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恋刻ノ御伽草子  作者: 逢葵 秋琉
8/9

目覚めたら、違う場所で三人で暮らしていると云う。

 映像が目まぐるしく変わる。否、これは誰かの記憶が映像になって物凄い勢いで駆け巡る。


 声も聞こえるが、目まぐるしく変わる為よくは聞こえない。


 時より自分を取り込むように映像が迫りくるが自分に触れる前に弾き返す。


 その現象より、今の状況がもう何時間も続いていることだ。


 正確な時間は分からない。分からないが体感は長時間も映像が流れて繰り返されていて視界を閉ざそうにも映像に囚われたように閉じない。


 手で視界を閉ざしたらよくは聞こえない。雑音のような声がよく聞こえてくる。


 気が狂いそうになる。夢なら早く覚めて欲しい。と嫌な汗が肌を伝う中何度も願い()う。


 しかし、その誰かの記憶らしき映像は誰かの記憶の筈が何故かそう自分の容姿と瓜二つ、


 その上、夢で見たあの光景も時より映像に出てくる。それに時よりだが、同級生に似た人が映像に出てくる。


 ドクドク。と自分の鼓動がその映像を見る度に忙しなくなり音が大きくなっていく。


 それと同時に心臓が痛く締め付けられているような感覚に呼吸が上手く出来なくなる。


 心臓部分を手で抑え、過呼吸状態を何とかしようと無理に映像から逸らそうとするが、その瞬間視界が砂嵐に変わった。


 ――ザザザッ。と雑音(ノイズ)が走り、耳鳴りを起こす。


「っくそ......あんの、やろッ」


 あのやろとは校長先生のこと。完全に気絶する前、校長の顔を一瞬だったが空は見たからだ。


 キーーン。と耳鳴りが酷くなり、視界が暗闇へと閉ざされる。


 閉ざされたのと酷くなったのは悪夢から覚めるからだろう。と空は思うも、校長がやったことは許しがたいもので意識を手放す間際にそう口にしてしまう。


 空が悪夢と闘っていた頃、千早も他の生徒と同じように睡魔に襲われ眠っていたが眠りから覚めたようで辺りを見回す。


「此処は......?」


 確か教室に居たはずが、自分が過ごしていた部屋とは違う誰かの家。


 畳の部屋で寝ていた千早は状況がよく分からないようで暫く辺りを見回していたが、眠ってしまう前のことを思い出したようではっとしたように立ち上がって眠ってしまう直前まで一緒に居た李紅を探そうと慌てた様子で玄関に向かう。


 玄関に向かい靴を履こうとした時


「あれ?千ちゃん、慌ててどうしたんさ?」

「へ?楠木さん」

「李紅で良いって前から云ってるのに、それよりもどうしたんさ?」

「そ、そうだよね。えっと....」


 千早に声を掛けたのは、探そうとしていた相手で顔を見るなりほっとしたが、それよりも千早が気になったのは李紅の語尾だった。


(李紅さんって語尾にさなんて付けてたっけ?すっごく違和感ある。あるけど本人はごく自然に付けてるし....しかも、全然慌ててない!)


 私だけなの?とこの状況に困惑し、慌ててしまってるのは。そう千早は内心で思いながらも、改めて李紅を見る。


 李紅。と名に書いてある通り李紅の髪は赤に近い茶色。赤に近いオレンジのややキツい印象を与える瞳に着物と眠ってしまう前の李紅の格好と顔、声も一緒。


 それなのに語尾が付いて全く慌てた様子も場所が教室から誰かの家に変わったことに困惑すらない、別人?と疑いたくなるほどこの家に馴染んでいる。


「り、李紅さん。その......さっきまで教室に居たよね?」


 考えられるのは、あの番号札。番号札に能力が付加されていて生徒の記憶を改竄(かいざん)出来る能力が付いていてあの強力な抗えない睡魔はその能力が発動し寝ている間に弄ったということ。


 まさか、先生に限ってやるとは思えないし。と千早は自分の考えを飛ばすように内心で口にするも、それで(ぬぐ)える訳もなく青ざめた顔でおそるおそるやや震えた声で聞く。

 

「何云ってるんさ?」


 千早の心境など知る余地もない李紅は、何故震えた声で聞くのかも血の気を無くしたように青ざめているのか見当も付かず不思議そうしながら聞き返す。


 否、聞き返すような声音だが聞いてはいない。これはさっきまで教室かさっきまで教室に居たことなんてないとそれとなく云っている。


 李紅は、一旦口を閉じてから再び口を開いて混乱している千早にはっきりと告げる。


「千ちゃんも僕も空も一ヶ月前から何でも屋を経営して此処で暮らしてるさ、教室なんて此処一ヶ月一度も行ってないさよ?」


 大丈夫さ?と心配していると見ても分かる顔と声色。内容はとてもじゃないが信じられないものだった。


 信じられない内容だが、李紅が嘘を云っているとは思えない。しかし、一ヶ月も経ってるなんて千早は受け入れられないことだった。


 それもその筈、一ヶ月分の記憶が全くなく一ヶ月になるまで昏睡していたとは李紅の言葉からしてないから思考が追い付けず状況を理解するのに時間が要る。


「な、何でも屋......鴇永君も居るの?」

「勿論居るさよ! この時間帯なら屋根の上に居ると思うさ! あ、でも....って千ちゃん?!」

 

 李紅が云ったことが事実なら自分は一ヶ月間の記憶が丸々ないと云うことになり、一ヶ月間は自分だけど自分じゃない人が暮らしていたと云うことになる。


 何でも屋の仕事をして生活していたのは、李紅と千早。それに空だと李紅は云っていた。何でも屋の仕事。否、仕事をしていると云うことに驚いてしまう。


 李紅に付いた語尾も一ヶ月と云う経過も、三人で一つ屋根の下で暮らしているのも全て。


 李紅の言葉を咀嚼するように声に出して紡ぐ。


 一ヶ月、何でも屋、三人、私と李紅さんと鴇永君が居る。


 全て言葉に声にする前に思い立ったのか少しだけ表情が明るくなった。


 整理がつかないのなら、もう一人に聞こうと千早は思い立つ、一緒に一ヶ月暮らしていたと云う鴇永君に李紅さんが云ったことや自分が云ったこと。そのどちらが合っているのか。


 屋根の上に居る。と何処に居るのかも教えてくれた李紅の言葉を最後まで聞かず千早は屋根の上へ向かう。


「あーちゃあ、行っちゃったさ.....」


 本当は空が降りてきてからの方が良い。と云い掛けたが屋根の上に居る。と云った瞬間踵を返して屋根の上に向かった千早


 その様子に慌てて引き留める声を上げても構わず行ってしまったので諦めたように云い、当番かどうか確認するために李紅はリビングに行く


 本日の家事当番→李紅 仕事当番→空、千早 


「嗚呼、そうだったんさね。だから、千ちゃん慌ててたんさ......けどそれだけなら何であんなに血相変えてあんな質問したんさ?」


 表を見て慌てていたのは仕事当番で空を探していたと納得はした。


 だが、口に出して云ってる内に何かそれとは違うような気がして引っ掛かりを覚える。


 教室。云われてみれば行ったような気もしなくはない。


 さっきは行ったことはこの一ヶ月間ないと断言出来たのに。いや、考えるのは()そうと李紅は首を左右に振り、気持ちを入れ替えれば食料買いに出掛けに行った

 あとがき


 久しぶりの更新になりました。


 皆さん、多くの作品がある中読んで下さりありがとうございます!


 評価やブックマーク頂けると励みになります。

 ザブタイトル下手くそですみません、思い付かないもので(苦笑)


 これからもゆっくりですが更新しますので宜しくお願い致します!

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