向かった。
「そう言えば、この花の花言葉は何でしたっけ?」
レナの言葉に私はツカツカとレナのところまで行きビンタした。
「何で忘れてるのよ!レナが告白の時にくれた花なのよ!」
「だってー!」
その言葉の先を言う前にもう1発のビンタが飛ぶ。
「アングレカム、ずっとあなたと一緒に居たい|でしょ!」
「そうでした。ずっと一緒ですよ!」
「全くこの子は……」
私は呆れながらもレナの頭を撫でた。この子はたまに叩かれたくてこう言う事をするのだ。
今日も……そしてこれからも私は幸せです。レナが隣にいる限り……
fin……
まずは先程の14話と15話の誤投稿すいませんでした。
そして、2週間お付き合い頂きありがとうございました!
これにてセレンとレナの恋物語はお終いです……と言いたいのですが、実は隠し球としてセレンとレナの旅行話がネタとして残しています。まだ書いてはいませんが…7話で書いていた船に乗っての旅行にしようかと考えております。
この最終16話を書いててレナにセレンと旅行させてあげたいなーとか考えてたのです。キャラに感情移入しすぎですかね?でも、私の中で一番頑張ってたのはレナだと思うんですよね。なのでこの子の望みを叶えたいなーと考えてる次第です。でも、キリが良いのでここでひとまず完結させて頂きます。
長くなりましたが、ここまで読んで頂きありがとうございました!百合物は沢山ネタがあるのでまた書かせていただきます。連載中の長編小説の方もよろしくお願いします!
最後になりますがこちらの作品気に入って頂ければブックマークと評価、またはいいねをよろしくお願いします。