12話 仲直り
セレン様とイズミお姉様が2人で私の頭をグリグリしたせいで頭が痛い……そして私は置いてけぼりだ。だから私とお母様は外で畑仕事をしていた。
「私、やっぱりセレン様を追いかけたい!」
「まだ言ってるのね。」
お母様は私の言葉を笑って流した。
「すぐに帰ってくるわよ。馬車ならそこまで時間かからないから。」
「私……また置いてかれたのかな……」
「心配症ね。そんなにセレンさんが好きなの?」
「うん……離れたくない。」
私は少し寂しそうに呟いた。そうしてお母様は優しくあやしてくれた。
「大丈夫よ。セレンさんも同じ気持ちみたいだから。」
「そうなの?」
「ええ、あの方は誰よりもレナの事を考えていてくれてるわ。そしてレナを愛してる。そんな人がレナを悲しませると思うかしら?」
お母様に言われて私も思い出す。私の人生を考えて離れる時も私を遠ざけてからだった。手紙も本当の気持ちを隠しつつも私の未来を憂いていた。
「……そうだね。今の私はセレン様を信じてあげる事よね。」
「そうね。じゃあお昼の支度をしましょう。あの2人もそろそろ帰ってくる頃だし。」
気がつくとお日様は丁度真上に来ていた。もうすぐお昼である。
「結構時間がかかりましたね。」
「あのおじさん話出すと止まらないからね。まぁ良い人なのよ。」
「ええ、話しててそんな気がします。」
「腕も確かだから安心していいわよ。」
そう言って私たちは馬車に乗って帰るのだった。
「セレン様!」
帰るといきなりレナが抱きついてきた。
「うわっと!何泣いてるのよ!」
「だって……帰りが遅くて……また置いてかれたかと……」
「もう……置いていったりしないわよ。」
私はレナの頭を撫でながら愛されてるのを実感するのでした。
「さぁ、お昼が出来てるわ。食べましょう。」
ミスズさんから声がかかったので私たちは家の中に入ってお昼を頂くのでした。
お昼を食べ終えて、レナと2人きりで話をする事にした。姉のイズミさんの事も解決しないといけないけど昨日から話せてなかったので私も話したかったのだ。
「ねぇレナ?」
「はい。」
「お姉さんとは仲が悪いの?」
するとレナがビクッとなった。
「わ、悪くないよ……?」
「ふーん。怖いの?」
「うん……」
「さっき馬車に乗ってた時聞いたわ。足を怪我してるときに叩かれたんだよね。」
「うん……あの時はもう日も落ちてて暗かったの。お姉様が鬼に見えたんです……」
「今でもそう見えるの?」
「……暗くなると見えちゃう……昨日の夜もそうだった……馬車に乗ってるお姉様が鬼に見えたんです……」
(もはやトラウマじゃん……これは謝っても治らないかもな……)
私が頭を悩ませているとレナから話始めた。
「私も早くお姉様と普通に話したいんですけど……私がぎこちないせいでお姉様に気を遣わせてる様な気がするんです。」
「そうなのね。でも、イズミさんも悪いところがあったわね。そしてイズミさんはレナに謝りたいそうよ。」
「えっ……?」
私の言葉にレナは疑問の声をあげた。
「レナと普通に話したいのはイズミさんもみたいよ。」
「本当ですか⁉︎」
「ええ、馬車の中でそう言っていたわ。さて、レナはどうしたいのかしら?」
「前の様に話したいです!」
「じゃあ行こうか。」
「えっ?」
私は立ち上がりレナへ手を伸ばした。それなのにレナはキョトンとした顔をしていた。可愛い……けど今はそんな事言っていられない。
「ほら、イズミさんの所に行くわよ。私が手を握っててあげるから怖くないでしょ?」
「……はい!」
少し悩んでレナはいつも通りの元気な声で私の手を握るのでした。
私はあらかじめイズミさんと待ち合わせしていた馬小屋にレナを連れて行った。イズミさんは馬の世話をしていた。
「イズミさん、レナを連れて来ましたよ。」
「……ありがとう。」
「立ち会い人として私も居てよろしいですか?」
「ええ、構わないわ。むしろ居てほしいわ。レナがもう怯えてる様だし。」
後ろを振り向くとレナが目を回していた。私の手を握っているとはいえ、やはり怖いものは怖い様だ。
「レナ、まだお昼だから。夜じゃないから!」
「は、はい!」
私はレナの頬をペチペチ叩いて正気に戻した。そしてしっかりと顔を手で包み込んで私と目を合わせた。
「レナ、私が隣で手を繋いであげるからしっかりイズミさんと話なさい。いいわね。」
「はい……ありがとう……ございます……」
「レナ……」
「お姉様……」
(イズミさん……後は任せましたよ。)
私が心の中で祈っているとイズミさんから話出す。
「レナ……私の事怒ってる?」
「お、怒ってない……怖いだけ……」
ぎこちない……でも話せてる事に私は良しと思う。
「あの時はごめんなさい……レナが怪我してるとは知らなかったの……」
「うん、暗かったもんね……あの時のお姉様本当に怖かった……」
「うん……ごめん……」
「でも!お姉様はあの後私をおんぶして連れて帰ってくれたのよね?」
「覚えてたの?」
「うん……お姉様の匂いがしてたから。でも……それでも私はお姉様が怖かったの。気絶した私を連れて帰ってくれたのに……」
「レナが謝る事じゃないわ。本来は私が悪かったんだから。」
2人ともお互いに謝り続けそうなのでこの辺りで私が会話に入ることにした。
「2人とも。これで気が済んだかしら?」
「「えっ?」」
「2人ともお互いに悪い所を認めて謝った。だからこれ以上は謝る必要はないと思うの、それより仲直りの握手の方が良いんじゃないかしら?」
私はレナの手を離してイズミさんの方へ押し出した。するとイズミさんはレナを抱きしめた。
「レナは……私の事を許してくれる?」
「はい……お姉様……お姉様は私の事を……」
「許すわよ。たった1人の妹だもの!」
「ありがとう……お姉様!」
(いいなー……私はもうこんな事出来ないんだ……)
私とシュウラはもう会う事はない。それなのに最後にあんなきつい事を……私はどんなに後悔しても無駄なのだった。
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