第三話
「おい、起きろ! いつまで寝てやがる!」
「ハッ! 寒ッ!」鈴志郎は、弦斎に起こされたが、寒さで飛び起きた。寝ぼけ眼を擦りながら、辺りをキョロキョロとし始めた。
「わぁー! 大っきい鳥居だなぁ! それになんかちゃんとした街に来るのは初めてな気がする! 弦斎さん、ここが弦斎さんが住んでる街なの?」
「鳥居や街にばっかり見惚れているんじゃねぇ。 見ろ、ここが我が家だ」
弦斎はネズミの丸焼きを頬張り、鳥居の横を指差た。
そこにはかなりボロボロの家が建っていた。
「えぇー!? こんな立派な街あるのに、なんでこんなボロ・・・あっ、小さな家に住んでるんですか?」
「ボロくて悪かったな! なぁ、鈴志郎。 お前、この大きな街を見て何か気づかないか?」
鈴士郎は、鳥居の前に立ち、鳥居の奥に広がる街の様子を伺った。
「うーん、何か危険な感じが街中でしている気がします」
「ふんっ!」弦斎は、鼻で笑った。「鈴志郎、なぜそう思ったのか言えるか?」弦斎は鈴志郎に問いかけた。
鈴志郎は改めて、目を凝らして鳥居の外から街を見渡し考えた。
(街を見るのは初めてだ。 僕の通っていた隣町は鳥居から入って神社まで大きな一本道があったが、ここはどうやら町全体が入り組んでいるように見える。 しかも、なんだか分からないが、恐怖を覚えてしまう街であることは間違いない・・・)
「では、鈴志郎、改めて聞こう」
「そう・・・ですね。 全然分からないです!」
「ハハハ! そうだと思ったぜ。 この街はちょっと特殊な街でな。 この世界には大小ことなる街が点在していることは知っているな。 街そのものの構造は、神社を中心に家が立ち並び、周囲に建てた鳥居が外敵、すなわち狼たちから街を守っている。 まぁ簡単に言うとこんな感じだ」
「へぇ、そうだったんですね! 隣町も確かに神社を中心に町が囲んで外との境界線に鳥居がありました。あれって狼から守る為だったのか! でも、僕の村には神社も鳥居もなかった。 だから、狼たちに襲われてしまったんですね・・・」
「弦斎は鈴志郎の話を腕を組んで、静かに目を閉じて聞いていた。
「では、街があると言うのに、なぜ俺は鳥居の外に住んでいると思う? それは、街の結界を利用して、街の中に狼たちを閉じ込めている!」
「そんなことができるんですか? でもここの住んでた街の人は? まさか、全員狼に食べられたんですか?」鈴志郎の顔は悲しみと怒りが混ざった表情で、弦斎に言い寄った。
「落ち着け、鈴志郎。 俺が見つけた時には、すでに誰も住んでなかった。 そこに俺がおびき寄せた狼たちを誘き寄せたってわけだ。 じゃなぜ俺が狼たちをここへ幽閉しているかって、疑問が浮かんできただろう? それはそのうちわかる。 とりあえず、そうだなぁ、薪割りや家の掃除、洗濯と当分俺の身の回りの世話をお前にしてもらう」
(なぜ弦斎さんは、街に狼たちを幽閉しているんだ? 弦斎さんぐらいの刀の腕の腕が立つ人なら、簡単に狼たちを倒せると思うんだけど、他に理由があるのかな? 今はそんなことより、言われたことを地道にやるしかない! 僕に選択肢はない。 頑張れ、鈴志郎!)