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#Vtuber準備中

架空のSNSとか動画投稿サイトの名前考えるのって難しい

 ある日、SNSのMonologerで誰かが気づいた。


『夢ニキのチャンネルのヘッダー変わってる』


 その呟きは古参のVtuber、リスナーを一斉に駆け巡った。

 様々なVtuberへのお祝いコメントには名前が挙がることで生存確認は今まで出来ていたものの、MonologerもYourtubeも今まで音沙汰の無かった彼が今になって何故……。


 "夢黒 亡"のチャンネルには今まで、彼の姿と『夢黒 亡』とチャンネル名が書かれた画像がヘッダーに置かれていた。しかし、今ではシルエットだけが乗せられた画像に変わっていた。

 しかも……


『いやこれ女子っぽくない?』

『明らかに男の髪の長さしてない』

『乗っ取りか?』

『ポニテなのは分かってるわ』


 そのシルエットはポニーテールにした女子の姿に見える。元祖Vtuber戦隊の黄色担当、木南みかんもその画像は女の子にしか見えていなかった。

 木南みかんは元気印のVtuber。有名絵師のママだったことも注目されていた要因ではあったものの、本人のキャラの濃さが動画投稿サイトに切り抜かれたことが彼女の人気……ひいてはVtuberが多くの人の目に触れるきっかけになった。

(ママ=キャラクターデザインをしてくれた絵師さんのこと。ママやパパと呼ばれる。実際の性別とは関係なくママと呼ばれることも多い。))


「うーん、亡さんっぽくはないよねぇ」


 みかんの知る限り夢黒亡のキャラデザは、短髪の黒髪に赤い瞳の20代前半といった風貌。服装は黒いジャケットをかっこよく着こなしていた。


「ジャケットというよりはワンピースっぽいかな?」

「……やっぱり女の子っぽい」


 うんうんとみかんが唸っているとMonologerに一件の通知が届く。フォロー外の通知を切っている彼女のMonologerに通知が届くことはあまりない。何か用事がある場合はDMがメインになる。


「なんだろ……」


 その通知は、アカウントのつぶやきだった。アカウントの名前は"夢黒亡"。


「え、嘘!? Monologer更新も来た!」


夢黒亡 @naki_mukuro             

                  

みなさん初めまして! 夢黒亡です! 

ゲームとお喋りが好きです!     

早くみんなとお喋りがしたいなぁ…… 

初配信をお楽しみに!

#Vtuber準備中


 キャラデザの画像も同時につぶやかれていた。腰まである黒髪のポニーテールに白のワンピース。ただ、見覚えのあるようなジャケットを合わせたコーディネートをしている。


「もうわけわかんないよ~!」


 リプライ欄を確認してみれば、既に80件以上ものリプライが送られていた。


:いや、誰?

:少なくとも既にデビューしてんだよなぁ……

:これはこれで個人的に好きだぞ

:いいおっぱいしてんねぇ!道理でねぇ!

:復活……いやこれ復活の括りで合ってんの???

:あの頃の夢ニキを返してよ!

:夢ネキになってしもうたんか……?

:アカウント譲ったとかなんか?


 思ったよりも好意的な意見が多いが、やはり困惑の方が多いように思う。もちろんみかんは困惑側の人間だ。


「可愛い。確かに可愛い。間違いなく可愛い。すっごい私好み」

「でも亡さんなんだよ。すごいイケボの亡さん。ボイス出せって3年言い続けた亡さん…………」


 木南みかんが戦隊の一人にまでなったキャラの濃さ。それは重度の声フェチだった。

 初めての動画は猫を被っていたから注目されなかった。問題は次の動画だった。運営が出したオタク知識のクイズに対して運営の想像以上の物を見せてしまった。出演声優の中での推しの声質やどこが響いたのかという話をし続けた結果カットされたのが見事にヒット。

 そこからは声フェチを全開にした動画の数々を挙げている。男性向け女性向け問わず、同人音声作品のおススメを紹介し始めた時は歴戦のリスナー達も動揺の色を隠せていなかった。当然のように年齢制限はかかった。


 そんな声フェチである木南みかん。その彼女が素で惚れこんだ声が、当時珍しい男性バーチャルライバーとして細々気楽にやっていた夢黒亡だった。

 というのも当時Vtuberという呼び方はなくバーチャルライバーと自称していた。コンテンツですらなく、覚えようと思えば活動しているバーチャルライバーは全て把握できるほどの人数しかいなかった。そんな時代、珍しい個性があればそれだけで閉じたコミュニティでは情報が回る。

 噂を聞きつけてちょうどやっていた彼の歌枠に飛び込んでみればなんとびっくり。自分の好みにドンピシャな声をしていた。思いの丈をコメントした時にはとても驚かれてしまったけれど、その声はとても美味しいものだったので満足したとは彼女の言葉だ。

 それからは『個人ボイス販売しませんか?』が彼の配信に訪れた時の彼女の挨拶になっていた。

 当然毎回配信に顔を出せるわけではない。彼女だってバーチャルライバーとしての仕事がある。図らずもバーチャルライバーの顔役の一人になってしまった彼女の疲れを癒してくれたのは、彼の行けなかった回のアーカイブだった。


「休止の時にチャンネル消さないでくださいって電凸しまくった甲斐があった……」

「でももう、各アーカイブ3周以上しちゃったんだよ……。各配信の推しポイント語れるもん……語りたい……」

「……この子の声も楽しみ。ふへ……」


 段々と彼女の興味は夢黒亡の名前を冠する謎の少女の声へと移っていった。









夢黒亡 @naki_mukuro


さっきはびっくりさせちゃったかな?

実はもうデビュー日時は決まってるんだ~♪

初配信は一週間後の日曜日!

ふふ、ドッキリが好きなんだー!

みんなと会えるのを楽しみにしてるねー!


チャンネルは下のリンクだよ~

(YourLiveへのリンク)


#Vtuber準備中

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