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最後のBELL  作者: 一関一毅
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第二話

「鈴志郎、いつまで沈んだ顔してやがる。 気持ちを切り替えろ。 お前は生きてるんだ。 その命大事に使え」

(そうだ、僕は生きてるんだ。 弦斎さんの言うとおり、いつまでも落ち込んでなんかいられない。 母さんや鈴斗の分も生きなくちゃ!)

鈴志郎は顔を上げて、前を走る弦斎の後ろを必死に追いかけた。

辺りは一面寒さでうっすらと霜が降り、白く化粧された苔が生い茂っている。

鈴志郎は、ふと思った。(いつも村と隣町の往復しかしていなくて、こんなに遠くまで来るのは初めてだ)

「これが外の世界!」


「ハァ、ハァ、弦斎さん、僕たちいつまでこの調子で走り続けるんですか?」

「なーに弱音吐いてやがる。そうなだな、あとあの山を超えた麓が目的地だ」

「げっ!? あの山越えるんですか?!」鈴志郎は体力には自信があった。 毎朝、カゴいっぱいに採れたての野菜を積んで、隣町まで険しい林道を走っていたからだ。 しかし、そんな鈴志郎でも、流石に足に疲労が溜まってきていた。

(弦斎さん、これだけ走っているのにスピードが落ちてない! 野菜を背負っていない分、案外走れるかと思ってたけど、少しでも気を抜くと転けてしまいそうだ。 でも、これは僕自身で決めた道、何がなんでも弦斎さんに着いていかなくちゃ! 頑張れ、鈴志郎!)


やがて夜になり、辺りは闇に包まれたが、弦斎は走るのをやめなかった。

弦斎は躊躇なく山の中に突入した。

鈴志郎は、必死に弦斎のあとを追った。

弦斎は必死に自分の後について来る鈴志郎に一瞬目をやった。

(うん、鈴志郎の体力は申し分ねぇ。 まぁ山場はここからだ! 夜になると視界がぼやけ、転けないように足元に意識が集中してしまう。 そうなると、周囲の状況把握が散漫になってしまう。 さぁ、お前ならどう乗り切る?)

山に入ると一気に景色が変わった。足元は苔に覆われている上に、木が生い茂っているため、鈴志郎は上にも意識を持っていかなくてはならなかった。

「痛ッ!」

(山に入った瞬間、意識をどこに集中させればいいのか分からなくなってきた! 転ばないように足元へ意識を集中させれば、今みたいに目の前の木々が体に当たって体力が余計に奪われてしまう)

「意識を・・・集中?」

鈴志郎は、あることを閃いた。(そうか! 前の弦斎さんに意識を集中して、弦斎さんの動きに合わせて走ればいいんだ! よし、これなら僕にだってできるッ!)

弦斎に集中したことで、自然と意識が前に向いた。

(ほう、やるじゃねぇか! 鈴志郎! 最初はそうやって真似事でもいい。 そうやって自然と体に叩き込んでいけば、心に余裕ができて無意識に全体を把握できるようになっていく)

「鈴志郎、そろそろ山を抜ける!」 二人は勢いよく山を走り抜けた。


「ハァ、ハァ、ハァ、やっと・・・やっと、ゴール、ですか?!」鈴志郎は思わず、その場に仰向けに倒れこんだ。

「フゥー、いいウォーミングアップだったゼ」

「えぇー!? これのどこがウォーミングアップ?!」

「おいおい、鈴志郎、まさかこれが修行と思ってねぇだろうな?」

「これ修行じゃないんですか?!」

「バーカ、これはお前の基礎体力を見るためのものだよ。 まぁ、毎朝野菜持って隣町まで走ってる甲斐あったな、とは言ってもギリ合格ってとこだな。 ん?」弦斎は、鈴志郎の方を向くと、鈴志郎は意識を失ったかのように寝ていた。

「ったく、今日はこの辺にしといてやるよ・・・」


鈴志郎、第一関門クリア

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