第13話 バレる
お城にて……
「シュウラ、全て話してくれるわね?」
「……」
私は今、鬼の形相のお母様に呼ばれていた。理由は姉のセレンについてだ。隣では侍女頭のクレアがお茶を淹れていた。お母様は片手にムチを持っている。相当お怒りだ。
「あの子はある日から性格が悪くなり、手をあげる様な子になりました。そしてあなたは正反対のおとなしい子になりました。」
冷静に話しているがその言葉には静かな怒りが含まれていた。
「シュウラ……ダンマリですか?」
「あの……」
「まぁ話さないのなら良いでしょう。ならばここにいるクレアをこのムチで打ちましょう……」
「「えっ?」」
これには流石のクレアも驚く。
「あの……何故私なのですか?」
「そうです。この場合クレアではなく私の方では?」
恐る恐る私たちはお母様に尋ねてみた。
「簡単な事です。シュウラは誰かが叩かれてるのを見るのは嫌だからです。そしてクレア。あなたは私専属の侍女です。主人が困ってるのですから手助けするのが当然でしょ?」
暴論である。クレアに迷惑をかけるわけにはいかないので私は全てを話す事にした。だが、その前に聞かなければならない事がある。
「あの……何故今になってこの話を……?」
「そうね。あなた達が何か企んでるのは分かってたわ。こう見えてクレアからあなた達の事は逐一聞いていたもの。」
「はぁ……」
「そしてつい先日セレンに専属の侍女を就きました。わざわざクレアを脅してまでです。あの子は今まで弱みをネタに脅しをかけてきましたが、自分の為に脅す事は有りませんでした。基本他人の為です。」
「あの……お姉様は今まで専属の侍女はいなかったのですか?」
「いませんよ。セレンが要求しても侍女が断っていましたからね。」
確かに怒って手を上げる人に就きたい人はいない。つまりお姉様はずっと他に心を開ける人がいなかったという事だ。
「そしてその侍女はセレンを追いかけて行きました。なので思ったのです。そこまでして追いかける価値があの子にあったのかと……さぁ。私は答えました。次はシュウラあなたの番です。」
さぁもう逃げられない。私は懺悔する様に口を開いた。
「はぁ……」
私が全て話し終えるとお母様はため息を吐いた。
「全くあなた達ときたら!」
まぁ怒られるのは当然である。だが……
「……まぁあの人の事だから話したとしてもセレンを叱るだけで何もしなかったでしょうね……」
お母様の言うあの人とはお父様の事である。基本お母様はお父様の事をあなたと言うのだ。そして多少納得して貰えたので私はたたみかけ様とする。
「でしょー。だから私たちは……」
「お黙りなさい!」
お母様に怒鳴られて私は口を閉じた。
「とにかくセレンを連れ戻します。レナという侍女がサニーの所で情報収集してセレンを追ったと報告を受けてます。クレアはあの人に気づかれない様に兵を手配して下さい。」
「かしこまりました。」
そう言うとクレアは部屋を出て行った。私も全て話したので部屋を出ようとしたが……
「シュウラ、どこに行くつもりかしら?」
「えっ?全て話し終えたので部屋に戻ろうかと……」
「あら、あなたにはこれからお説教よ。肉体言語でね。」
背筋が冷たくなるお母様の笑顔……その後父が戻られるまで私はお仕置きされるのでした。
一方セレンはというと……
「セレン様、草むしりは根っこごと引き抜かないとまた生えてきますよ。」
私は今麦わら帽子を被ってレナと畑の手入れをしていた。
「仕方ないでしょ?初めてなんだから。」
「しょうがないですねー、私がお手本を見せてあげます。」
私は違和感なく生活に溶け込んでいた。初めこそ早起きには苦労していたがそこが慣れてしまえば普通の生活である。だが畑仕事なんかはまだまだ素人なのでレナに習いながらの作業である。
「ねぇ、レナあなたこんな事が出来るのになんで掃除とかお茶淹れはミスが多かったの?」
「うーん……慣れじゃないですか?」
「レナ……あのお城で何年働いてたの?」
「えっ?1年と半年ですかね?」
「……もしかしてレナ、私に引っ叩かれたくてわざと失敗してた?」
「……そ、そんな事ないですよー」
どうやら図星の様だ。
「レナちゃん……」
「はい……」
「夜を楽しみにしてなさい……」
「はい!」
かなり良い返事をしているのでこれは喜んでいそうだ。
その日の夜……
「レナ、待たせたわね。」
「……えっ?なんでお姉様も……?」
「私もレナの教育に付き合って下さいってセレンさんに頼まれたからよ。」
「お願いしますね。イズミさん。」
「こちらこそよろしくお願いしますセレンさん。」
2人でなんて聞いてないという顔をしているレナ。まぁお仕置きを喜んで貰ってはこちらも困るので私もたっぷりとイズミさんに勉強させてもらうのでした。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
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