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0 それは果てにたどり着いた世界にて

 やれることはすべてやったはずだった。彼女の両親を家から出させないようにした。彼女の親友が事件事故に巻き込まれるような要因はすべて排除した。できることは最善に尽くしたつもりだった。


 けれどもその結果招いた現実は、予想だにしていなかった、考え得る限り最悪のものだった。


「どうして、こんなことに……」


 目の前に広がる悲痛な光景に、膝をついて項垂(うなだ)れる。あちこちから()き上がる悲鳴が、耳の中をただただ通過していた。


 真っ赤に燃え盛る炎。近づくことすらできないくらい大きく膨らんだ炎は、メラメラと天高く揺らいでいる。消防車から大量の水が吐かれるが、一向に収まる気がしない。


 怒りと苦しみと、そして悲しみから顔を上げることができない。自分がほんの少し目を離した瞬間、起きてしまった災厄。まるで、自分が目を離すのを待っていたかのように。


 その炎の中にいるのは彼女。すべてを懸けてまで守ろうとしたものだった。


 彼女の不幸を嘆く。何故彼女なのか。どうしてこの結末に収束してしまうのか。逆らえない運命に怒りの牙を向ける。


 けれど、諦める訳にはいかない。自分が諦めてしまったら、すべてが無駄になる。自分が守りたかったもの。一つではないそれが(ちり)となり消えていってしまう。


 (こぶし)に力を込めて、歯を食いしばりながら立ち上がる。不安ですくみそうになる足の筋肉にも力を込める。


 正面を見据え、確かな現実をこの目に刻みつける。もう二度と、こんな未来を起こさせないと、もう何度目かの誓いを立てる。


 そして最後に、既に最期を迎えているであろう彼女に向かって、約束の言葉を結ぶ。





「必ず、助けるから」

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