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恋刻ノ御伽草子  作者: 逢葵 秋琉
9/9

屋根の上で空を窺う

「鴇永君! あのっ」


 屋根に続く梯子(はしご)(のぼ)り、勢いのままに呼び聞きたいことを云おうとするが鴇永君。


 否、屋根の上に座っている(そら)を見た瞬間に言葉が()まる。


「っ......」

  

 呼んで此方を見た空は、今まで見せたことのない表情で此方を睨んでいたからだ。


 (あき)らかに機嫌が悪い。


 否、それもあるがまるで関心がないように此方を見る空は、今までで一番怖い。


 表情より一番怖いのは、呼び掛けて何も言ってこないことが怖くそれだけで何故か不安になる。


 感情に出やすいのか視界が(にじ)んでいってるのが分かる泣いてはダメだ。と思い、必死に堪えようと空から視線を外す。


 けれど、先程会った李紅(りく)はまるで別人のようだったから、尚更不安で押し潰されそうになる。


「姫っち」


 押し潰されそうになった時、空の何時もの声が耳に入った。


 否、何時もよりそう弱々しく自分を呼ぶ声は震えていて、泣きそうになっていたことを忘れて再び空を見る。


 空は、何故だか傷付いたような顔で自分と目が合うと気まずいのか頬を掻きつつ逸らし


「悪い......ちょっと夢見(ゆめみ)が悪くって。って、何で屋根の上に居るんだ?」


 立ち上がって千早が居るところまで歩こうとするが、どうも足場が悪い。否、自分が居る場所が屋根の上だと今気付いたようで軽く混乱している様子に千早は自分と同じだと感じて


「良かった」


 思わず口から出てしまう。自分だけが違和感や憶えがないと思ったから空の発言や混乱している様子に不謹慎だが、安心してはらはら。と涙を流す。 


「姫早......やっぱ、怖かったよな」


(あんな顔見せたくはなかった。なかったけど.....これがなかったら俺は)


 涙目から本格的に泣き出した千早に気付いて、自分がしたことに後悔する。


 ダチとしても好きな人に泣かれてしまうとそれが安心した時に流す涙でも胸が締め付けられるように痛い。


 けど、何時か見せてしまう顔だと感じるのは首にかけられたネックレスに気付いたからだった。


 このネックレスは水晶の中に侑奈の能力が込められているからか綺麗な夕焼け色に染まっている。 


 これは、守巫が込められている証拠だ。


 記憶を維持するためのもの。だから、遅かれ早かれ千早にさっきの顔で冷たく当たるかも知れない。或いは乱暴にしてしまうかも知れない。と空は思う。


 泣き出した千早に何か(ぬぐ)うものはないかと探すが身に着けていた着物から取り出せたのは小さなメモ帳とペンだけだった。 


 懐から取り出せるのは、ポケットがない限り少ないが空には十分だ。


 能力の絵現と有筆を使えば、ハンカチの一つや二つ動作もない。


 有筆で「上質なハンカチ」と書いて絵現でハンカチを描く。


 色は塗っていないから出てきたのは柔らかい肌に優しそうな白いハンカチだ。


 ハンカチでしかも上質なと書いたから小さなメモ帳は全てハンカチの材料として使われたらしく絵現された時にはハンカチだけになっていた。


 空の呟きは、千早の耳に届かなかったらしく泣き止むことなくただただ「良かった」と声に出して自分の手で涙を拭う。


 不慣れな足場を通り、そんな千早の目の前に立つ。


「ほら、ハンカチ。 やるから、これで拭いてくれ」


 自分で拭おうかとも考えたが千早は自分の手で涙を拭っているので無理にやることはない。と思い、ハンカチを差し出しつ つこれ以上怖がらせないように。


 俺が俺で居る限り怖がらせない。これ以上傷つけさせない。


(......俺じゃなくなった時、その俺は姫早に千早にどう接するか分からない)


 俺が傷つくよりも姫早が傷つく姿の方が痛い。姫早が傷付いたような顔で自分を見た時、チクリと胸が痛かった。


 俺が先に傷付いたんじゃない。姫早がそんな顔をしたからだ。


 千早は、両手で涙を拭うのを止めて礼を云った後差し出されたハンカチを受け取る。


「姫早、悪い。俺ちょっと一発殴らねえと気がすまない校長(やろう)が居るから行ってくる」


 ハンカチを受け取ったのを見て、何処かほっとした空はやはり機嫌と云うか誰かに怒っていたらしく千早を此処に残すのは少し罪悪感のようなものがある。


 千早は何か聞きたくて此処に来たような気がするからだ。


 けど、それよりも空は自分を無理矢理気絶させた校長に用がある。


「や、野郎(やろう)って?」


 千早の横を通り過ぎようとした時、やや躊躇(ためら)った声で此方を見て聞いてきた。


「あっと、校長(こうちょ)んんっ! じゃなくって! 浩三郎(こうざぶろう)って奴がな、俺を無理矢理気絶させたんだ!」


 思わず校長(こうちょう)だと素直に答えそうになり、誤魔化すようにこうちょ。と云った時の声より大きな声で千早に答える。


 自分が云った言葉を揉み消すようにやや早口で云えば追求はしないでくれ。と云わんばかりに

  

「酷いだろ?だから、無理矢理気絶させた御返しに一発殴りに行く。否、殴らねえといけない! だから、姫早後で話聞くから! じゃ!」

あとがき


サブタイトル。良いの思い浮かばない。

一応、コメディなので、これから面白おかしく書こうと思います!


サブタイトルはおいおい思い付いたら付けますのでスルーで構いません!


 此処まで読んでくれてありがとうございます!

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